❗3.海賊船 2 〜 船長室 〜
──*──*──*── 船長室
〈 獣人 〉に《 船長室 》へ案内されたセロフィートとマオは、ソファーに座っていた。
向かい合わせに座っているのは〈 獣人 〉ではなく、二足歩行で生活する〈 獣族 〉だった。
体格も良く、胸板も確りしている逞しい〈 獣族 〉は、見た目的には男なのではないだろうか。
〈 船長 〉らしい格好はしていないが、どうやら彼が《 海賊船 》の〈 船長 〉らしい。
目の前の強面な〈 獣族 〉に対して、マオは少々ビビっていた。
見た目も恐く、言葉も通じず、威嚇でもされている様なプレッシャーを犇々と感じるのだから、マオの反応は一般的なのかも知れない。
マオの反応とは正反対なセロフィートは、〈 獣族 〉に対して全く以て臆していない。
敵意を剥き出しにしながら見下ろしている〈 獣族 〉に対して、何時もと変わらず、笑顔を振り撒いている。
会話も出来るし、何かあれば即時に〈 テフ 〉へ変換してしまえるのだから、恐れる必要はないのだろう。
セロフィート
「マオ、怖がらなくても大丈夫です。
此方が勝手に “ 海賊 ” と呼んでいるだけで、彼等は〈 海賊 〉ではないです」
マオ
「…………其は…そうだろうけど……」
セロフィート
「マオは何もしなくて良いです。
ワタシが話します」
小型犬みたいにプルプルと小刻みに震えているマオの様子を可笑しく思いながら、笑いも懸命に堪えながら、セロフィートは優しい眼差しで、微笑んでいる。
マオから視線を外し、目の前の〈 獣族 〉に向けると、セロフィートは〈 獣族 〉に話し始めた。
隣で話を聞いているマオには、セロフィートが〈 獣族 〉と何を話しているのか、さっぱり分からない。
唯、見ていて分かるのは、セロフィートと話している〈 獣族 〉の顔が、先程よりも恐さが和らぎ、穏やかなそうな、嬉しそうにな感じに見える事ぐらいだ。
セロフィートも心無しか楽しんで話をしている様に見える。
どのくらい話し込んでいただろうか。
セロフィートと〈 獣族 〉は握手を交わした。
どうやら話は円満に終わった様だ。
マオ
「……セ、セロぉ…話し合いは…どうなったんだ?」
セロフィート
「《 隠れ家 》に着いたら歓迎会をしてくれるそうです」
マオ
「歓迎会??
本当に?!
〈 獣族 〉も〈 獣人 〉はオレ達に敵意はないのか?」
セロフィート
「今の所はない様です。
今は保存食用の魚を取る為に漁へ出ているそうです」
マオ
「保存食……」
セロフィート
「15時には漁を切り上げ、《 隠れ家 》へ帰るそうです」
マオ
「《 隠れ家 》があるんだ…」
セロフィート
「≪ 無人島 ≫で暮らしているそうです。
楽しみですね、マオ♪」
マオ
「そだな……。
其より、ジェリさんだよ!
ジェリさんが心配なんだけど……」
セロフィート
「ジェリさんの事は『 大丈夫 』と言いました。
今頃は〈 獣人 〉さん達から手厚い歓迎を受けてます」
マオ
「手厚い歓迎??
──って何だよ?」
セロフィート
「大人の歓迎に決まってます」
マオ
「大人の歓迎??
何だよ〜〜〜。
そんな言い方されても分からないよ!」
セロフィート
「マオは分からなくて良いです。
分からない方が為です」
マオ
「どゆことだよ??」
セロフィート
「ふふふ……………………ふはっ…(////)」
マオ
「……セ、セロぉ〜〜?
どうした??
笑っちゃうくらい可笑しい事でもあるのか?」
セロフィート
「……ふふふ…えぇ…まぁ……はい…(////)
ふふふ…(////)」
何がセロフィートのツボになっているのか、マオには分からない。
セロフィートと話しをしている間に〈 獣族 〉は姿を消していた。
マオ
「……あれ?
セロ、〈 船長 〉さんが居なくなってるけど、何処に行ったんだ?」
セロフィート
「勿論、ジェリさんを歓迎する為に、イソイソと向かったに決まってます」
マオ
「えぇっ?!
ジェリさんの所に??
…………オ、オレ……ジェリさんが心配だから、様子を見に行って来る!」
セロフィート
「マオ、行ってはいけません。
此処に居なさい」
マオ
「はぁぁぁぁ??
何言ってんだよ!
ジェリさんが正気に戻った時、周りが〈 獣人 〉と〈 獣族 〉ばっかりだったら吃驚するだろ!!
気絶しちゃうかも知れないじゃないか!
オレは行くからな!」
ソファーから腰を浮かせて立ち上がったマオは、セロフィートの忠告を聞かず、ドアを乱暴に開けると《 船長室 》を出て行った。
バタバタと駆け出して行ったマオの足音を聞きながら、セロフィートは何も置かれていないテーブルの上にティーセット一式と紅茶菓子を出す。
ふんわりと口端を上げたセロフィートは、お茶の時間を楽しむのだった。




