❗3.海 2 〜 救われない者達 1 〜
マオ
「…………だから、仕方無いんだ…」
ジェリエンツ
「マオ様…。
…………〈 時空の亀裂 〉の事なら自分も聞いてますから、少しは知ってます。
ですけど…〈 時空の亀裂 〉の悪影響を受けて〈 亜人種 〉が凶暴化すると言うのは……」
セロフィート
「初耳です?」
ジェリエンツ
「は、はい…」
セロフィート
「仕方無いです。
未公開の情報らしいですし」
ジェリエンツ
「え?!
未公開の情報なんですか??」
セロフィート
「あくまで『 らしい 』です」
マオ
「……セロ、ジェリさんには話していいんじゃないのか。
戦力にならないジェリさんを態々連れて来たのには何か理由があるんだろ?」
セロフィート
「おや?
そう思います?
買い被り過ぎです」
マオ
「セロ!
オレ達の間に秘密は──」
セロフィート
「はいはい…。
ジェリさんに知ってる事を話すとしましょう」
ジェリエンツ
「知ってる事…ですか??」
セロフィート
「≪ エルゼシア大陸 ≫には元々〈 怪物 〉〈 化物 〉〈 魔物 〉〈 亜人種 〉等は存在しませんでした。
彼等は何処から来たのか……。
気になりますよね?」
ジェリエンツ
「は、はぁ……」
セロフィート
「動物が突如凶暴化して人を襲う様になったのも、突然変異の動物が大量に増えたのも、総ての原因は〈 時空の亀裂 〉にある──という結論に至ってます」
ジェリエンツ
「〈 時空の亀裂 〉が原因なんですか??」
セロフィート
「そうです。
何故、≪ エルゼシア大陸 ≫に〈 時空の亀裂 〉が出現したのか──。
其については現在も解明されておらず、不明のままです。
〈 時空の亀裂 〉が出現した時に膨大で強大なエネルギーが発生している事が判明してます。
あまりにも膨大で強大なエネルギーは、生態系に多大な悪影響を与えました。
其の影響を受けて、動物が突如凶暴化し、突然変異の動物が大量に増えました。
其だけでは止まらず、〈 時空の亀裂 〉を通り、〈 怪物 〉〈 化物 〉〈 魔物 〉〈 亜人種 〉等が≪ エルゼシア大陸 ≫へ現れました。
〈 時空の亀裂 〉を通って現れた〈 怪物 〉〈 化物 〉〈 魔物 〉〈 亜人種 〉は、〈 時空の亀裂 〉が存在し続ける限り、悪影響を受け続けます。
〈 時空の亀裂 〉に関しては誰にもどうにも出来ません」
ジェリエンツ
「………………セロフィート様にもですか?」
セロフィート
「勿論です。
元凶である〈 時空の亀裂 〉が消滅すれば、様々な問題は解決する事でしょう。
然し、〈 魔法 〉は万能ではないです。
ワタシにもどうする事も出来ません」
マオ
「………………≪ エルゼシア大陸 ≫の陸民にとって、〈 時空の亀裂 〉を通ってやって来た〈 怪物 〉〈 化物 〉〈 魔物 〉〈 亜人種 〉は平穏な日常を脅かす天敵になっちゃうんだよな…。
〈 時空の亀裂 〉の悪影響を受け続ける所為で、凶暴化が止まらないんだから……」
ジェリエンツ
「マオ様は〈 亜人種 〉を傷付けたくないんですね…」
マオ
「…………だってさ、向こうからしたら、訳も分からないまま、知らない世界に来てる訳だろ?
不安だろうし、怖いだろうし、戸惑うに決まってるよ。
静かに暮らしたいと思っても、勝手に敵だと思われて、危険視されて、意味も判らず襲われたら──、家族や仲間を守る為に牙を向けて戦うしかないじゃないか。
望まなくても、〈 時空の亀裂 〉から放たれる負のエネルギーに心を侵食されて、知らない内に凶暴化して……。
〈 怪物 〉も〈 化物 〉も〈 魔物 〉も〈 亜人種 〉も被害者なんだよ…。
…………被害者…だから……出来るなら、殺さない方法で助けたい……。
………………だけど、そんな方法は…………ないんだよ…。
( ──オレが〈 皇 〉になったら…、〈 神の遣い 〉が降りて来て、〈 時空の亀裂 〉は消えるけど……、〈 時空の亀裂 〉が消えてしまったら……〈 時空の亀裂 〉を通って来た総ての生物は死に絶えてしまう…。
〈 時空の亀裂 〉を通った時に、負のエネルギーを受け続けないと生きられない身体に変換されてしまってるから… )
……救いなんてないんだ…」




