チュートリアル (xix)
彼らの端末が、一様に青灰色の画面に切り替わっていた。上部に「プリムズゲーム」と文字が表示されている。それを目にしたほかの生徒も、あわててポケットから自身の端末をとり出したり鞄のもとへ走ったりした。
まもなく、教室のそこここで同様の悲惨な声があがりはじめる。
「どうやって入れたの!」「親が厳しいからアプリとか勝手に入れられない設定にされてるのに」「勝手にこんなもの入れないでください!」「今月、通信量ヤバいのに」「これ、強制終了できねえぞっ」「アンインストールもだ」「電源落とせ、電源」「つーか、切れねーし」「個人情報抜かれたり架空請求が来たりする系のアプリかよ」「『プリズムゲーム 削除 方法』」「プリズムじゃなくてプリムズじゃね?」「うわ、だめだ。ググっても全然関係ないやつしか出てこねー」「てかマスティー、さっきからめっちゃ俺らのことシカトしてるっぽいんだけど」
苦情の嵐がひととおり吹き終わるまで、枡田はマナーモードにした端末を懐にしまい、淡々とモンスターに対峙していた。
そろそろころあいだろう、と受話口を耳に近づけると、「先生っ!」とつんざく声が突き刺さった。端末を離して枡田は口を曲げる。スピーカーに切り替えてもいないのに、わあわあわめく声が音割れして響いた。
「アプリはゲームに必要なんだ。終わったら自動的にアンインストールされるから」
抗議の声はやまないが、枡田は「それよりも、これを見てほしい」と自分の端末を操作し、生徒の画面にある情報を表示させた。
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