❗3.小屋 1 〜 作戦会議 1 〜
──*──*──*── 小屋
セロフィートが戻って来る迄、起きているつもりだったマオだったが、すっかり眠りに就いていた。
セロフィートは《 広場 》から抜ける為に態々〈 転移魔法 〉を使い、アンドレムとイシュハルトを利用したのだ。
余計なオマケも付いて来たが、セロフィート的にも〈 亜人種 〉にも嬉しいオマケとなった。
暖簾を潜り、《 小屋 》へ入ったセロフィートは、眠っているマオの左横に静かに腰を下ろして座る。
寝息を立てているマオの頬を人差し指,中指,薬指の背で優しく撫でた。
セロフィートがオテルガの誘いを断ったのは、出来るだけマオの傍に居てあげたいからだ。
仮にオテルガに力ずくで拉致られたとしても、朝迄ぐっすり眠らせてしまうのだから何の問題もない。
マオが目を覚ます迄、セロフィートは静かに待ち続けた。
──*──*──*── 30分後
マオが目を覚ました。
マオ
「………………セロ…??」
セロフィート
「はい。
マオだけのセロフィートです」
マオ
「…………宴は……終わったのか??」
セロフィート
「未だ続いてます。
〈 結界魔法 〉を張ってますから、外の音は遮断してます」
マオ
「…………そうなんだ?
だから静か何だな…」
セロフィート
「聞こえる方が良いです?」
マオ
「此のままで良いよ」
マオは上半身を起こした。
マオ
「──セロ、〈 亜人種 〉と仲良くするのは良いけどさ、退治するのか?」
セロフィート
「マオは退治したくないのでしょう?」
マオ
「う、うん…」
セロフィート
「〈 亜人種 〉が凶暴化しても人間に危害を加えられない状態にすれば良いだけです」
マオ
「出来るのか?」
セロフィート
「簡単です。
≪ 無人島 ≫ごと隔離します」
マオ
「隔離??」
セロフィート
「そうです。
〈 結界魔法 〉を張り、〈 亜人種 〉を≪ 大陸 ≫へ近付けない様にします」
マオ
「──其なら〈 亜人種 〉を退治しなくて済むんだな?」
セロフィート
「勿論です。
海に出て漁が出来る様に砂浜から2kmは確保します」
マオ
「人間が≪ 無人島 ≫に近付く事は出来るのか?」
セロフィート
「出来ません。
≪ 無人島 ≫から約3kmの距離で前へ進めなくなります」
マオ
「3kmの距離??
2kmじゃなくてか?」
セロフィート
「1kmの範囲には常に大雨を降らせ、渦巻く激流を作ります。
人間達は1kmを越える事は出来ません。
仮に越えられたとしても〈 結界魔法 〉の効果で≪ 無人島 ≫には近付けません」
マオ
「そうなんだ?
人間は≪ 無人島 ≫に近付けなくて、〈 亜人種 〉も陸から2km以上は進めない様になるなら、安心だな!」
セロフィート
「≪ 無人島 ≫を完全に孤立させる訳です。
ある程度の生活の知恵を〈 亜人種 〉へ教える必要があります」
マオ
「生活の知恵?」
セロフィート
「〈 亜人種 〉の生活を今より少しだけ豊かにするお手伝いをします」
マオ
「そんな事が出来るのか?」
セロフィート
「宴で〈 島長 〉のオテルガさんと一寸した余興をしました。
オテルガさんに勝った回数分は命令が出来ます。
此を利用して、生活を豊かにする方法を実践して覚えてもらいます」
マオ
「う、うん…。
…………用意周到だな…」
セロフィート
「おや?
そう思います?」
マオ
「だってさ、どんな勝負をしたって誰もセロには勝てないだろ?」
セロフィート
「そうですね」
マオ
「完全なデキレースじゃんか!」
セロフィート
「いけません?」
マオ
「いけなくないけど……」
セロフィート
「明日が楽しみですね♪」
マオ
「そだな…。
出来るだけ早く≪ 港町 ≫に戻って、観光巡りしたいよな〜〜」
セロフィート
「其は彼等次第です」
マオ
「でもさ、〈 亜人種 〉に何を教えるんだ?」
セロフィート
「そうですね…。
海水がありますし、塩の作り方を教えます。
森の中を耕して畑を作ります。
野菜の育て方を教えます。
砂糖黍を栽培し、砂糖の作り方を教えます。
森で取れる果物で美味しいジュースの作り方を教えます。
果汁酒の作り方も教えましょう。
木の実,野草の使い方、薬草を使った薬の作り方とか…。
色々あります。
≪ 無人島 ≫の環境に適用させた動物も何種類か生息さるとしましょう」
マオ
「楽しそうだな…」
セロフィート
「ふふふ♪
退屈しなくて済みそうです♪」
アンドレムとイシュハルトにとっては迷惑極まりないし、単髪赤毛にとってはとんだとばっちりです。