↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
102/184

ファクトリアル (xvii)

 三郎丸環が、有無を言わせないような、懇願するような口調で指示する。


 撃てだと? なにを? 魔蹴球(これ)を? 今? 


 なにを言ってるんだ(・・・・・・・・・)こいつ(・・・)


 遠いから、あるいはクラス委員あるあるの眼鏡キャラだから、よく見えないんだろう。このゴキゲンに真っ黄色な魔蹴球(ボール)が。

 ここまできたら極限まで鍛える以外、ありえねーだろうが。

 虹色だか銀色だか金色だかのクッソ強そうな色まで。いや、白とか黒も最強クラスとしてありそうだな。

 回数も今、めちゃくちゃいい感じで稼いでるとこなんだよ。死ぬほど調子いい。これ、前人未到の2桁台到達あるぞ。小坊のころから夢見てきた(言葉どおりに。目が覚めてがっかりした経験が3回はある)、神の領域。はるかな高みに俺は登りつめようとしている。

 それを今、撃てだ? は? 寝言は寝て言え、サブロー。


 6。レモンはオレンジに。7。オレンジはリンゴに。魔蹴球はまるで別人のように――サッカーボールに人格があればの話だが――すなおに飛び跳ね、新しい色にチェンジする。


「なにやってるの!」リフティング時のボールがこうも聞きわけのいい奴だとは知らなかった。「早くっ、今すぐ撃って!」


 8。意外。それは小3の秋、茨城で体験したブドウ狩りを思い起こさせる、みずみずしい紫。赤から紫との予想外の流れに一八は、ほお、と小さく感嘆する。


ファクトリアル(・・・・・・・)発動してる(・・・・・)!!」


 クラス委員のせっぱつまった声が、端末のスピーカーをびりびりと震わせる。――なんだっけ、そのファクトリーなんとかって。

 そのとき、一八の記憶が恐ろしい速度で逆再生された。


 通常の能力を超えた特殊な力――ミナスの巨体を一瞬でなぎ払った午角力――危機的状況に際して発動――強力なパワーに対する反動――ステータス異常「歩行困難」――


 油断した。


 順調に足の上で躍っていた魔蹴球が、前触れなくスカった。

 茨城のブドウ園、最後の1個、ひときわ大きい粒を食べようとしてうっかり落とし、落ちたものを食べないの、と母親にとりあげられた――あのときのブドウのように、するりと、一八の足をすり抜けた。

 ヤバ――


 たんっ。


 小気味いい音をたてて魔蹴球がバウンドする。グレープカラーは一瞬にして、黒の五角形と白の六角形の模様にリセットされた。


 最強どころか――最弱じゃねーか(・・・・・・・)


 一八は放心する。皮肉にも、彼の予想した白と黒は、最強レベルのカラーではなく、最弱、初期状態のとりあわせだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。