❗3.海賊船 5 〜 船長室 2 〜
セロフィートは自分の左隣をポンポンと軽く叩き、マオに座る様に合図する。
絨毯の上に落ちたティーポットもティーカップも消えており、新しいティーセット一式がテーブルの上に置かれている。
紅茶が溢れてしまい、派手に汚れてしまった絨毯は、綺麗になっていた。
マオに飛ばされて床に落ちた筈のセロフィートの本も何時の間にか消えている。
セロフィート
「マオ?
どうしました?」
マオ
「…………何でもないよ…」
マオは微笑んでいるセロフィートの左隣に立つとソファーに腰を下ろして座った。
セロフィート
「淹れ立てです。
飲めば気持ちも落ち着きます」
マオ
「う、うん……」
セロフィートから薦められたティーカップの取っ手を持ったマオは、ティーカップに口を付けると香りの好い紅茶を啜った。
スン──と何かの香りが、マオの鼻を擽る。
マオ
「…………美味しい…。
何だろう……果物の香りがする?」
セロフィート
「気付きました?
何の香りだと思います?」
マオ
「う〜ん……。
分かんないよ…」
セロフィート
「分かりません?」
マオ
「う〜〜〜ん……。
…………林檎…っぽい??」
セロフィート
「惜しいです」
マオ
「え〜〜〜…林檎じゃないの??
…………何だろう…??」
マオは紅茶の香りを嗅いでみるものの、何の果物の匂いなのか分からない。
セロフィート
「降参です?」
マオ
「……………うん…。
だってさ、仄かにしか香らないんだもんな」
セロフィート
「諦めるのが早過ぎます」
マオ
「オレは犬じゃないんだからな!!」
セロフィート
「はいはい。
──香りの正体は此です」
セロフィートがテーブルの上に出したのは、湯呑み程の大きさの密閉式の瓶に入った何かだった。
マオ
「セロ、此って──」
セロフィート
「木苺,野苺,森苺を合わせて作ったミックスジャムです。
ティーカップの中に入れたジャムを注いだ紅茶で溶かしました。
ティースプーン1杯が適量です」
マオ
「ジャムか〜〜。
苺のジャムかよ…。
オレ、林檎って言っちゃったよ…。
惜しい所か外れてるんですけど!
──でもさ、此のまま食べても美味しそうだな♪」
セロフィート
「ジャムは此に塗って食べてください」
言いながらセロフィートはテーブルの上に皿を出した。
マオ
「……何、此??
見た事ない形してるけど?」
セロフィート
「此はワッフルと呼ばれる焼き菓子の一種です」
マオ
「ワッフル??」
セロフィート
「パンケーキやホットケーキの仲間みたいなものです。
生地をワッフル型──格子模様の凸凹の付いた2枚の鉄板──に流し入れて焼たます。
薄くカリッと焼いたワッフルには、バター,生クリーム,ジャムを付けたり、メープルシロップ,チョコレートソース等をかけて食べます。
果物やアイスクリーム等を添えても楽しめます。
ふわふわとしたワッフルは、2つ折りにしたり、2枚重ねにして、ジャムやクリームを挟んで食べます」
マオ
「へぇ〜〜。
美味しそうだな♪」
セロフィート
「甘さ控えめな生地で作れば、サンドイッチも出来ます。
おやつは勿論、朝食や軽食としても食べれます」
マオ
「へぇ〜〜〜」
セロフィートのワッフルの説明を聞きながら、ジャムナイフを使いワッフルにミックスジャムを塗る。
「 あ〜〜ん 」と口を開けて、ワッフルを口に入れて食べる。
マオが最初に選んだワッフルは、生地の表面がカリッとしており、中はサクサクとして軽い食感のワッフルだった。
マオ
「………………。
うん、パンケーキもホットケーキも美味しいけど、ワッフルも美味しい!!
ジャムとか付けなくても全然食べれるよ」
セロフィート
「気に入ってくれました?」
マオ
「うん♪」
セロフィート
「作ってみたいです?」
マオ
「え?
うん、まぁ…な。
作り方が分かるなら作ってみてもいいかな?」
セロフィート
「作ってください」
マオ
「はぁ?
作るって──、ワッフルをか?」
セロフィート
「はい♪
作り方はワタシが教えます。
ワッフルのサンドイッチを作ってください」
マオ
「……………。
あのなぁ…、ド素人のオレが作るよりも、セロが作った方が出来も良くて美味しいに決まってるだろ?」
セロフィート
「マオの作ったワッフルサンドイッチが食べたいです」
マオ
「セロぉ……」
セロフィート
「一生のお願いです♪」
マオ
「1000回以上は聞いてるんですけど…」
セロフィート
「………………嫌…です?」
マオ
「……嫌じゃないけど…(////)」
セロフィート
「………………駄目…です?」
マオ
「……駄目でもないけど…(////)
( 狡いんだよなぁ〜〜。
こういう時のセロってさ。
でも…可愛いんだけど〜〜〜(////)
『 おねだり 』されてるみたいで照れる(////)
今、初めてワッフルを知ったド素人のオレが作ったワッフルを食べたいなんてさ、明らかに『 どうかしてる 』って思うけど…、抑出会った当初からセロは『 どうかしてる 』んだもんな… )
──もう、いいよ。
上手く作れるか分からないけど、セロの為だけにワッフルを作るよ。
ワッフルをパンの代わりにして、サンドイッチを作ればいいんだよな?」
セロフィート
「はい♪
有り難う、マオ(////)」
マオ
「う、うん…(////)」
今日、久し振りにワッフルを食べました。
店内で食べるワッフルではなかったので、モサモサして食べ難かったです。
お茶を持参していて良かった。
プレーンにしなかった自分を責めたい……。
次があるなら、プレーンを買って美味しくいただこうと思います。




