❗3.海 3 〜 救われない者達 2 〜
ジェリエンツ
「救われない…ですか……」
セロフィート
「他人事ではないですよ、ジェリさん」
ジェリエンツ
「どういう事ですか?」
セロフィート
「今は未だ、〈 時空の亀裂 〉は吐き出すだけに止まってます。
然し、何時迄も吐き出すだけとは限りません。
〈 時空の亀裂 〉に吸い込まれたり、好奇心に駆られ自ら〈 時空の亀裂 〉へ入ってしまえば、終わりです。
何処に吐き出されるのは分かりません。
空気のない場所かも知れませんし、海の中かも知れません。
吹雪く山の奥かも知れませんし、灼熱の砂漠の真ん中かも知れません。
原住民と出会えても助かる保証はないです。
先ず、言葉は通じませんし、害がないと判断してもらえる保証もないでしょう。
人の姿をしていないかも知れません。
〈 時空の亀裂 〉を通った以上、負のエネルギーを得なければ生きられない身体に変換されますし、負のエネルギーの影響を受けて、意識と無関係に凶暴化してしまいます。
〈 時空の亀裂 〉が消えてしまえば、負のエネルギーを得られなくり、数日で死滅します。
他人事ではないでしょう?」
ジェリエンツ
「………………〈 時空の亀裂 〉には近付かない様にした方が良いんですね…」
セロフィート
「そうです。
お土産が1つ出来ましたね」
ジェリエンツ
「……そ、そうですね…」
マオ
「…………セロ、〈 海賊 〉を見付けたらどうするんだ?
いきなり攻撃するのか?」
セロフィート
「まさか。
そんな事しません。
遭難を装います」
マオ
「遭難??」
セロフィート
「はい♪
遭難している所を救助してもらいます」
マオ
「救助してもらう……だってぇ?!
──馬鹿言うなよ!!
相手は〈 海賊 〉だぞ!
然もだ、人間じゃない〈 亜人種 〉だぞ!
助けてくれる訳ないだろ!!」
セロフィート
「マオ、試してもいないのに決め付けてはいけません。
ワタシ達の姿は〈 漁師 〉に見えません。
誰が見ても非力で弱々しい遭難者です」
ジェリエンツ
「…………騙されてくれるでしょうか…」
セロフィート
「ワタシに任せてください」
マオ
「…………其で?
仮にだけど、〈 海賊 〉達に遭難者として救助されたとしてだ、其の後はどうするんだ?
全滅させるのか?」
セロフィート
「まさか。
彼等の《 隠れ家 》へ、大人しく連行されます」
ジェリエンツ
「──れっ…連行されるんですか?!」
セロフィート
「そうです。
《 隠れ家 》へ連行されたら──。
マオならどうするか、分かりますね?」
マオ
「船を壊して、《 隠れ家 》を潰すんだよな!!」
ジェリエンツ
「成る程!
船を壊して、《 隠れ家 》を潰してしまえば、〈 亜人種 〉は〈 海賊 〉の真似事が出来なくなりますね!!」
セロフィート
「違いますし。
彼等と交流して仲良くなります」
マオ
「はい??
仲良く…なる??」
セロフィート
「さっき言ってましたね。
殺さない方法があるなら──とか」
マオ
「う、うん…。
言ったけど…」
セロフィート
「駄目元で試してみましょう」
マオ
「セロぉ…(////)」
ジェリエンツ
「──ですけど、仲良くなると言っても何をどうするんですか?」
セロフィート
「其処はワタシに任せてください。
交流が無理なら、予定通り〈 亜人種 〉を全滅させます。
良いですね、マオ」
マオ
「う、うん…。
分かったよ……」
セロフィート
「宜しい。
ジェリさん、そろそろ船を濃いでください」
ジェリエンツ
「え゛っ?!
自分が漕ぐんですか?」
セロフィート
「当たり前です。
其の為のジェリさんです。
お願いします」
ジェリエンツ
「………………分かりました…」
ジェリエンツは慎重に立ち上がると、船の後ろに付いている櫓柄を握る。
船頭の経験等全くないジェリエンツだが、船頭が船を漕ぐ姿は遠目に見ていた事はあった。
船頭の動きイメージしながら見様見真似で櫓柄を押し引きしながら船を漕ぎ出すのだった。




