秋葉原、東京大学、そして秋葉原
先日、秋葉原と東京大学に行った時のことを書く。
11時半頃に角煮カツ丼を食べる為に秋葉原の『炉端バル さま田』に行った。この角煮カツ丼は平日のランチでしか食べられないものだ。昔テレビで紹介されているのを見て以来、いつか行ってみたいと思っていた。僕はダブル角煮カツ丼を頼んだが、その際に店員さんが、
「大丈夫ですか、700gありますよ」
と念を押してきた。僕はなぜか気が大きくなっており、せっかく来たんだし、どうせなら角煮カツを二つガッツリ頬張ってみたいと考えてしまった。おそらく店員さんはダブルを頼んで儚く散っていった客を今まで散々見てきたのだろう。だからこその念押しだったに違いない。それでも僕は頼んだ。店員さんの意図をなんとく察しながら。それにもう来ることはないかもしれない。それならと、どうせならと、思い出にもなるし豪勢に行こうじゃないかと、それに最近は節制もしているしちょっとくらいたくさん食べてもいいじゃないか、なに、700gぐらい余裕だと、そんなありえないことを考えながら、呑気に果敢に構えて頼んだのであった。結局全部食べることは叶わなかったのだが、後悔はない。角煮を思う存分頬張ることは叶ったのだし、それに角煮カツ一本だけだと少し物足りなかった。8割がたは食べることができたのだし御の字ではないか。
角煮カツ丼は非常に美味だった。角煮の旨味成分たっぷりの油を味わえたのは幸甚の至りだし、カツの上に乗っていたスクランブルエッグのようなものも美味しかった。この形状の卵料理の名前を知らないのは残念だが、見た目はオムレツで、割ると中からとろっとしたスクランブルエッグが溢れ出てくるものだ。最初はテンポよく食べれていて、もしかしたらこれはイケるのではと思った。一本目のカツはぺろりと平らげることができ、いよいよ調子づいた。そして二本目のカツを半分くらいまで食らったところで変化が起きた。急に吐き気がこみ上げてきたのだ。吐き気と言ってもすぐさま嘔吐に繋がるようなものではなく、鈍重で力強く、このまま食べ続ければ確実に吐くという未来を予兆させるものだった。これ以上はいけないと身の危険を感じた僕は少しでも残さないように努めたが、3口ほど食べたところで呼んで字の如く匙を投げたのだった。僕は敗北感に打ちひしがれつつも確かな手応えを感じながら電気街の方へ歩いていった。
電気街に着くと相変わらずそこは前来た時と大して変わらない秋葉原が広がっていた。昔の秋葉原はもっとアングラ感があって凄かったらしいが、今となってはそれを直接知ることはできない。それに関しては残念でならない。
まず僕はいつものようにラジオ会館に入った。しかし特にめぼしいものはなく、一通り回って外に出た。次にラジ館の近くにある駿河屋に足を運んだ。駿河屋の外にジャンクセールをしているスペースがあり、僕はそこで何度も掘り出し物を発掘している。今回ももしやとおもったが、もしやだった。前からずっと欲しかった『ファイアボール』一作目に登場する白い女の子型ロボット、ドロッセル嬢の中古フィグマが格安で売られていた。箱はない。それ故に格安なのだろう。即決で買った。ちなみにぼくは中古だろうと致命的な欠陥がない限り全然問題は感じない。そのまま僕は、名前は覚えてないが別の店で『EXQシリーズ』の水着レムのフィギュアを買い、そしてブックオフで島本和彦氏の漫画『逆境ナイン』と伊藤潤二氏の漫画『双一の勝手な呪い』を買った後、その辺のバス停でバスに乗って東京大学まで行った。
東大に到着した頃、時計は既に16時を過ぎようとしていた。ほう、ここが東大かねと威風堂々と赤門をくぐり抜け、不遜に安田講堂を見上げて満足した僕は、構内を適当にぐるりと一周し、三四郎池のほとりで「ストレイシープ」と独りごちて東大を後にした。
東大を出た僕は『燕湯』という銭湯に向かった。『燕湯』は入り口が破風造りになっていて、京都の『芋松温泉』が思い出された。中はいかにも普通の銭湯といった装いだったが、お湯は大変熱く、番台のおばさんの愛想もよく、湯上がりに飲んだのむヨーグルトが大変美味しかったので、塩素の臭いが強めだったことに目を瞑れば満足度は大変高かった。
『燕湯』から出ると外はすっかり暗くなっていた。時刻は7時半ぐらいだったと思う。僕は何故かまた秋葉原まで、誘蛾灯に惹かれる虫の如く歩いていった。
秋葉原で僕は『刀削麺荘』という店で麻辣刀削麺を食べた。中国の製麺技術が使われているようだが、意外にも注文してすぐにラーメンが来たのでその技巧を目の当たりにすることは叶わなかった。昔テレビで見たのを思い出すに、確か練った小麦粉の固まりを刃物か何かでシャッシャッと削って鍋に直接飛ばして入れていたような気がする。麻辣刀削麺は唐辛子で真っ赤なスープにほうとう鍋の麺のように太く、そして意外にも長めの麺が入っており、上にパクチーが添えられていた。味は中華ベースといった感じで、おそらく鶏ガラや八角が使われているのだろう。コクがあり、唐辛子による辛さの中にほのかに胡麻の香りがした。パクチーの強烈な香り付けもいいアクセントになっている。他ではなかなか体験できない味で、この始めての刀削麺体験に僕は大変満足した。
その後ヨドバシカメラで仮面ライダーの食玩を買った。『SHODOシリーズ』というもので、小さいながらもちゃんとアクションポーズが取れる可動フィギュアだ。今回は僕の大好きな仮面ライダークウガのフィギュアが入っていたので迷いはなかった。最初に見た平成ライダーがクウガで、僕はよくクウガを見るために日曜の朝に頑張って起ていた。ヨドバシカメラを後にした僕はホクホク顔で京都へ帰って行ったのだった。