6-3
職員室
生徒達は午前中で帰り、先生達は職員室に戻り事務作業に精を出す。
燈は習字セットを取り出すと、『心が踊り出す』と書いた。
あとで、教室に掲示するらしく、乾燥中である。
「網倉くん明日の予定は?もし良かったら、スキー場行こうよ。」
左斜め前方に座っていた男性教師が慌てたように椅子から立ち上がったが気にしないでおこう。
「あっ、間違えた。明日と明後日ね。」
お泊りのご様子。流石の陸も動揺する。
立ち上がった教師は、椅子を倒しながら後退りして、尻餅をついた。
翌朝
スキー場に向かう車内で、陸は燈を見る。
「それで、昨日欠席していた子達が、先生のウィンタースポーツ部の部員なんですね?」
運転する陸の問いに、燈は前日にした話をもう一度繰り返す。
「そうそう。
『小美野 澪』、
『黄瀬 輝石』、
『南 奈美』、
『池田 圭』、
『ちょうちょー』の5人がウィンタースポーツ部で、昨日の欠席者。前3人がうちのクラスね。」
スキー場まで、車で一時間もあれば到着する。
中学生であれば、電車とバスを使えば親の手を借りずとも自分達だけで簡単に行ける。
「奈美が部活の部長。多分今回の言い出しっぺね。黄瀬くんは、奈美の子分みたいな感じ。子分になってしまう部分以外は、優秀で良い子なんだけどね。
澪は、生徒会役員も務める優等生。唯一の欠点はスノーボードの事になると、ネジが外れる事ね。
圭は、スポーツ万能で女の子からモテてるみたい。やんちゃなのか、やんちゃぶっているのか分からないけど、今回の件、すぐに参加するって言ったでしょうね。
ちょうちょーは真面目よ。周囲にも気を配れるし、物事を冷静に判断する子だから、こんな事には参加しそうにないんだけど。」
ズル休みをした件に関して、栗田先生はきっと『普通』には怒らないだろう。
陸の頭には確信に近いそんな予感がしていた。