セロフィートとマオは暮れなずむ中、サクサクと砂浜を歩く。
マオ
「…………何かさ、日が暮れそうで暮れないよな〜〜。
あっ、また貝殻だ!
此の砂浜には綺麗な貝殻が沢山落ちてるよな〜〜。
ほら、見てよ、セロ!
こんなに一杯になった!」
砂浜を歩いていたマオは、キラッと光った貝殻があまりにも綺麗な色だった為、貝殻拾いに夢中になっていた。
セロフィートが出してくれた水に濡れても破れない丈夫な紙袋を貰ったマオは、見付けた貝殻を片っ端から入れていた。
自慢気に拾い集めた戦利品を嬉うれしそうにセロフィートへ見みせるマオは、子こ供どもの様ようだ。
セロフィート
「沢たく山さん拾ひろいましたね。
折せっ角かくですし、首くび飾かざりや腕うで飾かざりを作つくって子こ供ども達たちに分わけてあげてはどうです?」
マオ
「首くび飾かざりと腕うで飾かざり?
道どう具ぐも無ないのに作つくれるのかよ?」
セロフィート
「貝かい殻がらに穴あなを空あける道どう具ぐと丈じょう夫ぶな糸いとがあれば作つくれます。
糸いとは植しょく物ぶつの蔓つるを使つかえば良よいです。
後あとで森もりの中なかへ入はいって探さがしましょう」
マオ
「うん。
子こ供ども達たちかぁ……。
なぁ、セロ…。
何なん十じゅう年ねんか経たって、子こ供ども達たちが大人おとなになったらさ、人にん間げんの敵てきになるのかな?」
セロフィート
「〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉で身しん体たいからだを変へん換かんされた親おやから産うまれた子し孫そんも〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉の影えい響きょうを受うけて育そだちます。
有あり得えます」
マオ
「何なんとか出で来きないのかな?
凶きょう暴ぼう化かした〈 亜あ人じん種しゅ 〉が≪ 港みなと町まち ≫を襲おそわない様ように出で来きないのかな?
何なにか方ほう法ほうはないのかな?」
セロフィート
「考かんがえてみましょう」
マオ
「本ほん当とうか?!」
セロフィート
「今いまの所ところ、〈 亜あ人じん種しゅ 〉の中なかに〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉の影えい響きょうを受うけて凶きょう暴ぼう化かした者ものは居いない様ようですし」
マオ
「そうなんだ??
じゃあ、≪ 港みなと町まち ≫が〈 亜あ人じん種しゅ 〉に襲しゅう撃げきされる心しん配ぱいは当とう分ぶんないって事ことで良いいんだよな?」
セロフィート
「現げん状じょうでは、です。
安あん心しんは出で来きません。
〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉には〈 古こ代だいエンシェント魔ま法ほうマジック 〉も効ききませんし」
マオ
「えっ?!
そうなの??」
セロフィート
「おや?
言いってませんでした?」
マオ
「聞きいてないよ!
〈 古こ代だいエンシェント魔ま法ほうマジック 〉が効きかないなら、どうしたら良いいんだよ?」
セロフィート
「どうにも出で来きません」
マオ
「あっさり言いうなよ…。
そう言いえば…〈 テフ原質の源 〉にも変へん換かんが出で来きないんだっけ?」
セロフィート
「出で来きませんね。
≪ 無む人じん島とう ≫に〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉が現あらわれない事ことを祈いのりましょう」
マオ
「セロは祈いのらないだろ〜〜〜」
セロフィート
「祈いのるのはマオに任まかせます♪」
マオ
「セロは何なんでもオレに押おし付つけるよな〜」
セロフィート
「押おし付つけてませんし。
嫌いやなら祈いのる必ひつ要ようないです。
心こころの伴ともなわない祈いのりは無む意い味みですし」
マオ
「………………。
祈いのり──って難むずかしいよな…。
〈 大たい陸りく神しんエルゼシア様さま 〉は人にん間げんの心こころの中なかなんて見み抜ぬき見み透とおしだからさ、下した心ごころがあったり、不ふ純じゅんな気き持もちや悪わるい心こころ掛がけで祈いのっても無む効こうになるんだよな…。
純じゅん粋すいだったり、清きよらかだったり、見み返かえりを求もとめない、正ただしくて善いい心こころ掛がけで祈いのらないと〈 大たい陸りく神しんエルゼシア様さま 〉には届とどかないんだもんな。
難むずかしいよ……」
セロフィート
「〈 久く遠おん実じつ成じょう 〉には嘘ウソも偽いつわりも通つうじませんし。
騙だます事ことも誤ご魔ま化かす事ことも出で来きません。
心こころを込こめて一いっ心しんに祈いのる行こう為いは、其それだけ尊とうとい行おこないです。
ただ、手てを合あわせて、指ゆびを組くんで、頭こうべを垂たれて、祈いのれば良よいものではないです。
〈 久遠実成宇宙を運営する主宰者 〉の実じつ在ざいとお力ちからエネルギーを信しんじるのは大だい前ぜん提ていです。
感かん謝しゃ,敬けい意い,真ま心ごころを忘わすれては、どれだけ祈いのっても祈いのりにはなりません」
マオ
「…………そういうのをさ、詩しい歌かで歌うたって弘ひろめたら良いいんじゃないのか?
祈いのってる人ひと達たちはさ、知しらないで祈いのってる訳わけだし」
セロフィート
「嫌いやです。
教おしえてしまっては面おも白しろくないです。
知しらずに無む意い味みな祈いのりを捧ささげ続つづける人にん間げんを見みるのが面おも白しろいのに──」
マオ
「セロが『 底そこ意い地いじの悪わるい、いけず 』てのは分わかってるけど…」
セロフィート
「『 底そこ意い地じの悪わるい 』は心しん外がいです。
ワタシは面おも白しろい事ことが好すきなだけです。
面おも白しろい事ことが減へると愉たのしくないですし」
マオ
「………………オレがセロの事こと、どうこう言いえる立たち場ばじゃないよな……。
人にん間げんに優やさしくないセロとオレって、お似に合あいなのかな…」
セロフィート
「相あい性しょうはバッチリです。
“ 人じん類るいの敵てき ” 同どう士し、仲なか良よくしましょう♪」
マオ
「ははは……。
( 一ひと言ことも言いい返かえせないよ… )」