犠牲者 (iii)
「もちろんあるとも」枡田はうなずき顎を上げた。
つられて見上げた小高い高さに、例の生白い青さの光球が3つ、隣接して生まれる。そのなかに細長い影がぼやっと見えたかと思うと――
「うおっ!?」
いっせいに落下し、どどど、と地面に突き立つ。彼らの前に3本の剣が倒立した。おお~、と3人は感嘆を漏らす。
示された剣は大小さまざまで、短いものは腕の長さほど、最長のものは肩の高さまでありそうだった。
「俺、これ、もーらいっ」
友人に先駆けて、西院真砂鉉がむやみに長いひと振りを抜いた。
「ずりーぞ」と抗議する丹下征従に、真砂鉉は「早いもの勝ちだよバーカ」とうれしげに試し振りをする。「すげ。想像よりずっしりした手ごたえ」
「マジで?」期待に胸をふくらませて征従と天祀も手にとった。「おおお、ホンモノの重量感だこれ」「やっべー、テンションあがるんですけど!」
3人の男子高校生は、彼らを一瞬でも見逃すまいと注視しているモンスターのことも忘れ、ぶんぶんと剣を振り回して馬鹿騒ぎした。まるで新しいおもちゃを買い与えられた子供のようだ。枡田はわんぱく坊主に、本題へ戻るよう注意をうながした。
ああ、そうだった、と3人は改めて馬に目を向けた。
「つっても、今の馬って無敵状態なんだろ。教室の正解待ちじゃね?」「で、結局、クラスの奴ら解けそうなのかよ。えーと」天祀はメッセージを確認する。「『教室じゅうが蚊取り線香くせえええwwwww』『今、日本で一番蚊取り線香の匂いがしてる教室ww』ってさ」「だから蚊取り線香ってなんなんだよ?」「知らねーし」
要領をえず、短気な征従は教室内の友達に電話をかけた。
「もしー。天祀のLINEに、蚊取り線香がどうとかいう話、出てんだけど、どーゆー状況なんだよ。俺ら、そっち待ちなんだけど?」
うわー、また失敗だ、これどうやんだよ、といった騒々しい声を背景に、征従が伝えた問題はこうだった。




