小鳥と茜色の空
空を飛べない小鳥がいた。
巣立ちの日、兄弟たちは悠々と大空に飛び立っていった。
けれど、そんな中、飛ぶことができず地に落ちた小鳥がいた。
飛べない小鳥は何度も羽を動かすが、飛べそうな気配は全くない。
そんな小鳥を見捨て、両親も兄弟たちもどこかに行ってしまった。
地面を歩きながら餌を探し、来る日も来る日も小鳥は飛ぶ練習をする。
けれど1回だって飛べたことはない。
飛べない小鳥にとって、空は遠い存在だった。
それでも小鳥は飛びたくて、今日も高い場所から飛び降り続けた。
その度、足や羽に怪我が増えていく。
満身創痍になっても、小鳥はやめなかった。
体の手入れをして何度も何度も飛び降りた。
◇
ある日、小鳥は子猫に襲われてしまう。
命からがら逃げ切った小鳥だったが、すぐによろめき倒れてしまう。
降りだした冷たい雨は、小鳥の体力をじわじわと奪っていく。
小鳥は茂みの中で雨宿りをしながら、体の手入れをしようとした。
けれど、手入れを始めることはなかった。
羽は抜け落ち、深い噛み傷からは血が滲んでいる。
足は自身を支えるのがやっとで、視界も朧気だった。
最期を悟った小鳥は、一度でいいから空を飛びたいと願った。
雨がやむと水溜まりには、夕暮れが映り込んでいた。
水溜まりに落ちた夕空が空でないことを小鳥はわかっていた。
けれども小鳥はその茜色に飛び込み、幸せそうに羽ばたいて。
そして、動かなくなった。
Twitterで書いた140文字小説を手直ししたものです。
お題:『小鳥』『雨宿り』『水たまり』