✔ 1.酒場オムニア 3 〜 初・体・験 2 〜
マオ
「 そしたらセロの声が聞こえて来たんだ。
セロが5人組と話を始めて……。
何だか良く分からない内に、セロが5人組と一緒に《 飲食街 》から出て行ったんだ。
訳も分からず残されたオレは、1人で酒場へ戻って来た訳だよ 」
クラッドウォウノ
「 そうだったのかい… 」
マオ
「 セロは『 朝迄には戻って来る 』な事を言ってたけど…… 」
クラッドウォウノ
「 其なら裏口の鍵を開けとかないといけないね 」
マオ
「 大丈夫だよ。
裏口の鍵も部屋の鍵もセロが持ってるんだ 」
クラッドウォウノ
「 そうかい?
其なら安心だねぇ 」
マオ
「 まぁね……。
明日の朝食はタルトなんだ。
クラウノさん、酒場は何時頃から開店するの? 」
クラッドウォウノ
「 ウチの場合は17時頃から開店するよ。
閉店は2時頃だね。
開店準備は15時頃からしてるねぇ 」
マオ
「 そうなんだ?
開店は朝からじゃないんだね 」
クラッドウォウノ
「 朝はハリンポルトの厨房で兎肉を捌いて、下拵えの手伝いをしているからねぇ 」
マオ
「 そっか。
さっき言ってたね。
昼食はハリンポルトで済ませるの? 」
クラッドウォウノ
「 寒い日や雨の日はね。
晴れて暖かい日は《 屋台公園 》で済ませるよ。
木陰で涼みながら食べるのが気持ち良くてね。
木陰にはテーブルとベンチが設置されているんだよ。
マオ君も吟遊詩人様と行ってみると良いよ。
賑やかで楽しい気持ちになるからねぇ 」
マオ
「 うん。
滞在中に行ってみる!
≪ 都 ≫は夕方にならないと屋台は始まらないんだけど、≪ 港町 ≫の屋台は昼から始まってるの? 」
クラッドウォウノ
「 朝からだよ。
朝,昼,夕,晩,夜とメニューが変わるんだよ。
賑わう理由の1つだね 」
マオ
「 メニューが変わっちゃうんだ? 」
クラッドウォウノ
「 時間限定メニュー,日替わりメニュー,曜日限定メニュー,習慣限定メニュー,月替わりメニュー,季節限定メニュー──と屋台によって色々あるからねぇ。
ファンは多いよ 」
マオ
「 屋台は何時頃から開店してるの? 」
クラッドウォウノ
「 全部の屋台ではないけどね、7時頃に行けば大体の屋台は開店してるよ 」
マオ
「 朝の7時から?!
早いんだね。
行けるのは昼かなぁ… 」
クラッドウォウノ
「 昼頃に行くなら “ クラリエイシェル ” へ行ってごらん。
クレープ屋だけどね、スイーツのクレープじゃなくて、惣菜のクレープを販売しているんだよ。
種類も豊富で手頃で食べ易いとね、若者に人気だよ 」
マオ
「 えっ?!
惣菜のクレープ?
わぁあっ!
食べてみたいな〜〜。
クラウノさん、教えてくれて有り難う!
セロと行ってみるよ! 」
≪ 港町 ≫へ来て、楽しみが出来たマオは、嬉しくなり兎肉の肴を食べながら、カクテルをチビチビと飲んだ。
クラッドウォウノに言われた通り、飲み易い為、ついつい一気飲みしてしまいたくなるが、マオは我慢して少しずつ飲む。
マオ
「 ──ぷはっ!
クラウノさん、おかわり〜〜! 」
空になったタンブラーをクラッドウォウノの前に出す。
クラッドウォウノ
「 マオ君、カクテルはジュースじゃないんだよ。
飲むなら少し時間を空けた方が良い。
ほら、新しい肴を作ったからね 」
マオ
「 有り難う〜〜、クラウノさん! 」
カクテルを飲みたがったマオだったが、クラッドウォウノが作ってくれる迄、肴を食べる事にした。
マオ
「 クラウノさんは、2時に酒場を閉めたら此処で休むの? 」
クラッドウォウノ
「 そうだよ。
2階に専用の部屋があるからね。
寝るだけのだけどね。
私は3階の部屋で寝ている客を起こして酒場を出るけど、マオ君は15時迄ゆっくりしてくれて良いからね 」
マオ
「 うん。
( 15時迄は自由時間になるんだな。
オレもセロと一緒に冒険者ギルドに行こうかな?
少しでもセロと居たいし(////)
っていうか、1日くらい2人きりでイチャイチャしたいんだけどなぁ……。
本当だったら、今頃はセロとベッドの上でイチャイチャしてる筈なのに…… )」
肴を食べながら黙々とセロフィートの事を考えるマオは、カウンターにクラッドウォウノの姿がない事に気付いた。
クラッドウォウノは来店した4人連れの常連客と話をしている様だ。
常連客とは仲が良いらしく、クラッドウォウノ達の話は盛り上がっている。
マオは目の前に置かれている酒瓶へ手を伸ばした。
酒瓶の中には、お酒が入っているのが分かる。
未だカクテルを飲みたいマオは、クラッドウォウノに見付からない様にコッソリとタンブラーの中にお酒を注ぎ入れた。
此は立派な犯罪である。
良い子も悪い子も、真似をしてはいけない。




