✔ 2.取調室 1 〜 朝食 1 〜
──*──*──*── 取調室
取調室の中は丁寧な掃除が行き届いており清潔感に溢れていた。
マオは自分が想像していた取調室の様子とあまりの違いに言葉を失っていた。
セロフィートとマオが案内された取調室には、大きなテーブルがあり、椅子ではなくソファーが置かれている。
カーテンの柄は可愛いし、壁の色も心が落ち着く色合いだ。
壁には思わず微笑んでしまいそうになる絵が額縁に入れられて飾られている。
ソファーは座り心地が好さそうで、 “ 寛げない取調室 ” とは程遠い感じがした。
マオ
「 棚があるね。
お皿,ティーセット,カップ,食具,珈琲,紅茶……色々と揃ってるよ。
あっ、テーブルの上を拭く用のウェットティッシュ迄ある 」
セロフィート
「 事情聴取を受ける被害者の緊張を少しでも解す為の工夫がされている様です。
マオ、お皿とフォーク,ティーセットを3人分用意しましょう 」
マオ
「 うん。
テーブル、拭くよ 」
マオはウェットティッシュを取ると、テーブルの上を丁寧に手早くサッサッと拭いた。
ティーセット,お皿,フォーク,使い捨てのオシボリ等をテーブルの上に置く。
セロフィートはテーブルの上に箱を置き、箱を開け、器用にタルトを大皿の上へ移した。
マオ
「 …………此の絵、中々独創的な絵だよな…。
子供が描いたのかな? 」
セロフィート
「 サインが書かれてますね。
アリエール・ポワムセン……。
誰でしょう? 」
マオ
「 知らないけど…。
エイミスさんなら知ってるかな? 」
セロフィート
「 マオの描いた絵も一緒に飾ってもらいません? 」
マオ
「 止めろよ!
オレの下手な絵を額縁に入れて飾るとか、どんな罸ゲームだよ!
そんな事されたら、オレの心が粉々に砕けるよ!
立ち直れないよ!!
却下!
絶対に却下だからな!! 」
セロフィート
「 緊張を解すのにピッタリだと思いますけど? 」
マオ
「 駄目ったら駄目なんだからな!! 」
セロフィート
「 残念です… 」
マオ
「 残念がられても困るよ! 」
マオは両頬を膨らませると、本気で残念そうな顔をするセロフィートを睨みながら文句を言った。
此処でちゃんと釘を刺しておかないと、勝手に絵を交番に寄附され兼ねないし、本当に絵を飾られてしまいそうで怖い。
其だけは何としてでも阻止したいマオだった。
マオ
「 そう言えばさ、タルト渡しちゃって良かったのか?
全部食べるつもりで買ったんだろ?
警察官にあげちゃうなんてさ。
………………何か賄賂を渡したみたいな感じだよな… 」
セロフィート
「 何を言いますか。
マオとワタシはあくまでも被害者として保護されてます。
渡したタルトは賄賂になりません 」
マオ
「 そ、そうなのかな?
まぁ…生物だし?
傷む前に食べてもらえるなら有り難いけどさ……。
セロなら全部食べれただろ? 」
セロフィート
「 “ 備え有れば ” と言いますし。
“ こんな事もあろうかと ” です 」
マオ
「 へ…へぇ…??
でもさ、何で備えといたのさ? 」
セロフィート
「 要するに “ 物は言い様 ” という事です 」
マオ
「 ………………どゆことだよ?! 」
セロフィート
「 どういう事だと思います? 」
マオ
「 聞いてるのオレなんですけど…… 」
セロフィート
「 マオ、座りましょう 」
マオ
「 うん? 」
マオはセロフィートに促され、座り心地の好いソファーに腰を下ろし座る。
マオの右側に腰を下ろし、静かに座ったセロフィートは、マオの手を取ると優しく握る。
マオは顔を赤らめながらセロフィートを上目遣いに見上げた。
マオ
「 …………セロ?? 」
セロフィート
「 ──マオ、君は昨夜、お酒を飲みました? 」
マオ
「 ……え?? 」
セロフィート
「 覚えてません? 」
マオ
「 ………………??
オレ…お酒なんて飲んでないよ。
『 飲んでは駄目です 』て何時もセロが言ってるじゃないか。
何だよ〜〜。
セロが居ないからって、オレが約束を破ったと思ってるのかよ? 」
セロフィート
「 其なら宜しい。
マオ──、君は昨夜、お酒を飲まなかった。
そうですね? 」
マオ
「 くどいよ!
オレは飲んでない!!
クラウノさんに兎肉の肴を作ってもらって食べたけどな! 」
セロフィート
「 兎肉の肴…です? 」
マオ
「 そっ!
クラウノさんも若い頃はハリンポルトで料理長をしてたんだってさ。
今でも朝はハリンポルトの厨房で兎肉を捌いたり、下拵えを手伝ってるんだって 」
セロフィート
「 そうですか 」
マオ
「 あっ、そうそう!
ウィリンポスの店長さんはクラウノさんの妹さんなんだって。
『 名刺を見せたら良いよ 』って教えてくれたよ 」
セロフィート
「 良い事を教えてもらえましたね 」
マオ
「 うん!
後は〜〜屋台公園の── 」
マオはクラッドウォウノから教えてもらった事をセロフィートに話した。




