セロフィート
「{ 褌なら水の抵抗を受け難くなり、泳ぎ易くなります。
生還率を上げる為の心遣いです }」
マオ
「{ …………そう…なんだ?
セロなりに、ちゃんと考えて身ぐるみを剥いでるんだな?
そう言われると、セロなりの親切心なのかな? }」
セロフィート
「{ 解ってもらえました? }」
マオ
「{ うん…まぁ……。
………………でもさ…オレ以外に優しさを振り撒かれると、ちょっぴり妬いちゃうな…。
ははは…(////) }」
セロフィートの言葉が真実であるか否かは不明だが、マオはセロフィートの言葉を疑いつつも信じるのだった。
海に入り、泳いだ事のないマオには、海での危険な行為についての知識は無く、無知だった。
海を知っており、筏にも乗り、漂流者の真似事をし、海賊にも会い、退治迄した事のあるセロフィートの言葉を信じてしまうのは致し方のない事だろう。
セロフィートが読み聞かせてくれる物語に登場する海賊は、誰の物でもない海を我が物顔で縄張り主張をし、我儘勝手,好き勝手に漁師の妨害をしたり、航海している船を襲ったりする悪党──と言う実に迷惑千万な悪者として書かれているのが殆んどである。
極稀にではあるが、誕生日やら御祝いのプレゼントで貰った本を読んだり、祖父や旅人,旅行者,吟遊詩人の話を聞いた少年が、 “ 海賊王 ” なる者に憧れを抱き、成人する前に海賊の乗組くみ働ばたら員いんきとなり、先せん輩ぱい達たちから様さま々ざまな嫌いやがらせをされつつも堪たえ忍しのびながら健けな気げに頑がん張ばりつつ、様さま々ざまな苦く難なんを乗のり越こえ、とうとう船せん長ちょうに迄まで成なり上あがり、独どく立りつして自じ分ぶんの船ふねを持もち、信しん頼らいを得えて友ともとなった者もの達たちと再さい会かいを果はたし、仲なか間まを増ふやして海かい賊ぞく王おうとなる旅たびに出でる──と言いう如い何かにも冒ぼう険けんに憧あこがれる冒ぼう険けん好ずきの子こ供ども達たちの心こころを擽くすぐる冒ぼう険けん譚たん物もの語がたりの本ほんも幾いくつかあるが、美び談だんにした所ところで海かい賊ぞくである以い上じょう、結けっ局きょくする事ことは同おなじなのである。
そんな悪わる者もののイメージが色いろ濃こく強つよい海かい賊ぞく達たちがセロフィートから酷ひどい目めに遭あわされたとしても、マオは素す直なおに同どう情じょうする気きにはなれなかった。
楽たのしい事ことが好すきなセロフィートの被ひ害がい者しゃに選えらばれてしまった事ことには、ほんの少すこしだけ『 御ご愁しゅう傷しょう様さまです… 』と思おもうぐらいである。
セロフィートの1番ばんの被ひ害がい者しゃなのは誰だれでもないマオ自じ身しんなのだが、セロフィートを愛あいしちゃってるマオには被ひ害がい者しゃである自じ覚かくが全まったくない。
マオ
「{ ──今いまは4よ月つきだし、暖あたかいから褌ふんどし一いっ丁ちょうで海うみに落おとしても大だい丈じょう夫ぶだよな? }」
セロフィート
「{ ふふふ…。
4よ月つき 〜 9く月つきの海かい水すいは泳およぎ易やすい適てき温おんを保たもってます。
熱あつくもなく冷つめた過すぎない海かい水すいの温おん度どで先まず死しぬ事ことはないです }」
大おお嘘うそだった。
安あん全ぜんとは言いえない海うみを褌ふんどし一いっ丁ちょうで泳およいでいれば、鮫サメシャークを餌エサにする巨きょ大だいな肉にく食しょく魚ぎょに食たべられてしまう為ため、海うみに落おちてしまえば30分ぷん程ほどで御お陀だ仏ぶつとなってしまうのが、≪ エルゼシア大たい陸りく ≫周しゅう辺へんの海うみの恐おそろしさだった。
態わざ々わざセロフィートが〈 テフ原質の源 〉に変へん換かんしなくても、海うみに落おとした海かい賊ぞく達たちは、30分ぷん後ごには確かく実じつに海うみの怪かい物ぶつ達たちの餌エサになってしまうのだ。
マオ
「{ そっか。
其それなら海うみに落おとしても安あん心しんだな? }」
セロフィート
「{ はい、安あん心しんです♪ }」
セロフィートの言こと葉ばを聞きいて本ほん当とうに安あん心しんした様よう子すのマオは、再ふたたび料りょう理りを食たべ始はじめた。
セロフィートは真まに受うけてくれたマオチョロ子こちゃんの食たべっぷりの良よさを見みながら、微ほほ笑えむのだった。