表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/184

犠牲者 (iii)

「もちろんあるとも」枡田はうなずき顎を上げた。

 つられて見上げた小高い高さに、例の生白い青さの光球が3つ、隣接して生まれる。そのなかに細長い影がぼやっと見えたかと思うと――


「うおっ!?」


 いっせいに落下し、どどど、と地面に突き立つ。彼らの前に3本の剣が倒立した。おお~、と3人は感嘆を漏らす。

 示された剣は大小さまざまで、短いものは腕の長さほど、最長のものは肩の高さまでありそうだった。


「俺、これ、もーらいっ」


 友人に先駆けて、西院(さいいん)真砂鉉がむやみに長いひと振りを抜いた。

 「ずりーぞ」と抗議する丹下(たんげ)征従(まさつぐ)に、真砂鉉は「早いもの勝ちだよバーカ」とうれしげに試し振りをする。「すげ。想像よりずっしりした手ごたえ」

「マジで?」期待に胸をふくらませて征従と天祀も手にとった。「おおお、ホンモノの重量感だこれ」「やっべー、テンションあがるんですけど!」


 3人の男子高校生は、彼らを一瞬でも見逃すまいと注視しているモンスターのことも忘れ、ぶんぶんと剣を振り回して馬鹿騒ぎした。まるで新しいおもちゃを買い与えられた子供のようだ。枡田はわんぱく坊主に、本題へ戻るよう注意をうながした。

 ああ、そうだった、と3人は改めて(タウ)に目を向けた。


「つっても、今の(あいつ)って無敵状態なんだろ。教室の正解待ちじゃね?」「で、結局、クラスの奴ら解けそうなのかよ。えーと」天祀はメッセージを確認する。「『教室じゅうが蚊取り線香くせえええwwwww』『今、日本で一番蚊取り線香の匂いがしてる教室ww』ってさ」「だから蚊取り線香ってなんなんだよ?」「知らねーし」


 要領をえず、短気な征従は教室内の友達に電話をかけた。


「もしー。天祀のLINEに、蚊取り線香がどうとかいう話、出てんだけど、どーゆー状況なんだよ。俺ら、そっち待ちなんだけど?」


 うわー、また失敗だ、これどうやんだよ、といった騒々しい声を背景に、征従が伝えた問題はこうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ