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チュートリアル (vii)

 生徒が思いどおりに動いてくれないときの彼の定番は、お手本を見せることだった。

 枡田は「はい、静かに」と声を張り、ぱんぱんぱんと手を打ち鳴らした。にわかに教室内が静まりかえる。


「それじゃあ、先生が実際にやってみます。プリムズゲームがどういう感じなのか観戦してつかんでみてください」


 あっけにとられる生徒のひとりを枡田は指名した。


「クラス委員の三郎丸さん。君の携帯と通話しながらゲームの説明をするから、僕の声をスピーカーでみんなに聞かせてくれるかな」


 数秒、きょとんとした目で三郎丸環は沈黙し、携帯端末をとり出す枡田に、嫌です、と強く首を振った。「ば、番号なんか教えませんからっ」

 その必要はないから、と激しい拒絶を意に介さず、担任は平然と自身の端末を操作している。

 次の瞬間、環の心臓がどくんと強烈に跳ねた。


 こもった電子音が教室に割って入った。


 ぎょっとして環は自分の席に目を向けた。多くの生徒の視線もそちらに集まる。明らかに、環の机のわきにある鞄から着信音が鳴っていた。

 うそ、と彼女は漏らす。

 ありえない。担任に電話番号など教えていない。いや、緊急時の連絡先として全員、学校に提出しているか。

 よしんばそれだとしても、クラス委員を務める比較的まじめな環だ。授業中に限らずいつもマナーモードに(・・・・・・・・・・)してある(・・・・)

 出て、と枡田はうながす。機械的な音も持ち主をせっつく。環はふるふると首を動かし拒んだ。

 担任は「責任ある行動を見せてくれないと」と鼻でため息をつく。そんなことを言われても困る。


「三郎丸さんが電話にでてくれないといつまでも先に進まないからね」


 責めるふうではなかったが、さらりと責任を負わせるクラス担任に憤ったのは、環本人ではなく平方(ひらかた)紅亜(くれあ)だった。


「環、嫌がってんじゃん。ストーカーみたいなことし――」


 彼女の抗議は、しかし、ぶつぎりとなる。

《毎日、更新中》

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