❗3.小屋 2 〜 飯は美味いに限る 〜
──*──*──*── 小屋
〈 亜人種 〉に招待された夕食を終えたマオは1人で《 小屋 》へ戻っていた。
〈 船長 〉の〈 獣族 〉とセロフィートが楽しそうに話し込んでいたからだ。
〈 亜人種 〉と言葉が通じ、会話の出来るセロフィートは楽しいかも知れないが、〈 亜人種 〉の言葉が全く理解の出来ないマオにとっては、退屈な時間でしかなかった。
まるでセロフィートを取られてしまったかの様に感じてしまい、辛くて居るに居られなくなった感じだろうか。
マオが《 小屋 》に戻ろうと思った切っ掛けは間違いなく夕食として出された料理が原因であると言っても過言ではない。
森の木になっていたのを取って来たのだろう果物と叩いて団子状にされたつみれが何故だか草── 薬味の代わりにでもしているのだろうか?? ──に巻かれた蒸し料理と塩気のない苦い焼き魚だった。
身だけを蒸した魚には森で取って来たのだろう木の実を使って味付けがされていたが、マオ的には美味しくなかった。
御馳走になっといて失礼千万だと思うが、旨味を感じたのは果物ぐらいだった。
御世辞にも美味しくない料理をセロフィートは、何時もと変わらず笑顔で食べていた。
今は果物を潰して絞ったジュースを〈 獣族 〉〈 獣人 〉と飲んでいるだろう。
マオも一口だけ飲んでみたが──、ジュースとは言いたくない液体は、濾されていない事もあり、喉越しが悪くて飲み難く、微妙な味がして美味しくなかった。
〈 亜人種 〉には美味しいのかも知れないが、マオの口には合わない様だ。
せめて森の中に野生の動物でも居てくれたら、肉料理でも食べれたかも知れないが、生憎と此の≪ 無人島 ≫には小鳥以外の動物は生息していないらしい。
もう、此の際、小鳥の丸焼きでも蒸し焼きでも良いから食べたい──と思う程にマオは参っていた。
マオ
「( …………そう言えば、ジェリさんの姿が無かった…。
ジェリさん…どうしたんだろう…。
ジェリさんも彼の不味い料理を食べたのかな…… )」
《 船長室 》で一緒にワッフルを食べたきり会えずにいるジェリエンツの事を考えながら、マオは毛皮の上にゴロンと寝転がった。
セロフィートによって記憶の改竄されている事を知らないマオは、ジェリエンツが〈 亜人種 〉に人様には言えない様な行為をされまくっている事をキレイサッパリと忘れてしまっていた。
『 ジェリエンツを〈 亜人種 〉から助ける!! 』という熱い正義感もマオの中から消え去っていた。
今宵、更に新たな犠牲者が2名、〈 亜人種 〉に捧げられる事になるのだが、マオが知る事はない。
仮に知ったとしても、セロフィートによって記憶を改竄されて終わりである。
広くない静かな《 小屋 》の中で、マオは1人きりでセロフィートが戻って来るのをひたすら待ち続けるのだった。




