✔ 1.酒場オムニア 5 〜 初・体・験 4 〜
何か──ではなく、人に襲われたのかも知れない。
然し、何の為に酒場で楽しく酒を飲んでいた客達が襲われなければならないのか。
其なりの理由でもあるのだろうか。
マオには全く判らない。
ガクガク,ブルブルと震える足に鞭を打ち、マオは店内を歩き出した。
今のマオは丸腰に見えるが、ナイフと短剣を隠し持っている。
守護衛士であるマオは、素手で戦っても十分に強い。
セロフィートと旅を始めてからは、セロフィートから直々に実戦に近い稽古を付けてもらっている。
マオの戦闘力は相当高い。
人間が本気を出してマオに戦いを挑んだとしても決して敵わない。
鯔の詰まり、客達を襲った犯人が、マオに襲い掛かって来たとしても返り討ちに遭ってしまい勝てないという事だ。
然し、セロフィートが傍に居ない今のマオは、セロフィートに牙を抜かれ、飼い慣らされ、愛犬と成り下がった残念な狼の様なモノである。
守るべきセロフィートが身近に居ない今のマオに、客達を襲った犯人を斬れるのか、問題があった。
2階から物音がした。
もしかしたら、未だ無事な誰かが──、自分以外の生存者が居るのかも知れない。
マオ
「 …………犯人の可能性もあるけど…… 」
マオは覚悟を決めて、2階へ上がる事にした。




