5.セロフィー島 1 〜 さよなら、セロフィー島 1 〜
──*──*──*── セロフィー島
──*──*──*── 港
〈 海賊 〉を退治した事を証明する為だけに、10隻以上の《 海賊船 》を海上から消し去ったセロフィートとマオは、朝食の時間に間に合う様に戻って来ていた。
マオとセロフィートは、お粗末な作りの《 港 》にいた。
セロフィートが持っている袋の中には、セロフィートが集めた〈 船長 〉達の頭が入っている。
十数名の頭が入っているのだから、其なりに重い筈なのだが、セロフィートは軽々と持っていた。
セロフィートとマオを見送る為に集まってくれている〈 亜人種 〉達も、まさか袋の中に人間の頭がゴロゴロと入っているとは誰も思ってはいない様だ。
《 港 》には1隻の粗末な船が停泊している。
≪ 港町 ≫の《 港 》でセロフィートが〈 漁師 〉から買い取った── 正確には〈 魔鉱石 〉と交換した ──船である。
〈 亜人種 〉の《 海賊船 》に救助された時、海上に乗り捨てた船でもある。
遭難者を装う為に壊した筈の櫓が直っている。
セロフィートが〈 古代魔法 〉で直したのだろう──とマオは思った。
そんでもって、船を漕ぐのは誰でもなく自分なのだろう──とも思うのだ。
セロフィートが自ら船を漕ぐとは思えないからだ。
何時も力仕事や疲れる事をするのはマオの役となっていた。
もう、お約束になっている事だった。
マオ
「( 行きもオレに漕がせてたもんなぁ…。
セロは見た目に依らず、人使いが荒いんだよな!
いや…、オレを頼ってくれてるのかも知れないけど…??
甘えてくれてる…のかも??
セロにはオレしか居ない筈だし…。
………………オレだけ…だよな??
オレ以外に頼ったり、甘えたりする相手なんて居ないんだよな??
確かめた事…無い……。
セロに聞くの…怖い……。
若しも…オレ以外に居たら……オレ…立ち直れないよ…… )」
マオは船を見詰めながら悶々と悩んでいた。
セロフィートと〈 亜人種 〉達の会話の内容は、全く耳に入っていない。
セロフィート
「マオ…。
漕ぐ気、満々ですね。
流石ワタシだけのマオ♪
頼もしいです(////)」
船をジィ〜〜〜ッと見ていた所為で、マオは強制的に船を漕ぐ事になってしまった。
『 何かがオカシイ?? 』と感じた読者さんが居るかも知れないので、敢えて書くが、マオの記憶はセロフィートに依って既に何度目かの改竄をされている。
ジェリエンツが船に同乗した事、慣れないながらも必死に船を漕いでくれていた事が無かった事になっている。
マオの記憶では、船の手配をする筈だったジェリエンツが、未だ船の手配を出来ておらず、仕方無く此方側が直々に〈 漁師 〉と交渉し、〈 魔鉱石 〉と交換する形で船を買い取った──という流れに改竄されている。
更にはジェリエンツとは《 港 》で別れている為、ジェリエンツが《 海賊船 》の甲板の上で〈 亜人種 〉の男達にされていた彼や此や、≪ セロフィー島 ≫の《 広場 》で〈 亜人種 〉の男達にされていた彼や此やも全て無かった事になっている。
記憶を弄くるとナンチャラのカンチャラでムニャムニャ──と言うのは、全てセロフィートの嘘なのだった。
〈 古代魔法 〉が万能ではないのは事実だが、大半の事柄は可能だ。
『 時間を早送りする 』とか『 時間を巻き戻す 』とか『 時間を止める 』とか『 未来へ行く 』とか『 過去へ戻る 』とか『 過去に起きた事物現象を映像にして見れる 』等々、セロフィートに其の気が有れば出来てしまう。
然し、身体は透けている為、過去と未来の出来事には一切干渉は出来ないし、唯々見ている事しか出来ない。