4.浜辺 6 〜 器人形の秘密 3 〜
マオ
「クッキーと《 小屋 》…だもんな〜〜〜。
でもさ、何でそんなに差があるんだ??」
セロフィート
「人間の限界と〈 天族 〉の限界に違いがあるからです」
マオ
「限界??
何の限界が違うんだ?」
セロフィート
「人間を構成する〈 原質 〉と〈 天使 〉を構成する〈 原質 〉の質が違います」
マオ
「質??」
セロフィート
「容器で例えると分かり易いです。
砂を水で固めて作ったコップと銀を型に流し込んで作ったコップでは、見た目と強度の違いが明らかです。
砂のコップの中に水を注げば、耐えきれず崩れてしまい、コップの役目を果たしませんね。
逆に銀のコップの中へ水を注いでも崩れません。
きちんとコップの役目を果たします。
人間を構成している〈 クォーム 〉は器も小さく、直ぐに限界を迎えてしまいます。
人間が脆いのは〈 クォーム 〉の質が低いからです。
〈 天使 〉を構成する〈 エーテル 〉の器は大きく、直ぐに限界を迎える事はないです。
〈 エーテル 〉の質は〈 クォーム 〉より遥かに高いです。
〈 魔族 〉を構成する〈 タウナール 〉の質は〈 エーテル 〉と同等です」
マオ
「…………じゃあ、何をどうしても人間は〈 天族 〉には敵わない──って事だよな?」
セロフィート
「そうです」
マオ
「…………其なのに人間は不毛な戦いを〈 天族 〉に挑んでた──って事なのか?」
セロフィート
「そうなります。
人間が〈 元素魔法 〉を使える様になった理由は諸説あります。
──実際に起きた事で〈 天族 〉が許せなかったのは『 誘拐した〈 天族 〉の子供を我が子同然に育て、〈 天族 〉の血を引く子孫を多く産ませた 』という事実を隠蔽し、『 迷子になっていた〈 天族 〉の子供を手厚く保護し、我が子同然に育て、親元へ帰した時に〈 天族 〉から甚く感謝され、友好の証しとして〈 魔法力 〉を授かった 』と美談にして弘められた事でしょうか」
マオ
「そんな事があったのか?」
セロフィート
「そう記録されてます。
〈 天族 〉が本気を出せば、人間等秒で滅ぼせます。
其が出来ないのは〈 天使 〉の性でしょう。
結局、〈 天族 〉は≪ 地上界 ≫を離れ、≪ 天上界 ≫へ移った様です」
マオ
「じゃあ、其の時に壊したのかも──だよな。
〈 天族 〉の血を引いた子孫を利用した人間達が≪ 天上界 ≫に来ない様に──ってさ」
セロフィート
「どうでしょう。
会話迄は記録されてませんし、ワタシにも分かりません」
マオ
「そうなんだ?
だけどさ、≪ 天上界 ≫は実在するんだよな!
もしかしたらさ、今でも生き残りの子孫が≪ 天上界 ≫で暮らしてるかも!」
セロフィート
「さぁ、どうでしょう?
《 テンクゥリアの館 》は無人だったでしょう」
マオ
「そうだけど…。
でもさ、綺麗だったよ。
宝石の花や宝石の道なんて初めて見たしさ!
他にも《 屋敷 》があるかも!
セロ、また《 テンクゥリアの館 》に行こうよ。
そんでさ、他の《 浮き島 》も探すんだ!」
セロフィート
「はいはい。
考えておくとしましょう」
マオ
「うん!
絶対だからな!」
セロフィート
「──マオ、子供達が来ました」
マオ
「子供達??」
セロフィート
「〈 魔法陣 〉に寝かせた子供達です」
マオ
「さっきの!
元気になったんだな。
何の用だろうな?」
セロフィート
「折角ですし、少し遊んであげましょう」
マオ
「セロが?
何をするんだ?」
セロフィート
「そうですね…。
簡単な手品はどうです?」
マオ
「手品?
セロの手品を見るの久し振りだよな」
セロフィート
「マオはワタシの助手をしてください」
マオ
「助手?
また助手させるのかよ!」
セロフィート
「何を言います。
君、手品は出来ないでしょう」
マオ
「『 君 』って言うなよ!
セロとオレは夫婦なんだからさ(////)
他人行事な呼び方するなよ!」
セロフィート
「君、そういうの細かいですね」
マオ
「また『 君 』て言ったな!
セロっ!!」
セロフィート
「はいはい。
なるべく使わない様にするとします」
マオ
「『 なるべく 』って……。
使わない努力をしてほしいんだけど!」
マオはセロフィートに『 君 』と呼ばれる事が嫌だった。
〈 契約 〉を交わしてから約200年は経っているし、付き合いも長いのだから好い加減に他人行儀な『 君 』呼びを止めてほしかった。
こんなに近くに居るのに距離を感じてしまう。
距離感だけなら未だしも、寂しさや虚しさえも感じるてしまうのだ。