ホームルーム (xiii)
「口で説明するより実際にやってみるほうが早い。今から校庭にモンスターが出現する。そいつを倒してみよう」
怪訝な顔で多くの生徒が窓を見やった。
5階の教室からグラウンドをながめられるのは、窓ぎわの席とその隣の列だけだ。仲のいい生徒間で「なんかいる?」「ううん、なんにも」と尋ねあっている。
親しい友人のない、大柄の須磨総和と小柄な春日積の両名は、聞く相手がおらず、廊下寄りの自席からちらちらうかがう。
ただひとり、D組で一番の変わり者の難波瀬織だけが、まったくの無関心で黙々と携帯端末をいじっていた。
校舎の外は、体育の授業などもおこなわれておらず、人っ子ひとりいなかった。
「せんせー。モンスター、出てこないんですけどー」
自他ともにクラスのギャル代表を認める船井夏恋が茶化しクラスの笑いを誘った。
出るわけないだろ、逆に出てきたらビビるし、アニメとかゲームだったらなんか光ったりしながら現れるよね、これギャグなのかな、ウケ狙いにしてはちょっと意味不明、なんか先生おかしくない?
笑いながらも、枡田の発言に生徒は首をひねった。
しかし。
誰かの言った「アニメやゲームのような光景」が、窓ぎわ付近の十数人の目に、まもなく飛び込む。
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