ルール (vii)
・フィールド外に出たプレイヤー、またはプレイヤー以外でルームから出た者は死亡する。
・課題をクリアするかプレイヤーが全員死亡するとステージは終了する。
いずれの場合もステージクリアとなる。
課題がクリアできなくてもステージはクリアできるのだ、などと喜ぶ者は当然なかった。
「死亡」の2文字が少々、現実離れしていて脳に入ってこない。というよりは侵入を拒んでいる。
モンスターに襲われると傷を負い、へたをすると死にいたり、勝つまではグラウンドから逃げることもできない。
プレイヤーなどに選ばれるのは是が非でも遠慮願いたかった。いや、こんな「ゲーム」と呼ぶには度のすぎたものにこれ以上、関わりたくなかった。
「ほかの先生に早く連絡しないと」「待って!」
今にも教室を飛び出そうとする市川あまねを、環は声を張り制止する。
普段の落ち着いた物腰に不つりあいの剣幕に、あまねは足を止めた。
クラスじゅうの生徒とともに環を見やる。
「書いてあるでしょ。教室から出たら死ぬって」
「こんなわけのわかんないもの、真に受けてるの?」
強い口調で反発した三宅まどかに、環は努めて平静を装うように言った。「先生は亡くなった」
気おされそうになるのをこらえて、あまねは携帯端末の画面を点灯させた。「――だったら警察に連絡する」
「それもやめたほうがいい」環は首を振った。「みんなもネットにはつながないで。ヘルプの先のほうをまだ読んでない人は特に」
クラスじゅうの不審な目をあえて受けとめ注意喚起する。クラス委員としての矜持が、不利な役目を引き受けさせるのかもしれない、と環は思った。
四ノ宮りつ以外にもSNSやウェブを使用しようとしていた生徒たちは渋々やめ、ヘルプの続きを読む。今、この不可解なできごとについて一番把握しているのは彼女、クラス委員の環なのだ。