チュートリアル (iii)
3人娘が声高に指さす。
「生きてんの? キモっ」「本物?」「本物ってなんだよ。あんな生き物、見たことねえぞ」「つまり、本物のモンスター……?」「なにそれキモい」「いや、そんなもんいるわけねーし」「じゃあ、あれはいったいなんなんだよ?」「どうせバイトとかがなかに入ってんだろ」「そういう感じの動きじゃないぞ、あの生々しさ」「マジでモンスター?」「やだもおー、キーモーいー。キモすぎー」
ひとしきり生徒に騒がせておいた枡田に、ようやくひとり、高敷ほむらが振り向いた。「先生、なにがどうなってるんですか」
同じように、混乱した様子で何人かの生徒が「これ、どういう仕掛けなんですか?」「学校のイベントですか?」「あのなか、誰か入ってるんですか?」とやつぎばやに質問した。
枡田はおちつきはらって、ゆるく2、3度、首を振るう。
「いつも教えているとおり、難しく考える必要はないんだ。これはゲーム。君たちはプレイヤーとなってモンスターに立ち向かう。いたってシンプルだろう?」
「いやいやいや、説明になってねーし」
荒古戸仁が、よく不良と誤解される目つきをより鋭して反発する。
それを皮切りに生徒は「マジで意味わかんないんですけど。あれがなんなのかもだし、なんで俺らがあんなわけわかんないのと戦うことになってんのかもだし」「牛ぐらいでかいよ」「あたし、絶対無理」といっせいに異を唱えだす。困惑と嫌悪、怒りさえにじませる者も少なくなかった。枡田は意外そうに数度、またたきを繰り返した。
「君たちはこういうのが好きだと思ったんだけどなあ」苦笑いで担任教師は言う。「ゲームのプレイヤーとなってモンスターをばったばったと倒すシチュエーション」
「なに、漫画みてーなこと言ってんすか。まずこの状況が意味不明っすから」
比較的、冷静な千家大舟が、なるたけ感情を抑えてばさりと切り捨てる。
ほかの男子生徒も「そーゆーのにマジにあこがれるのは、いいとこ小学生まででしょ」「あんな化物、ばったばったやられるのはこっちのほうだよ」と乗ってこない。女子はともかく、彼らの食いつきまで悪いとは想定していなかった。
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