5.食堂 3 〜 酒が飲めるぞ 2 〜
クルセイル
「──酒が飲めない奴が居ると、場の雰囲気がシラケて駄々下がるんだよ」
マオ
「………………うん…」
セロフィート
「マオ…」
クルセイル
「──けど、マオは大丈夫だ」
マオ
「うん?
何で??」
クルセイル
「マオは駄々下がった雰囲気を盛り上げる特技を持ってるからさ!」
マオ
「特技??
そんなの持ってたかな??
どんなの??」
セロフィート
「クルスさん、ワタシも知りたいです」
クルセイル
「──女装!!」
セロフィート
「ははぁ。
成る程♪」
マオ
「『 成る程♪ 』じゃ、ない!!
特技でもないからっ!!(////)
此、罰ゲームだからっ!!」
セロフィート
「『 罰ゲーム 』なんて酷いです。
マオに似合うと思って用意したのに…」
マオ
「してくれなくていいんだよ!!」
クルセイル
「マオ、其の格好でさ、皆に酌をしてやってくれないかな」
マオ
「はぁぁぁあ?!
何でだよ!?」
クルセイル
「皆が喜ぶからに決まってるだろ!
テンションが上がって、酒の注文が増えるぞ〜〜〜」
マオ
「………………嫌だよ…」
セロフィート
「面白そうです。
マオ、クルスさんの御手伝いをしてはどうです?」
マオ
「はぁ?
何でだよ?
何でオレが……」
セロフィート
「クルスさんには、お薦めの《 装飾店 》を幾つか紹介してもらいますし、鉱石の採掘体験にもベテランさんを頼んでくれます。
良くしてくれる親切なクルスさんへの恩返しです」
マオ
「恩返し──って……」
セロフィート
「マオが手伝えば、クルスさんも助かりますし、皆さんも喜びます。
皆さんと一緒に楽しい時間を過ごせます」
マオ
「…………オレは過ごしたくないんですけど…」
セロフィート
「マオ」
マオ
「…………やらないと駄目なのか??」
クルセイル
「頼むよ、マオ!
勿論、タダとは言わないぜ。
お酌1回500Qにする。
酌代は鉱石の加工代に使えば良いし。
どうだ?
悪い話じゃないだろ?」
マオ
「………………分かったよ…。
お酌するだけだからな!
話すとか、握手するとか、お触りとか、口説くとかは無しだからな!!」
クルセイル
「サンキュー、マオ!
まぁ、〈 海賊 〉の生首を持ち帰ったセロフィートさんの大事な知人って事にすれば、誰も変な事はしないさ。
皆、無事に明日の朝日を浴びたいだろうからな。
きっちりと言い聞かせてやるよ」
マオ
「頼むよ…」
セロフィート
「マオ、ファイト♪」
マオ
「……………………はぁ〜〜〜。
女装させられるは、酒は飲めないは、女装でお酌させられるは……。
最悪な夜だよ…」
セロフィート
「ドンマイ★です」
マオ
「セロにだけは言われなくないっ!!
此んの、諸悪の根元めっ!!」
セロフィート
「其の粋です。
確り鉱石の加工代を稼いでください♪」
マオ
「…………理不尽過ぎる…」
深い溜め息を吐いたマオは、椅子から腰を浮かせて立ち上がると手招きするクルセイルの後に続いて歩いた。
鼻血で汚れた床の上を嫌そうな顔で歩く。
クルセイル
「マオ、酌をする時は『 笑顔 』だからな。
満面な笑顔を振り撒くんだぞ」
マオ
「…………笑えないんですけど……」
クルセイル
「全員を500Q硬貨だと思えば良いんだよ。
500Q硬貨が『 500Qを落としてくれる 』ってな具合にな!
ハハハハハッ!」
マオ
「………………努力はするよ…」
諦めるしかないマオは、覚悟を決めると何度目かの深い溜め息を吐いた。
クルセイルは500Qを入れる箱を用意すると、硬貨を入れる為の口を作る。
まるで大きな貯金箱だ。
クルセイルは箱を持つと、マオの横に立つ。
どうやらマオと一緒に各テーブルを回ってくれる様だ。
クルセイル
「よし、始めるか。
──皆〜〜、注目〜〜〜!!
此から可愛いマーリンちゃんが、テーブルを回って、お酌をしてくれるぞ〜〜!!
マーリンちゃんに酌されたい奴は500Q用意しろ〜〜!
酒が欲しけりゃドンドン注文しろよ!!
酒のないテーブルには回らないかなぁ!」
クルセイルが声を上げて言うと、《 食堂 》は一気に盛り上がった。
ジョッキやタンブラーを持ってる男達は、テーブルの上に財布を出すと、次々に酒を注文し始めた。