犠牲者 (xvii)
征従の反発を無視して真砂鉉が前に進み出る。
新しく弓を手にした征従から余った剣を譲り受け、自身の選んだ長大なそれとあわせての二刀流だ。それだけも、小学生のころに勇者になりきり、箒や傘を振り回しては叱られていた彼の心を刺激するというのに、「必殺技」が放てるとなれば、もう。
真砂鉉は、先ほどアプリで確認した発動モーションを思い描く。
胸の前で両手を交差し、右手の最長の剣を左へ、左手の長剣を右へ掲げた。いったん振り下ろす形で大きく1回転させ、頭上に広げた2本の剣を再度クロスさせつつ振り叫ぶ。
「双地走っ!!」
ふたつの衝撃波が文字どおり地を駆けた。ずざざざっ、と土ぼこりをあげて、双剣から撃たれた鋭利な圧力が並走する。
実際の衝撃波に比べればきわめて控えめながら、そうとうの速度をもってタウの太い胴体を見舞った。
痛快な打撃音とともに氷も砕け馬体が横転する。真砂鉉は雄叫びをあげた。「おっしゃあぁっ!!」
男子生徒は三者三様の歓喜をみせた。絶叫し立ち上がれないでいるタウに、勝利さえ期待したが、不可侵という制限を思い出して端末を確認する。
征従の魔法攻撃のあとと思われるタイミングでメッセージが届いていた。
『大ヒント来た! 蚊取り線香の内側にも同時に火をつけたら半分の時間で燃やせる』
3人は、あー、なるほど、とうなずいた。
「これで解けたな」と両手の剣をゆらす真砂鉉に、天祀が「いや、半分じゃ早すぎる」と首を振った。「たしか、普通に燃やしたときが1分半だったはず。1分半の半分じゃ1分より短い」
「おまえよく覚えてるな」と征従が感心した。天祀は「副部長サマは、将棋の対戦内容を最初から最後まで覚えられるくせに」とあきれる。
「あんなのマトモに将棋かじってりゃ誰でもできる。お、LINE、また来た。『次のヒントがでた 蚊取り線香はふたつ使う』」
征従が伝えると、真砂鉉も宮丘一八から届いたSNSを読みあげる。
「一八が『もう解けそうって何人か言ってる 俺はさっぱりわかんね草』だって。俺もわからん」
弓と矢を持つそれぞれの手を軽く広げて、やれやれのジェスチャーをしてみせる真砂鉉に、天祀は「俺はいけそうな気がしてるよ」と自信ありげに笑む。征従まで「むしろ俺、解けたっぽい」としたり顔だ。
「マジで?? なんでお前らわかるの?」「俺、3人のなかで頭脳派とイケメン担当だから」と天祀。「将棋いいぞ、将棋。論理的思考ってやつが鍛えられる」と征従。
「ドヤ顔、くっそムカつくー。答え、教えろよ」矢をひゅんひゅんと振り回す真砂鉉に、危ねえな、と征従は文句を言った。




