ルール (liii)
「これからまたモンスターが現れるのよ。グラウンドに転送されたら連絡手段はスマホしかないのよ」
こんなときにまで好き勝手をさせておくわけにはいかない。今まで委員長に任せきりだったぶんを返したかった。同性のほうが彼女も話しやすいかもしれない。
だが、難波瀬織はあくまで頑固だった。
「全員、教室へ連絡がつくのでしょう?」目もあわせず、さらりと流す。「であれば私の連絡先はいらないはず」
「難波さんひとりだけが飛ばされる可能性もある」
手のひらを向けて環は返すが、瀬織はとうとうと応酬した。
「プレイヤーの選出がひとりのみ、かつ私が選出される確率はそう高くない。そんな事態になれば、連絡がつこうがつくまいがどうしようもない。そのときは運がなかったとあきらめる」
「どうしてそう勝手ばかり言うの。ピクニックに誘ってるわけじゃないのよ。いつもとは状況がまったく違うの。わかるでしょ?」
意図せずともだんだん環の語調はけわしくなる。この後におよんでなお端末とにらめっこをしている態度もいい気はしない。環は自身にいいきかせた。
感情的になってはいけない。難波さんもよけい意固地になるし、クラスの結束にも影響する。冷静に懐柔を試みる。
「わかった。電話番号を言いたくないならせめてLINEのIDを教えて。私の番号やメールアドレスを送るから」「持ってない」「えっ?」
環は、声高に聞き返した自分自身に少しあわてた。思いがけない返答におかしな声が出てしまった。
「LINEが入ってないわけないでしょ。おじいちゃんおばあちゃんの携帯じゃあるまいし」
「使わないから必要ない」
「いくら友達がいなくても家族との連絡には必要でしょ」
つい本音が出てしまい、環は、しまった、と口を結んだ




