✔ 1.酒場オムニア 2 〜 初・体・験 1 〜
──*──*──*── カウンター
マオは1人でカウンターに座っていた。
クラッドウォウノが態々マオの為に作ってくれた肴を黙々と食べている。
セロフィート用に買ったタルトの入った紙袋は、3階にあるクラッドウォウノが貸してくれた部屋に置いてある。
部屋の鍵はセロフィートが持っているのだが、出掛ける時にドアに鍵を掛けずに出たお蔭だ。
マオ
「 クラウノさんの作ってくれる兎肉の肴、美味しい!
ハリンポルトで食べた味と違うね。
オレ、クラウノさんの味付け好きだよ!! 」
クラッドウォウノ
「 有り難う、マオ君。
マオ君は庶民的で素朴な味付けが好きみたいだねぇ 」
マオ
「 エヘヘ。
( セロも居ないし、お酒を飲んでも良いよな??
飲んだって〈 テフ 〉に変換されるんだから、酔ったりしないし。
毒が効かないんだから、酒だって効かないよな? )
──クラウノさん、オレにも飲めそうなお酒ない? 」
クラッドウォウノ
「 マオ君、飲めるのかい? 」
マオ
「 セロには止められてるけど……、セロも居ないし。
少しぐらいなら良いかな──って 」
クラッドウォウノ
「 吟遊詩人様から止められているなら止めといた方が良いと思うけどねぇ… 」
マオ
「 ………………でも、オレは成人してるし、大人だし、飲んだって問題ない歳なんだよ 」
クラッドウォウノ
「 そうかい?
其なら…少しだけ飲んでみるかい?
飲み易い様にジュースで割ったカクテルを作ってあげよう 」
マオ
「 有り難う、クラウノさん!
どんなジュースがあるの? 」
クラッドウォウノ
「 何でも揃ってるよ。
メイカンって言う果物があるけど、メイカンでお酒を割ると色が変わって綺麗だよ 」
マオ
「 へぇ〜〜。
どんな風に綺麗なの? 」
クラッドウォウノ
「 ハハハ、其は見てのお楽しみだよ。
飲み易いけど、一気飲みしない様にね。
少しずつ飲むのがオススメだよ 」
マオ
「 うん! 」
クラッドウォウノはマオの為にメイカンを絞った果汁100%ジュースを作った。
クラッドウォウノ
「 お待たせ、マオ君。
此の中にお酒を入れて飲むんだよ。
入れるお酒で色が変わるよ。
初心者のマオ君には…………、此の辺りのお酒が良いね。
何れにするかい? 」
クラッドウォウノはマオの前に酒瓶を横に並べて見せた。
マオ
「 わあっ…!
何れも綺麗な瓶だね。
見てるだけで欲しくなっちゃうよ! 」
クラッドウォウノ
「 ハハハ。
最近の酒瓶は、空になっても部屋に飾って楽しめる様に作られているのも多いんだよ 」
マオ
「 そうなんだ〜。
良いなぁ。
オレもセロにねだっちゃおうかな〜〜。
何れにしよう…??
……………………………………………………うん。
此の黄色の瓶にするよ! 」
たっぷりと考えて選んだマオは、黄色の瓶を持つと、クラッドウォウノに手渡した。
クラッドウォウノがメイカンジュースの中へ黄色の瓶の酒を入れると、みるみる内にメイカンジュースの色が変わりだした。
ジュースと酒が溶け合った部分と溶け合っていない部分の2色を目で楽しめる。
マオ
「 ──わあっ!!
クリーム色が紫色に変わりだした!
綺麗だね、クラウノさん(////)」
クラッドウォウノ
「 こうするともっと綺麗になるよ。
慌てずにゆっくりと、かき混ぜてごらん 」
クラッドウォウノはマドラーを出すと、マオに手渡した。
マオ
「 クラウノさん、此の棒は? 」
ストローの様に細長い棒を前にして、マオは首を傾げる。
クラッドウォウノ
「 其は “ マドラー ” と言ってね、お酒をかき混ぜる専用の棒だよ 」
マオ
「 へぇ?
専用の棒があるんだね。
混ぜてみるね! 」
マオはワクワクしながら、マドラーをタンブラーの中に入れると、ゆっくりと慎重に混ぜ始めた。
タンブラーの中でマドラーが動くと紫色が広がり始めた。
タンブラーの中で動いている紫色はキラキラしていて綺麗だ。
マオ
「 はぁ……。
ずっと見てても飽きないや。
セロと一緒に見たいなぁ(////)」
ウットリとした表情でタンブラーを見詰めながら、マオは隣に居ないセロフィートを思うのだった。
クラッドウォウノ
「 そう言えば、吟遊詩人様はどうしたんだい?
帰って来たのはマオ君だけだったね。
スイーツ店に残って居られるのかい? 」
マオ
「 ううん。
スイーツ店を出て直ぐに、知らない男の5人組に声を掛けられて囲まれたんだ 」
クラッドウォウノ
「 吟遊詩人様がかい?! 」
マオ
「 …………オレ…です 」
クラッドウォウノ
「 あぁ…マオ君がかい。
其で?
吟遊詩人様は無事なのかい? 」
マオ
「 …………無事だよ。
( オレの心配はしてくれないんだ…。
いや、別に良いんだけど!
オレはセロを守る立場な訳だしな!
心配してもらえないからって、悲しくなんてないんだからな!! )」
クラッドウォウノ
「 そうかい…。
其は良かった… 」
マオ
「 両手が塞がってなかったら、あんなチャラ男達なんて秒で蹴散らせたんだけど…、タルトの入った紙袋を持ってたから、何も出来なくて困ってたんだ 」
216年も生きていたマオが、生まれて初めてカクテルを飲みます。
作者はドクターストップで、お酒が飲めませんが……美味しいのでしょうか??
お酒をジュースで割ったら「 カクテル 」でいいんですよね??




