❗3.屋台公園 2 〜 食べ歩きしよう 2 〜
店員
「残念ですけど、《 ハリンポルト 》と《 ウィリンポス 》の《 屋台 》はないですね…。
有名店は《 屋台 》を出せない決まりになっているんです。
店舗を持つ前は、《 屋台 》で営業していたそうですよ」
マオ
「えっ?
《 ハリンポルト 》も《 ウィリンポス 》も最初は《 屋台 》からだったの?」
店員
「そうだよ。
《 屋台 》営業で御客様が増えて、店の名前が売れたら、ファン達が資金を募って、《 飲食街 》に店舗を建てるんだよ。
有名店になる迄は《 屋台 》の出店は続ける事が出来るんだよ」
マオ
「へぇ…。
そうなんだ〜〜。
──あっ、そうだ。
惣菜クレープを販売してる《 クレープ屋 》って知らない?」
店員
「惣菜クレープ?
あぁ…もしかして《 クラリエイシェル 》の事かな?
他の《 クレープ屋 》はスイーツクレープだけど、《 クラリエイシェル 》は惣菜クレープを売りにして大成功してるからね。
彼処の惣菜クレープは僕も好きでね、〈 屋台番 〉の時は必ず買ってるんだよね〜。
余分にメニュー表持ってるからあげるよ」
マオ
「有り難う(////)」
マオは親切な店員から《 クラリエイシェル 》のメニュー表を貰った。
セロフィート
「良かったですね、マオ」
マオ
「うん!」
セロフィート
「店員さん、有り難う御座います。
──御礼に手巾をどうぞ」
店員
「は、はぁ…手巾…ですか?」
マオ
「──あっ、其って、試作品の手巾じゃないよな?」
セロフィート
「違います。
此は非売品の手巾です」
マオ
「非売品??
そんなもん迄作ってるのかよ…」
セロフィート
「コレクター魂を擽るでしょう?」
店員
「あ、彼の…非売品の手巾って……」
マオ
「えと……近々〈 魔法陣 〉が印刷された手巾を販売する予定なんだ」
店員
「〈 魔法陣 〉が印刷された手巾……えっ、じゃあ、此は其の非売品って事ですか?!」
セロフィート
「そうなります」
店員
「………………セロッタ・カンパニー??
──え゛っ?!
《 セロッタ・カンパニー 》って、彼の《 セロッタ・カンパニー 》ですか??」
セロフィート
「そうですね。
彼の《 セロッタ・カンパニー 》です」
マオ
「有名なのか?
結構マイナーな会社だと思ってたけどさ…」
店員
「マイナーなんてとんでもないですよ!!
《 セロッタ・カンパニー 》って言ったら、ハンドクリームを販売して超有名になったんですから!
ハンドクリームだけじゃなくて、フットクリーム,ボディクリーム,フェイスクリーム,リップクリーム,爪クリームとか部分用にも出してて、女性達に大人気商品ですよ!
《 セロッタ・カンパニー 》は創立から100年以上経っても業界NO.1の座に君臨してるんです!
何処の業界も、《 セロッタ・カンパニー 》が販売してるハンドクリーム以上のハンドクリームは未だに作れないらしいですし……。
他にも色々な店を展開してて──。
もしかして、《 セロッタ・ベーカリー 》も《 セロッタ・カンパニー 》と関係あるんですか?」
セロフィート
「《 パン屋 》ですから、『 ベーカリー 』にしただけです」
マオ
「《 飲食店 》関係は全部、『 ベーカリー 』で統一してるだろ」
セロフィート
「はて?
そうでした?」
マオ
「そうだよ!
そういう所は本当、好い加減だよな!」
店員
「《 セロッタ・カンパニー 》と《 セロッタ・ベーカリー 》の関係者に会えるなんて光栄です!!
此の手巾大事にします!!」
セロフィート
「喜んでもらえてワタシも嬉しいです」
マオ
「そうだ!
折角だしさ、サインしてあげたら?
店員さんの名前、なんて言うの?」
店員
「えぇっ?!
…………ケラタントレス…です」
マオ
「じゃあ、『 トレス 』さんだね!
セロは《 セロッタ・カンパニー 》の社長なんだ。
ほら、セロ!」
セロフィート
「はいはい。
袋の裏に書きますね」
マオにせがまれたセロフィートは、非売品の袋を裏返すと────。
親愛なるケラタントレスへ捧ぐ
○年○月○日○曜日
港町ピレトレッシン
屋台公園にて。
《 セロッタ・カンパニー 》《 セロッタ・ベーカリー 》創立者兼社長
タシィルドレテク・セロッタ
セロフィート
「こんな感じで良いです?」
マオ
「…………逆に色々と書き過ぎかもな……」
セロフィート
「トレスさん、どうぞ」
ケラタントレス
「あ…有り難う御座います…。
額縁に入れて家宝にしますっ!!」
セロフィート
「好きにしてください」
マオ
「トレスさん、色々と有り難う!
じゃあね!」
マオは《 クラリエイシェル 》のメニュー表をくれたケラタントレスに向かって元気に手を振りながら、セロフィートと去って行った。
ケラタントレスは、夢でも見ているんじゃないかと思い、頬を殴ってみたが、夢ではない為、痛かった。
ケラタントレス
「( …………こんな事ってあるんだな…。
今日の〈 屋台番 〉で良かった!! )」
ケラタントレスは非売品の手巾が汚れない様に大事に仕舞うのだった。




