菊の花を贈りましょう
平成最後に上げる小説です!数十秒でサッと読めるような短さなので気軽に読んでください!
今日はアイツの命日だ。俺は二人分のグラスと酒、そしてあいつが好きだった菊の花を持って行ってやった。菊の花言葉は『あなたはとても素晴らしい友達』と言うらしい。以前アイツに教えて貰った。
「よう!来てやったぞ」
当然返事はない。
「…んだよ、せっかく来てやったんだから少しは反応しやがれってんだよ…」
そんな事をボヤきながら俺は花を取り替え、墓石に水をかけ線香をあげた。そして持ってきたグラスにアイツの好きだった酒をいっぱいに注いだ。
「なー、聞いてくれよ。かみさんがさぁ、煙草と酒をやめろって言うんだ。でもよ?煙草と酒がなけりゃ俺は何を楽しみに1日を過ごせばいい?」
そう言ってグラスに入った酒をぐいっと飲んだ。そして懐から煙草を1本。火をつけ少し吸ったら線香と同じところへ入れた。
「そういや、お前もこの煙草好きだったよな…学生の頃からお前は吸ってて俺が真似して吸い始めたんだ。おかげで肺は真っ黒さ」
腰にかけてあったタオルを取り出し水に付けて墓石を拭いてやった。丁寧に、旧友のことを思い出しながら
「なあ、俺より先には死なねぇって言ったよな!?なのに…なのに何で死んでんだよ。いつも笑って飛んできた銃弾なんて避けられるって言ってたくせ死因が頭を撃ち抜かれたって…」
つい手に力が入っていた。
「大体お前はいつもそうだったんだよ…自信満々に言う割にはロクなこと出来ねぇくせに」
そう言っているうちに拭き終わった。もう一杯酒を飲み煙草を吸った。
「ほんじゃ、また来るからよ。それまで俺のことを忘れるんじゃねぇぞ馬鹿野郎」
“忘れるわけねぇだろ。馬鹿野郎”
そんなふうに言うあいつの声が聞こえたような気がした。