4.浜辺 4 〜 器人形の秘密 1 〜
〈 器人形 〉達と共に〈 亜人種 〉達への差し入れを持って行ったマオは、空になった皿を両手で持ちながら浜辺へ戻って来た。
〈 器人形 〉達は、料理が盛り付けられている皿を持ち、未だ差し入れを配ってくれている。
一足先に戻って来たマオは、紅茶を飲みながら優雅に寛いでいるセロフィートを見て、両肩を落とした。
マオ
「セぇロぉ〜〜〜!!
何してんだよ!
寛ぎ過ぎだろ!
何にもしないでぇ〜〜〜〜」
セロフィート
「マオ…。
『 何もしてない 』なんて…、1番の功労者のワタシに酷いです」
マオ
「…………自分で言うな!」
セロフィート
「事実ですし」
マオ
「全部〈 器人形 〉に任せっきりじゃないか…」
セロフィート
「いけません?
〈 器人形 〉を動かす為にワタシは常に〈 テフ 〉を消費する状態です。
分かります?」
マオ
「はぁ?
…………〈 器人形 〉を動かす為に対価を支払ってる──って事か?」
セロフィート
「そうです」
マオ
「10025体の〈 器人形 〉を動かす為に、体内に自動蓄積される〈 テフ 〉を消費し続けてる──って事だよな?」
セロフィート
「そうです」
マオ
「…………〈 器人形 〉の数を減らせば良いだろ!」
セロフィート
「必要な数です。
此以上は減らせません」
マオ
「………………〈 器人形 〉を使わないで済む方法はないのかよ?」
セロフィート
「ないです。
〈 器人形 〉は便利ですし。
遥か古の時代から〈 器人形 〉は重宝されてました。
使わなければ損です。
カスタマイズの自由度も高いですし。
マオと瓜二つの〈 器人形 〉も作れます」
マオ
「──は?
マジなの、其って?!」
セロフィート
「勿論です。
衣服を選ぶ時に自分似の〈 器人形 〉をマネキンの代わりに使えます」
マオ
「…………マネキン??」
セロフィート
「自分で試し着をして鏡で確認しなくても、〈 器人形 〉に着せれば、色んな角度から自身の目で隅々迄じっくりと確認出来ます。
便利でしょう?」
マオ
「便利って言うか……」
セロフィート
「掃除,洗濯,家事,裁縫,家具の移動に部屋の模様替え,庭の手入れ,買い物,家庭教師,介護や育児のサポート,仕事のサポート等々、幅広く役立ちます。
有能な〈 器人形 〉を利用すれば人件費の節約も出来ます」
マオ
「〈 器人形 〉を使ってた時代の人達は駄目人間まっしぐらだった訳だ?」
セロフィート
「〈 器人形 〉も万能ではないですし、デメリットはあります。
〈 器人形 〉を動かすには対価を支払い続ける必要がありました。
其に半径10m以内でしか動かせませんでしたし。
楽をするにも其なりの苦労はありました。
画期的で便利だからと言って何でも彼でもで普及した訳ではないです」
マオ
「でもさ、セロには〈 器人形 〉のデメリットなんて関係無いんだろ?」
セロフィート
「勿論です。
対価は〈 テフ 〉ですし。
≪ 地球 ≫の裏側に居る〈 器人形 〉も余裕で動かせます。
〈 セロッタ・カンパニー 〉と〈 セロッタ・ベーカリー 〉の従業員も全て〈 器人形 〉を使ってますし。
人件費は0です♪」
マオ
「使いまくってるじゃないか!!
10025体以上動いてる訳かよ?」
セロフィート
「はい♪
≪ エルゼシア大陸 ≫で使ってる〈 器人形 〉は今もフル活動してます」
マオ
「…………『 だから、疲れて動けません 』って言わないよな?」
セロフィート
「そんな事言いません。
ちゃんと動けますし」
マオ
「ふぅん…。
其なら別に良いんだけど…。
其にしたって使い過ぎじゃないのか?
幾ら便利だからって……」
セロフィート
「人手が無いでしょう。
朝から晩迄休憩を取る必要の無い〈 器人形 〉を使った方が効率が良いです」
マオ
「そうだろうけど…」
ブラック企業も真っ青になりそうな程に〈 器人形 〉を鬼畜利用する無慈悲なセロフィートに、マオは少しだけ怖さを感じた。
マオ
「〈 器人形 〉に心は無いのか?」
セロフィート
「はぁ?
ある訳ないでしょう。
人型をした空っぽの器に動力源となるエネルギーを注ぐ事で稼働する人形ですよ。
心を持つ高度な〈 器人形 〉を作る程の技術はなかったです」
マオ
「そうなんだ?
だから、コキ使っても構わないのか?」
セロフィート
「どんなにコキ使っても壊れない様に出来てますし」
まぁ、別に秘密って程の事でもないのですが……。
実は《 創造主の館 》には、マオに瓜二つの〈 器人形 〉が沢山あります。
女装をしたがらないマオの代わりに可愛い服を着せています。
髪は伸ばしているので、女の子よりも女の子らしく可愛い仕上げになっています。
マオに内緒にしているセロフィートの趣味の1つです。