✔ 1.酒場オムニア 4 〜 初・体・験 3 〜
マオはタンブラーに注ぎ入れたお酒を、まるで水を飲むかの様にグイッと飲み干す。
マオ
「( ……………………あれ??
カクテルより美味しくない…。
セロは美味しそうに飲んでるのに!
此のお酒が美味しくないだけかも……。
他のなら美味しいかな? )」
お酒を飲み干したマオは、次の酒瓶に手を伸ばし、タンブラーに注ぎ入れた。
そして、飲み干す。
クラッドウォウノがカウンターに戻って来る迄の間に、マオは此を数十回も繰り返した。
然し、何の酒を飲んでみてもマオには美味しく感じなかった。
幾ら飲んでも酔わないマオは、謂わばワクだ。
どんなに大量の酒を飲もうが、どんなにアルコール度数の強い酒を飲もうが、酔う事はない。
マオはカウンターの上に並べられている酒を飲み干してしまっており、酒瓶の中は空っぽだ。
クラッドウォウノがチョイスしたのは初心者用のアルコール度数の弱い酒ばかりだが、マオには関係なかった。
マオは全く気付いていないが、大量にアルコールを摂取してしまったマオの体には、とある変化が起きていた。
セロフィートがマオにお酒を飲まない様に言い聞かせ、禁止していたのには其なりの理由があった。
アルコールを摂取させない為だ。
何故、マオにアルコールを摂取させないかと言うと────。
何時の間にやらガヤガヤと店内が騒がしくなっていた。
マオは『 時間も時間だし、客が増えたのかな? 』と思いながら、タンブラーに注いだ酒を飲んでいた。
背後で、ドカッ──だの、バキッ──だの、ドスッ──だのと、音が聞こえる。
此処は酒場である。
酔っ払い同士が些細な事で揉め事を起こし、喧嘩を始め、騒々しくなるのは日常茶飯事だ。
日頃の鬱憤を晴らすかの様に、喧嘩を煽る酔っ払いも居れば、便乗して喧嘩に加わる酔っ払いも居る。
其でも結局最後は誰かが皆に酒を奢り、円満と迄は行かないものの、何とか喧嘩も治まり、騒ぎも沈静化して朝を迎えるのだ。
今回の騒ぎもそんな感じで終わる筈だった。
そう、アルコールを摂取したマオが此の場に居なければ────である。
店内には客が増えたのか、先程よりも騒がしくなって来ている。
客達の声も段々と大きくなって来ている気がしないでもない。
マオ
「( クラウノさんどうしたんだろう?
もう1杯カクテルを作ってもらいたいんだけどな…… )」
マオはクラッドウォウノが作ってくれたカクテルを飲みたくて仕方がなかった。
様々なジュースがあり、様々な酒瓶がある。
タンブラーにジュースを入れ、お酒を入れればカクテルは出来る。
マオが勝手に作る事も出来るが、散々無断で酒を飲みまくった上に、カクテルを作るのは立派な犯罪行為だ。
後から金銭を支払えばチャラに出来る様な問題でもない。
店主に無断で酒瓶を空にするのは止めましょう。
犯罪駄目、絶対!!!!
然し、マオは既に人間ではない為、人間の決まりを律儀に守る必要はないのだった。
マオ
「 ──クラウノさん。
オレ、カクテル飲みたいんだけど── 」
飲みたくて堪らないマオは、常連客と話しているクラッドウォウノに声を掛けた。
後ろを振り向いたマオは、店内の変わり様に愕然とした。
楽しそうで賑やかだった筈の店内は、マオの想像を遥かに上回る荒れ様だった。
テーブルも椅子もひっくり返っており、店内中の彼此には大量の血が飛び散っている。
マオ
「 ………………な…何だよ……此……??
…………何でこんな事に…??
………………クラウノ……さん…?? 」
血塗れの店内は、ガラン──と静まり返っている。
店内に倒れている人達は、此の店の常連客だろうか?
倒れている人達は、酷い出血をしていた。
体から流れ出ている大量の血が床を汚している。
手当てをしても助かりそうもない程に負傷している客達の姿を見詰めるマオは、左手を口に当てながら立ち尽くした。
店主 の姿を探すが1階には見当たらない。
マオ
「 ………………何で…皆……こんな……。
何かに襲われた??
…………でも何に…………??
──っ……クラウノさん……クラウノさんを探さないと!! 」
何故、客達が殴られ、刺されているのか──。
両腕や両足を切断されている客の姿もあれば、頭を割られて息絶えている客の姿もあった。
ほのぼのした内容で終わらせる筈だったのに何でこんな展開になってしまったのか……。
見ている録画アニメの影響でしょうかネ~~??




