❗3.海 5 〜 海賊船 2 〜
ジェリエンツがセロフィートの歌声に聞き惚れて惚けている様子を見てセロフィートは、クスリ…と小さく微笑んだ。
仕込みが出来たからだ。
暫くマオが白旗を振っていると、《 海賊船 》が停止した。
停止した《 海賊船 》から縄梯子が下りて来た。
縄梯子を伝い下りて来たのは、人間──ではなく、人の姿をしてはいるものの頭に獣の耳を生えているのが見える。
〈 獣人 〉と呼ばれている〈 亜人種 〉だ。
海に飛び込んだ〈 獣人 〉は、まるで犬掻きの様な──、人間から見たら明らかに奇妙な泳ぎ方をして、詩歌を歌っているセロフィートの船に向かって来ていた。
海に飛び込んだ〈 獣人 〉は1名ではなく、3名だった。
犬掻きで泳いで来た〈 獣人 〉達は、櫓が壊れて動かなくなった船に近付くと、船を押しながら、再び泳ぎだした。
マオ
「──ど…どうなってるんだよ…。
何で…〈 亜人種 〉が船を押して泳いでるんだよ?!」
白旗を振る手を止めたマオは、信じられない光景を見ながら茫然とし、立ち尽くすしかない。
セロフィート
「詩歌が効いたに決まってます」
マオ
「詩歌が効いた??
どゆことだよ??」
セロフィート
「知らなくて良い事もあります」
マオ
「そーいう言い方は狡いだろ!
セロとオレは夫婦なんだ。
隠し事なんて…」
セロフィート
「はいはい。
後でマオだけに教えます」
マオ
「本当かよ〜」
セロフィート
「約束します。
2人切りになった時に」
マオ
「…………なれるのかよ…」
セロフィート
「大丈夫です。
ワタシを信じてください」
マオ
「………………分かったよ(////)」
マイペースで落ち着いているセロフィートを見て、マオは諦める事にした。
何か起きてもセロフィートが何とかしてくれるだろう──と心の何処かで思っている自分が居るからだ。
マオ達が乗っている船は、《 海賊船 》の縄梯子の前に止まった。
マオ
「セロ、船が止まったけど──」
マオがセロフィートに聞こうと振り向くと、セロフィートが〈 亜人種 〉と何やら話をしていた。
セロフィートは人形である為、様々な言語が理解出来てしまい、会話が成り立つのである。
其は〈 亜人種 〉に対しても同様の様だ。
マオ
「( そう言えば前に、地球上に存在する若しくは過去に存在した言語なら理解出来る──みたいな事を言ってたっけ??
ん〜〜??
じゃあ、〈 亜人種 〉も地球上に存在する〈 種族 〉って事になるのか?? )」
セロフィート
「──マオ、縄梯子を使って船に上がってください。
救助してくれるそうです」
マオ
「えっ?!
本当かよ?!」
セロフィート
「本当です。
ジェリさんはボレニグさんが担いで上がってくれるそうです。
マオはボレニグさんの後から上ってください」
マオ
「う、うん…。
分かったよ…。
セロは?」
セロフィート
「ワタシはマオの後に上ります」
マオ
「セロが縄梯子を上がるのか?」
セロフィート
「いやですね、マオ。
ワタシだって縄梯子くらい上がれます。
心配しないでください」
マオ
「…………う、うん…。
( 縄梯子を上がるセロ……。
其って『 超レアなセロ 』なんじゃないのかよ! )」
マオは思わず縄梯子を上るセロフィートの姿を想像してみた。
〈 便所 〉に入り、便座の上に座るセロフィートの姿も有り得ないが、縄梯子を上がるセロフィートの姿もマオ的には有り得なかった。
出来れば直で見たくない姿だった。
マオ
「( …………想像したら駄目な事ってあるよな〜〜〜 )」
セロフィート
「──マオ、何してます。
ボレニグさんが上がり終えました。
マオも上がってください」
マオ
「──えっ?!
もう??
早っ!!」
セロフィートに言われたマオは、縄梯子を掴むと慎重に上がり始めた。




