表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/184

犠牲者 (v)

 『蚊取り線香を73秒で燃えつきさせよ』


 黒板の問題文を聞いただけではまったく意味がわからなかったが、話によると、大量の蚊取り線香とそれを燃すためいくつかの皿、そしてライターが教卓に出現したそうだ。つまりそれらを用いてやってみせよと。

 何十人が次から次へと焚くものだから教室じゅうが煙ってたいへんなことになっているらしい。5階の窓を見ると、なんとなく教室内が白っぽく感じられた。


「73秒て。蚊取り線香なんてどうやったら1分ちょいで燃えるんだよ」


 征従は素振りをしながら疑問を呈する。タウはまだ動きを見せず、怠りなく征従たちをとらえていた。


「出てきた蚊取り線香は、燃えるのが超速くて1分半ぐらいで終わる」「えらいはえーな。でも、1分半かかるんじゃ無理くね?」「そこなんだよ。折って短くしたらいいんじゃね、って話になって、今、みんなでちょっとずつ微調整してんだけど、これが全然」「適当に当たりつけて、1cmとか数mmずつ削ってきゃいいんじゃねーの?」「大きさがばらばらなんだよ」「は?」「全部、別々のメーカーのやつかよっていうぐらいサイズが違くて、巻いてる数も一定じゃないから調整がめちゃムズい」「なんだそりゃ」


 マスティーのやりそうないやらしい手口だな、と征従は声を潜めて教師の顔を盗み見た。枡田はきょとんとした顔で愛想笑いを見せた。


「唯一の手がかりは、燃え終わるまでの時間はどれもぴったり同じってとこ。時間計ったらだいたい1分40秒っぽい。たぶん100秒」

「それさ、あれじゃねーの? 円の長さがどーのこーの計算して正しい長さを割り出す的な」意外と俺も冴えてるだろう、と征従は内心、自賛し、友人からの「おまえ天才だな!」ぐらいのほめ言葉も期待した。

 が、返ってきたのは「あーそれ、一八(カズ)も同じこと言ってた」とのつれない一蹴。さほど勉強のできるほうでもない生徒の名前があがってがっかりする。


小分(こわけ)が論破してたわ。蚊取り線香は渦巻き形だから、うまく計算できない、って」


 リケジョの小分実整(みせい)が嫌味っぽい顔でやり込めているさまが目に浮かんだ。


「そもそも誰も巻き尺(メジャー)とか持ってないし長さも測れない」「で、しゃーねーから長さ調整をがんばってると」「そこでおまえらの出番だ」「俺ら?」「忘れたのか、プリズム(・・)ゲームのルールを」


 ああー、と思い出したように征従はモンスターを見た。「んじゃ、いったん切るわ」


 切断ボタンを押して、征従は端末を尻ポケットに突っ込んだ。ぶんっ、と剣を大きく振りする。タウを見すえながら、ほかの2人に「ヒントがいるってよ」と言った。「りょーかい」「狩りの開始といきますか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ