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犠牲者 (xi)

「先生、このままじゃらちあかねーんすけど」「弓とか魔法じゃないと無理」「俺、魔法使ってみたい。氷属性がいいな」


 かけあう征従たちに、枡田は困惑気味に笑って「武器や能力は、ステージ開始時のものを各自工夫して戦ってもらいたいんだけど」と答えた。


「んなの無理だよ」「あんな逃げるとか思わねーし」「追いつけたらスポーツ推薦余裕っす」「そこは3人で知恵を出しあって考えてほしい。昔の人類は、馬を殺すどころか生け捕りにさえしたんだから、君たちにだって……」「俺ら原始人じゃねえから」「石器時代の人間も、狩りはもっと大勢でやってたと思うんすけど」


 担任の言葉をさえぎって3人は不満をたれる。枡田としては手持ちの武器でがんばってもらいたかった。

 モンスターはグラウンドからは出られないので、3人で手わけして追ってもいいし、タウはわずかなダメージでもヒントを提供するので投石という手もある。それに問題もそう難しくはないので、少しのひらめきがあればノーヒントで解ける。

 ただ、原則を押し通して意欲を損ねさせるよりは、その気にさせてひと暴れしてもらい、クラスに「自分たちはモンスターと戦える」と印象づけたほうが得策。

 枡田は、わかったわかった、と手ぶりを交えてなだめ、間接攻撃をいくつか提示した。


 恒例の青くて球状の光が頭上に生じる。長大な剣や弓矢が中空から出現、ばらばらと無造作に落下する。

 やんちゃな男子はとたんに沸きたった。銘々が、男の子な部分を最もくすぐるものに飛びつく。やれやれと枡田は小さく嘆息した。

 武器を選び終えた3人は、不敵な目でタウをにらみつける。「さーて、お馬さん。馬肉になる準備はOK?」

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