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犠牲者 (xxiii)

 地を走るとがった空気圧と正面衝突しタウは後方へ弾かれた。

 どんっ、との重い響きとともに派手に転倒するも、モンスターはすばやく体勢をたてなおし突進を再開する。


「え、なんで……?」


 ほうけ気味の天祀の横で、真砂鉉が急ぎ矢をつがえた。狙いも引きも不じゅうぶんで、タウの額を狙ったものの肩にそれた。当たっただけましか。

 問題は、タウがひるむことなく向かってくるところだ。


 草食動物らしからぬ凶相と、並の馬を凌駕する巨体で迫りくる威圧感に天祀はのまれた。

 逃げろ、と脳内で強い警告が発せられるも腰が引け、動作がワンテンポ遅れた。ヤバい――


 天祀の体に衝撃が走る。横方向に弾かれ、グラウンドの硬い土に1回転した。

 存外、痛くない。ゲーム内の耐久力のおかげか、と天祀は半身を起こしながら自身の考えを否定する。そんな威力じゃ(・・・・・・・)なかった(・・・・)

 タウのスピードといい重量といい、車にはねられるのと同じ大きな力が加わったはず。こんな、ちょっと突き飛ばされた程度で済むはずが――


「うあああああっ!」


 悲鳴と鈍い打撃音に思考は寸断される。少し離れた場所でタウがなにかを振るっていた。

 モンスターが人間大の塊を口にくわえて地面に叩きつける。ぐえっ、というひしゃげた声をあげた。こえ(・・)


 それは人間大というよりは、人間そのものだった(・・・・・・・・・)


 スーツ姿の見知った顔が担任教師のそれと気づいて、天祀は、短時間とんでいた記憶を瞬時にたぐり寄せる。

 そうだ、先生が自分を突き飛ばしてかばったんだ。代わりに先生が――


 タウの標的となった彼は、硬い表面に打ちつけられて血まみれだ。

 見るも無残な姿に天祀は血気をそがれ、少し前まで満ちていた蛮勇は完全にしなびきっていた。


 ヤバい、助けないと、魔法、詠唱、どうだっけ、氷の息を……雪の女王の……わかんねえ、スマホ見ないと、どこだ、あれ……ない、スマホ、スマホ――


 天祀はへたり込んだまま、モンスターに打ちすえられる担任を凝視し、震える手で、ポケットにあるはずの携帯端末を探った。転んだときに落としたのか見つからない。


 このままじゃ先生、死――

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