──*──*──*── 宿泊室
《 宿泊室 》に入ったマオは、秒でカツラを取り、衣服を脱ぎ捨てた。
上下が一体となっている衣服の下には、普段の衣服を着ていた。
マオ
「──たくっ、酷い目に遭った!!
明日も此の格好しないといけないとかマジで鬼畜だよ!!」
セロフィート
「本当は脱いでから着てほしかったんですけど……」
マオ
「女物の服なんか裸の上から着れるかよ!!
馬鹿セロ!!」
セロフィートと『 いいこと 』がしたくて、期待をして衣服を脱いだマオの前にセロフィートが出してくれたのは、明かに少女が着たがる様なレースとリボンのコラボレーションが可愛いヒッラヒラの付いたフェミニン風ワンピースだった。
其を見せられたマオは、速攻で脱いだ衣服を着直したのだ。
服の上からでも構わないからとセロフィートに言われ、半ば強引に可愛いフェミニン風ワンピースを無理矢理着せられたのだった。
何故だかマオに女装をさせたがる男Ver.のフィンフィレイナが居ないものだから安心していたのだが、まるで裏切られた様な気分を味わう羽目になったマオだった。
マオ
「…………なぁ、セロ…。
本当に女装しないと駄目なのか?
…………オレ、ガチマジで嫌なんだけど…」
セロフィート
「ガチマジで女装してください」
マオ
「何でだよ!
面白い好きのセロを楽しませる為かよ?」
むぅ…と両頬を膨らませたマオは、腕組みをして首を傾げる。
だって、『 女装をしないといけない理由 』が分からないんだものん。
其なりの “ 理由 ” なるものがあるのかすら、マオには分からないのだが。
セロフィート
「マオを身を守る為です」
マオ
「はぁぁ??
オレの身を守るぅ??
何からだよ。
何の為に??」
マオは、自分に女装をさせる為の “ 理由 ” があった事に対して、先ず驚いた。
理由なんて無いと思っていたからだ。
セロフィートの意外な言葉にマオは、一寸面食らってしまった。
予想外な事を言われて戸惑い、困惑しているマオに近付いたセロフィートは、そっとマオを抱き寄せるとグズる子供をあやす母親の如し、落ち着いた優しい声色で話を始めた。
セロフィート
「明日、鉱石採掘体験をする鉱山は《 遊男廓 》の敷地内にあります。
《 遊男廓 》は本来、女人禁制となってます。
何故かと言うと、《 遊男廓 》は男性が男性を相手にして愛し合う場所だからです」
マオ
「…………え〜と…、どゆこと??」
セロフィート
「本来ならば、男性と女性が愛し合います。
其を男性同士でします」
マオ
「………………んん゛〜〜〜??
男と女がする事って何??」
セロフィート
「男女の夫婦が夜な夜な行う〈 神聖な儀式 〉です。
此の〈 神聖な儀式 〉を男同士でします」
マオ
「………………〈 神聖な儀式 〉って、夫婦が子供を授けていただく為に、信仰心を高めて行う〈 大陸りく仰こう神しん神しんエルゼシア様さま 〉に捧ささげる為ための尊とうとくて神しん聖せいな祈いのり……の事ことだよな?」
セロフィート
「そうです」
マオ
「……ん〜〜〜??
……其それを男おとこ同どう士しでするのか??
でもさ、男おとこ同どう士しで〈 神しん聖せいな儀ぎ式しき 〉をしたって、子こ供どもは授さずけていただけないだろ?」
セロフィート
「其その通とおりです。
其それでも彼かれ等らは《 遊ゆう男だん廓かく 》で〈 神しん聖せいな儀ぎ式しき 〉をします。
未婚の女性人様の大切な娘さんや人ひと妻づま人様の奥さんを相あい手てにする訳わけにはいきません。
そうなると、子こ供どもを孕はらむ異い性せいではなく、子こ供どもを孕はらまない同どう性せいを相あい手てにするしかないですし」
マオ
「…………そうだよな…。
犯はん罪ざいになるし、連れん行こうされて罰ばせられるもんな…。
死し罪ざいにもなる事ことだってあるしなぁ……」
セロフィート
「異い性せいが相あい手てならば罰ばっせられる事ことでも、同どう性せいが相あい手てならば罰ばっせられずに情じょう状じょう酌しゃく量りょうの余よ地ちがあるのが現げん実じつです」