❗3.応接室 3 〜 謝罪に命を懸けてみた 〜
セロフィート
「──さぁ、アンドレムさん,イシュハルトさん、此の上に座り、マオとワタシに最上級の土下座を見せてください♪」
セロフィートは冗談ではなく本気だった。
此処でセロフィートの暴走を止められるのは、もうマオしか居なかった。
目の前に正座をしている2人の男性は、固まっているのかピクリ…とも動かない。
マオにはどちらがアンドレムでイシュハルトなのか分からないが、セロフィートと話をしていた男性は、全身に油汗を掻きながら、小刻みに体を震わせている。
マオから見ても何もかもが限界の様に見えて仕方無い。
此のまま気絶してしまうのではないかとすら思う。
全く一言も発言していない男性も苦渋を無理矢理飲まされた様な辛そうな表情をしている。
此方も放っていたら気絶してしまいそうだ。
当のセロフィートはと言うと「 どうしました? 早く見せてください 」と何の悪びれもなく言っている。
絶対に待たせてはいけない相手を待たせてしまった彼等が悪いのは明らかなのだが、セロフィートのしている事は度が過ぎていた。
待たされた事に対して本当に腹を立てているならば、セロフィートは態々こんな回りくどい事はしないだろう。
正座をしている2人の様子や反応を見て面白がり、此からの言動も楽しみにしているのかも知れない──とマオは思った。
マオ
「…………な、なぁ…セロさん…。
もう、此の辺にしてあげないか?
2人共さ、顔色が悪くて、かなりヤバそうだしさ…」
セロフィート
「マオ…。
『 死ぬ気の謝罪 』の土下座を見たくないです?」
マオ
「見たくないよ!
見たい訳ないだろ!!
そんな〈 火魔法 〉で熱々に熱した剣山の上で土下座する痛々しい姿なんて!!
針が下腿に食い込むだろ!
血だって沢山出るだろうし!」
セロフィート
「高温の針ですし、血は出ません」
マオ
「嘘吐けぇっ!!
──っていうか、何で生け花にしか使わない剣山なんて出してるんだよ!
然もデカいし!」
セロフィート
「人が正座をするには此ぐらいの大きさが必要でしょう?」
マオの目の前には大人が1人、余裕で土下座が出来る程の大きさもある長方形の剣山が2つあった。
1つ目の剣山は高温で熱々に熱せられており、土下座をすると両掌,下腿,額に鋭く尖った細い針が深々と刺さり、痛さと熱さに苦悶と悶絶をする事になるだろう。
火傷と刺し傷は全治何ヵ月になるだろうか……。
2つ目の剣山には〈 火魔法 〉ではなく、〈 水魔法 〉と〈 雷魔法 〉が使われていた。
剣山の先端からは水が出ており、窪みに溜まっている水には電気が流れている。
正座をすると水を通って体内から電気に感電する仕組みになっている様だ。
土下座中に感電死してしまわないか激しく心配になる剣山だ。
マオ
「──セロは、やり過ぎなんだよっ!!
土下座させるなら、普通の剣山でもいいじゃないか!
何で〈 火魔法 〉〈 水魔法 〉〈 雷魔法 〉を使う必要があるんだよっ!!
此じゃあ、拷問だよ!!」
セロフィート
「マオ…。
怒らないでください。
鉄の乙女をヒントにして作った自信作なのに…」
マオ
「拷問器具を作るなっ!!
…………あ、いや……作るのは別にいいんだけど…。
人間に使ったり、試したら駄目だ!!」
セロフィート
「土下座は人間にしか出来ません。
人間で試すしかないでしょう。
大丈夫です。
死なない程度に調整しますし。
──いえ、調整済みです♪」
マオ
「駄目ったら駄目なのっ!!
大体なぁ、どうせ使うなら、もっと悪党にすればいいだろが!」
セロフィート
「面白そうなのに…」
マオ
「そんな顔したって駄目なんだからな!」
セロフィート
「アンドレムさん,イシュハルトさんの代わりに、マオが使ってくれます?」
マオ
「何でだよ!!
オレは待たされた方だぞ!
嫌に決まってるだろ!!」
セロフィート
「マオの我儘さん」
マオ
「セロの分からず屋!!」
セロフィート
「………………まぁ、良いです。
マオの可愛い『 おねだり 』に免じて『 死ぬ気の謝罪 』は勘弁してあげましょう。
今回だけです。
次はないです」
マオ
「………………有り難な…」
セロフィート
「今夜も楽しい夜になりそうですね、マ〜〜〜オ♪」
マオ
「………………そ、そだな……(////)
( くっそ〜〜〜う、セロめぇ!!
此が狙いじゃないよなぁ〜〜 )」




