突然の交通事故
「翔太、デートしょ!」
起きたばかりの翔太に、唐突なお願いをするあやめ。この時、翔太は思った。ここに居られる女性は、全て自分思考な方だと…。
「ときに、何でデート? 子供見つけないといけないのに。それに、後二日しかないんだよ」
的確に返す翔太。
「分かってる! でも、どうせ消えるなら、少しぐらい…一日ぐらいは楽しみたいの」
分からなくも無いが、時間は本当にない。翔太は、しばらく考え込んで言った。
「じゃーこうしよう。流石に、全く探さないのは時間が勿体ないから、日向が居た団地の近くに色々な店とかがあるから、軽く探しながらでいいなら」
「オッケー! 早くしたくしなよ。私は、もう準備満タンだよ」
朝早くから、早起きのあやめだった。
「さすが、お歳の方は寝起きが早い………あっ」
今の言葉にあやめは素早く、翔太にパンチを与えた。
「早くしてね!先に、下に言ってるから」
「へーい。たく、痛てーなー」
そう言うと、翔太は出かける準備をした。戸締りを確認し、部屋を出た。駐車場に降りると、あやめが早く来いと言わんばかりの顔をしている。
「どうする? 団地の近くなら、映画館とかプラネタリウムとかあるけど………」
「映画館! 久しぶりに行ってみたい」
「了解」
翔太は、軽く返事をすると、自転車を走らせた。映画館に着くやいなや、あやめは食べ物に目を向けた。
「ねぇ、翔太。ポップコーンと飲み物かって」
「はいはい。何味がいい?」
翔太は、あやめの事だから、必ず買ってと言うだろうと思っていた。、
「えっと、塩とキャラメル。飲み物は…ジンジャーエール!」
「ポップコーン二つも買うの?」
「だって、一つだけだと飽きちゃうから。それに、半分づつしたら、翔太も二種類たべれるし」
「どうせ、全部たべるでしょ。じゃ、何を見るか決めといて」
「はーい」
翔太は、あやめが映画を選んでいる間に、会計を済ませた。店員に、なぜ一人なのに、それぞれ二つずつ買っているのだろうと、思われている気がした。
「翔太! 決まったよ。これ」
あやめが、選んだのは、自分も怖がりのくせに、ホラー映画だった。しかも、日本のホラー映画でで一番怖いと、言われている作品だった。
「本当にこれでいいの? 怖い奴だよ………」
「大丈夫だよ、だって私本職だから」
自慢げに、見栄を張るあやめ。翔太は、仕方なしに、見たくも無いホラー映画を見ることになった。思っていたより、人が少なかったので、一番良い席の真ん中に座った。あやめは、座ると同時に、ポップコーンを食べ始めた。
「あやめ、あまり食べ過ぎるなよ。映画中に食べるのが良いんだから」
「分かってる」
口を、もごもごさせながら返事をするあやめ、。
「ちょっと、トイレ行ってくるから」
翔太は、映画が始める前に、トイレに急いだ。トイレを済ませて、座席に戻ると、あやめが寝ている。しかも、ポップコーンを二つとも、クリアしている。唯一残っていたのは、翔太が選んだお茶ぐらいだった。
「こいつ、俺の分まで食べたな……今から買いに行くには、時間がないし、我慢するしかないか」
そして、とうとう恐怖のホラー映画が始まった。あやめは、爆睡していて、全くおきる様子が無い。自分で選んでおいて、それは無いと思った翔太。
「うあっ…うぉっ…やっ」
なるべく、声を出さないように頑張ってはいるが、ついついでてしまう。というか、怖すぎて目が開けられていない。それから、地獄のような時間が、二時間にも渡って続いた。
「ふぅ~、やっと終わった。とうとう最後まで起きなかったな、あやめのやつ。あやめ! 起きて、もう映画終わったよ」
翔太は、あやめを起こす。早くしないと、周りからすれば、翔太一人なのだから、変な人だと思われてしまう。やっとのことで、あやめを起こした翔太。あやめも、寝起きでふらふらしながら、映画館を出た。
「ふぁー、よく寝た」
気持ちよさそうに、あくびをかく。
「ふぁーじゃないよ。映画館着たのに、寝てちゃ意味無いじゃん。しかも、めっちゃ怖かったし」
「だって、ポップコーン食べたら、眠くなったんだもん。それより、次はプラネタリウム行こう」
翔太の言葉など、気にも留めずに自転車のところに行くあやめ。翔太も、あやめを追うように行った。わざわざ、お金を払ってまで、見たいとは思わなかったが、仕方なしに行く事にした。星に関しては、かなり詳しいとまではいかないけど、好きなほうだと思う翔太。さっき、映画館で寝たあやめは、かなり元気が有り余っている。翔太は、星を見るときぐらいは静かにしろと言って、星が映し出される天井を見た。
「すごーい。思ってたより、広いねこの建物の中。あっ、夏の大三角形だ! どんな名前だった? え~と、確か、べ・べ・べネブ? あとベガと、アル・アル・アル何チャラだった気がする」
ベガ以外間違っているあやめ。翔太は、呆れながら一つずつ教えた。
「ベガ以外まちがってるよ。まず、大三角形じゃなくて、大三角だよ。そして、一番上がこと座のベガ、左下がはくちょう座のデネブ、そして、右下がわし座のアルタイル。分かった?」
清清しい顔で説明する翔太。いつもなら、頬を膨らませながら、知ってるもんなどというはずが、今日に限って、素直なあやめ。しかも、目をきらきらさせながら、星を見ていた。そこで、翔太も何も触れずに、あやめに色々な正座を教えてあげた。一時間コースを選んでいたが、あっという間に、時間が過ぎていた。
「楽しかった! 翔太、星好きなんだね」
「べっ別に。何となく、知ってただけだよ………」
久しぶりに、あやめに褒められた翔太。なぜか、いつも以上に嬉しかった。
「そろそろ、帰ろうかあやめ? 帰って、晩ご飯を作らないと」
「そうだね、お腹空いたしかえろう。今日の晩ご飯は何かな~」
あやめは、先ほどポップコーンを二つも食べたのに、もうお腹が空いたようだ。さすが、鉄の胃袋だなと、ふと翔太は笑った。そして、二人が自転車に行こうとしたとき、一本の電話が架かって来た。
「はい、もしもし………えっ愛美が」
翔太の笑顔が、急に暗くなった。
「どうしたの翔太? 愛美さん何かあった」
「はい、はい、分かりました。はい、今すぐに行きます」
翔太は、電話の電源を着って、直ぐに自転車に乗った。
「あやめ、急ぐよ! 早く乗って」
「どうしたのよ急に?」
「愛美が、事故にあったって、病院から連絡があった。だから、早く乗って!」
「分かった」
あやめを乗せると、自宅に戻らずにそのまま、電話先から言われた隣町の病院に向った。
「はぁはぁはぁ・・・。」
鉛色の空から深々と降り続けるなか、一人もくもくと息切れをしながらは走る姿が見える。
翔太は急いで愛美の入院している病院へと向っている。
「ちょっと翔太、走っていくきなの? せめてタクシーで行けばいいじゃない」
「はぁはぁはぁ・・・。」
あやめの言う事も聞かずに翔太は黙ったまま走り続けた。病院に着くと、受付に急いで受付の看護婦さんに話を聞いた。
「あの、愛美は大丈夫なんですか?どんな状態なんですか」
「お客様、少々お静かにお願いします。愛美さんでしたら、今手術中ですのです」
看護婦は翔太を落ち着かせた。
「どこの手術室ですか?」
「B棟3階です。急いでいってあげてください。」
翔太は、あやめがいることも忘れ、手術室へと急いだ。会話もない中、エレベーターに乗り三階を目指していると、あやめが翔太に聞きづらそうな表情で言った。
「ねぇ、ごめんね・・・・・・。私のせいで、私が居なかったらこんな事にはならなかったのに・・・・・・」
「あやめ・・・・・・・・・」
と、虫の声のように小さい声で言った。
「お前のせいじゃないよ。その事は、俺自身で決めた事だからあやめには関係ない。ただ許せないのは、事故にあったときに愛美のそばに居れなかった事だよ。」
「それこそ、翔太のせいじゃないよ!」
「・・・・・・・・・」
二人の沈黙がまた続いた。三階に着くと手術室の前の愛美のお父さんが座っていた。お父さんは、翔太の顔を見るなり驚いた様子でいた。
「どうしましたお父さん?」
「いっいや何でもないよ。気のせいだったのかもしれないな」
と、愛美のお父さんである雅彦さんは小さい声で言った。
「それより大丈夫なんですか、あいつ今どんな状態なんですか。すいません、僕が一緒に行っていればこんなことには・・・・・・」
「そんなことはないよ、行っても行かなくても事故にあっていたんだから。むしろ二人して事故にあわなくてよかったよ」
お父さんはそう言うと、黙り込んで心配そうに座って手を握り締めて少し震えていた。翔太も、それ以上は何も聞けなかった。するとあやめは、おとうさんの震えている手を優しく握ってあげた。どの位時間がたっただろうか、手術室の明かりが消え医者が出てきた。三人は、医者のところに行き、愛美の状態を聞いた。
「先生、あの子は大丈夫なんですか?」
と焦りながら行った。
「それが・・・・・・」
医者は、診断室であやめの状態を話すといって診断室へと向った。三人も、先生の後についていき部屋へ入っていった。
「それで、あの子の容態は」
「あやめさんの容態は、今のままだと命にかかわります」
「そんな、あやめが・・・・・・・・・」
翔太はくらい表情で下を向き、お父さんは薄っすらと泣いた。それを気にかけ、先生は二人にある可能性を言い出した。
「いま、生死の境をさまよっているので、あやめさんが生きたいという気持ちが強ければ目を覚ます可能性があります。今は、それを願うことしか出来ませんが・・・・・・」
「そうですか」
「では、私はこれで失礼します」
そういうと医者は診察室を出て行った。心むなしく響く扉が閉まる音、翔太の目には光がともっていなかった。
「翔太君、私は今日のところは家に帰るとするよ。君はどうするかね」
「僕は、病院に残ります」
「そうか。じゃーあの子のことは頼んだよ」
「はい」
お父さんは家に帰って、翔太はあやめの病室に戻った。病室に戻ると、気持ちよさそうに寝ているあやめを見て病人のくせに気持ちよさそうに寝やがってと内心思った。ベットの横にいすを持ってきてあやめの手を握り締めた。しばらくして、あやめがあ居ないことに気ずいた。
「あれ、あいつ何処行ったんだ? あやめ・・・・・・」
翔太があやめを呼ぶも返事がない。すると、後ろのほうから悲鳴が聞こえたきがした。気になって後ろを見ると、あやめが何かを持ってこちらに向っている。翔太は、急いで窓を開けようとするが鍵が開かない。
「えっちょ、開かないじゃん。ちっちょ待ってうわぁーーー」
「ドス」
荷物が窓ガラスに引かかった。どうやら、あやめは幽霊だから通れたけれど荷物はどうやら無理だったらしい。翔汰は、少し笑って言った。
「あやめ何してんの、それにそれ何」
「なにって、あやめさんが着そうな服と日用品いくつかもって来たのよ! ちょっと、何で通らないのよ。このこのこの」
荷物がなかなか通らない。翔太はあきれた様子で窓を荷物が通れる分だけ開けて荷物を掴み中へ入れた。
「簡単なことだろ、まぁでもありがとう。明日取りに行くつもりだったけどよかった」
「べっ別にあんたの為じゃないからね。愛美さんの為だから勘違いしないでね・・・・・・」
「はいはい。そうだ、あやめはどうする? 俺はこのまま残るけどあやめも残るそれとも家に帰っとくどうするの」
「私は帰っとく、こんな時に私が居たら邪魔だからね・・・・・・」
「そんなことは」
「分かってる。じゃ、家で待ってるから明日は一様家に帰ってくることわかった」
「うん、わかった。ごめんね、こんな事になって結局見つけてやれなかった」
すると、あやめが翔太の頭部にチョップを決めた。
「いて、なにすんだよ!」
「それは言いっこなし。子供捜すより今は愛美さんの所に居てあげて、じゃ」
翔太は嬉しそうにあやめを見送るといすに座ってまた手を握り締めた。しばらくすると眠くなり、いつの間にか朝になっていた。日の光を浴びた翔太は目を覚まし大きなあくびをした。
「そっか、いつの間にか眠っていたんだ」
「プルプルプル」
8時過ぎに、翔太の携帯がなった。どうやらお父さんらしい。目をこすりながら電話に出た。
「もしもし、お早うございます。どうしたんですか? こんな時間に」
「翔太くんすまないけど、今日うちに来てくれないか?」
「わかりました。何時ごろ来ればいいですか?」
「10時ぐらいに来てくれ、じゃまた後で」
「なんなんだろう用事って、まぁいいか一回家に帰らないとあいつに怒られるからな。行ってくるね愛美」
翔太は、自転車に乗り家へと戻った。昨日急いでいたので食器がおきっぱなしだから早く言って洗わないといけないと思いながら。家に着くと、あやめの姿がない。台所に向うと、おきっぱなしの食器が洗ってあった。
「あやめ、洗ってくれたんだ。それに掃除もしてあるし、俺は何も出来なかったのに・・・・・・」
「うーん」
「あっ、居たんだあやめ! ありがとないろいろ」
あやめは目を擦ると、翔太が帰ってきたことに気ずいた。
「お帰り、早かったんだね。どうなの、愛美さん」
「うん、まだ安心できないけど、愛美の事だから大丈夫だって!」
「そうだね」
「そうだ、愛美のお父さんが今日家に来てくれって言ってたっけ。今何時だ」
「8時32分だよ、急がないとね。家って遠いの?」
「そうだな、ここから電車で1時間ぐらいかな。さっそく行こうか」
「うん」
翔太は服を着替えて軽い荷物を持った。あやめは、すでに着替えていた。急いで鍵を閉めて自転車に乗った。駅に着くなり切符と駅弁かって電車へ乗った。あやめは、景色も見ないで駅弁を開け始めていた。
「早いなお前! 少しは景色見ろよまったく」
「わー美味しそう。翔太も見てみなよすごく美味しそうだよ」
「聞いてないし。そういえば駅弁なんて久しぶりだな」
開けてみると、思いのほか美味しそうだった。あやめが景色を見ずに食べる中、翔太は景色を眺めながら頬張った。
「美味しかったね翔汰。今の駅弁ってこんなに豪華なんだね」
「こんなもんだよ。少し高いけどその分美味しいし。」
そういって二人の会話は途切れた。どれほどのときが流れただろうか、いつの間にかお父さんの住んでいる町に着いた。駅に着くなりあやめは言った。
「なんか、思ったより田舎なんだね翔汰」
「うん。義父さんは、定年退職してからはゆっくり田舎で過ごしたいって言ってたんだ」
「へーー。でっ、お父さんの家は何処のなの? 早速行こうよ」
翔汰は、案内をしながら義父さんの家に向って行く。久しぶりに来るので翔田は、おどおどしている。家の前に着くと、そんな事は気に知れず、翔汰が押す前にアヤメがインターホンを押した。
「ちょっ、心の準備が・・・・・・」
焦る翔太。
「ピンポーンピンポーン」
気にせず押すあやめ。
「はい、あっ翔太くんよく来てくれたね。」
「こっこんにちは。あの、急ぎの用ってなんですか?」
「あー言っていなかったね。まぁー百聞は一見にしかずというから、まずみてくれ」
お義父さんの後を着いていくと、一つの部屋に案内された。部屋を見るなり、大量の本が山になっている。今時の雑誌などは無く、どれも古い本ばかりあった。どこぞなく、懐かしい府陰気の部屋だ。
「いやー、この前ね本を取ろうとしたら、本棚ごと倒れちゃって。私も年を取ってしまったから、なかなか元に直すのが厳しくてね。ここの部屋の片付けを手伝ってもらえないかね?」
なるべく明るく話しかけているが、やはりあやめの事故の事で一杯のように見えた。
「ええ。そんなことなら、手伝いますよ!」
翔太も、なるべく明るく話すようにした。
「でも、今日じゃなくても良かったんじゃって、思うだろ……?」
そこに、不意を着くかのように質問をする父。
「いっいやはい」
少し戸惑って答える。
「実は、本棚の向こう側に、昔のアルバムがあってね。それを、久しぶりに見たくなったんでね。すまないね、こんなことで呼び出して」
「アルバム……、分かりました。ここは、僕がやっておきますんでお父さんはテレビでも見ていて下さい。多分、一二時間くらいで終わると思うんで……」
「では、そうしようかな。任せたよ翔太君」
そう言うと、お父さんはリビングの方へ行った。部屋を見る限り、そこまで汚れておらず掃除は行き届いている。物置なのだろう、奥の方にダンボールの箱がいくつか置いてあるのが見えた。
「よし、かたずけするか! あやめも手伝えよ」
さぼろうとしているあやめに、指示する翔太。
「はーい。で、何するの?」
あやめは、部屋を物色していて何も聞いていなかった。
「じゃまず、本棚の反対側を持って立たせよう」
「へーい」
そう言うと、本棚を二人係で元に戻した。本は、適当に本棚へと並べた。
「こんなもんだろう! しかし、アルバムと言っても、どのダンボールに入ってるか分かんないな。お父さんに聞いてこよう」
「ちょっと待ってよ置いてかないで……」
あやめが、翔太の服を強く引っ張った。その勢いで、翔太は転んでしまった。転んだ衝撃でダンボールの上の方から一冊の本が落ちてきた。
「大丈夫かい翔太君?」
お父さんが心配そうに翔汰に呼びかける。
「大丈夫です! 本が少し落ちただけですから」
「気おつけてやるんだよ」
「はーい、いてて。それにしても急に引っ張るなよあやめ」
「ごめんごめん、だって急に行くんから、つい……それよりなんか落ちてきたね」
話をそらそうとするあやめ。
「たく……って、これアルバムだ。やった、見つかった。ちょっと、拝見拝見!」
「いいな、私も見せて!」
二人は、こそこそとアルバムを開いた。最初は、何気も無くお父さんの写真や少しあどけなさの残る愛美の写真ばかり。懐かしく思いながら、ページを捲る。ただ、愛美の母親の写真が一枚も見当たらない。そして、捲っているうちに、その事を明らかにする写真が最後のページに載っていた。そこに、写っていたのは今ここにいるあやめ自身に似た人物の写真だった。それも、愛美のお父さんとのツーショットの写真も載っていた。翔太は、一瞬頭が真っ白になった。
「えっ、まさか……あれだ、世の中には三人は自分に似た人がいるって言う……だよね?」
翔太は、動揺のあまり唐突な質問をする。
「翔太?」
聞こえにくい小さな声で翔太と呼ぶあやめ。
「そうだ、これ私に行かないとだね」
「翔太、思い出した。私、思い出したの」
早く行こうとする翔太を引き止めあやめは言った。
「私が見つけたかった私の子供は愛美だったの。実は、最初に愛美ちゃんに会った時に、少し胸がざわついたの。それと、今まで翔太と行った遊園地やアパートも皆行った事のある場所だったんだよ。」
あやめは、自分の過去を思い出し、泣きながら翔太教えた。翔太も、あやめの話しを聞いて目が覚めたように、これまでの事を理解した。
「そうだったんだ……世界って狭いもんだね。だって、こんな近くに居たなんて誰も創造できないでしょ。ていうか、そしたらあやめが義母さんってことになるの?」
いつもの翔太に戻った。
「そうなるわね。でも、私結婚良いって言ってないしなー(笑)」
「そんな事より、急がないと今夜の十二時過ぎたら、あやめ消えちゃうじゃん」
あやめが消えることをすっかりと忘れていた翔太。
「と、その前に。翔汰、大事な事忘れてない?」
「大事なこと? 何」
「だから、娘が居るって事は旦那も居るってことでしょ! だから、この事は00さんにも伝えたいの……良いでしょ?」
「いいけど、信じてもらえるか分かんないからね」
「いいよいいよ!」
あやめは、気持ちの枷が外れたのか、気が晴れた様子で翔太に返事を返した。翔太も、何かを感じ取ったのか、強く否定せずにいた。もちろん、信じてもらえる保障は無いに等しい。翔太は、見つけたアルバムを手にとって、お父さんのいるリビングに足を運んだ。リビングに入ると、お父さんと呼ぼうとしようとする間に、翔太に気づいたのか、こちらを向いた。
「おぉ、翔太君見つかったんだねアルバム。よく、これだって分かったね。私も、これを見るのはもう何年も前の事だから、何が載っているのか、楽しみだ」
お父さんは、嬉しそうにアルバムを受け取った。
「いえ、なんとなくこれかなと思いまして……あの、お父さん! 一つ、質問をしても良いですか?あやめの、お母さんの事について」
翔太は、胸をどきどき鳴らしながら言った。
「母さんのこと? そう言えば、あまり詳しい事は話した事無かったね。それで、質問ってのはどんな事かい? 答えられる事は、答えるよ」
お父さんは、一瞬驚いた様子でいた。確かに、急な質問だった。
「はい、率直に言うとここにあやめさんが居ます!」
「何を言っているんだい? そんなことは……」
「信じられないかもしれませんが、聞いてください」
そう言うと、翔太は今までのことをお父さんに話を始めた。最初の時は、信じられていない様子だった。それは、そうだ。急に、あやめのお母さんのこと聞かれ、ここに居るのだと言われても、信用できるほうが可笑しい。しかし、お父さんが、翔太に対して言ったことの無い内容などが、話の話題になると、ふと顔色が変わった。遊園地しかり、鰹の一本釣りなど、知る由も無いことを知っていたのだから、顔色が変わるのも致し方ない。そう翔太が、一方的に話をしていると、今まで聞いているだけで居たお父さんの、重い口から一言……、
「そうか、確かに今翔太君に聞いた事は、あいつと私しか知らないことだ。本当に、おいつが居るんだね翔太君……」
「はい、今お父さんの横に座っています」
信じてもらえるとは思っても居なかった翔太は、心から嬉しさが吹き込んだ。お父さんは、翔太に言われた自分の横を見ながら……、
「あやめ、愛美はしっかり育っているよ。こんな、私をいつも支えてくれている。それに、翔太君のような、いい旦那さんも見つかったし。私も、早くお前の元に行きたいよ」
お父さんは、涙を流しながら嬉しそうに言った。
すると、あやめが、
「馬鹿じゃないの? まだ五十ちょっとでしょ! そんなに、早くしなれたら困ります」
腑抜けた発言に、涙を流すのを我慢しながら言った。
「あっ、翔太君! 早く、愛美に会わしてあげないと。今夜で、消えてしまうんだろ?」
感動の最中、お父さんが言った。
「そうですね、早く行きましょう」
「いや、私は止めておこう。今のこの体じゃ、急ぎたくても急げないし。私は、あいつ……あやめと話せただけで十分だよ。愛美は、昔から体は強い子だから、大丈夫だ。それよりも、愛美が話せる状態じゃなくても、あやめには、今のあの娘と一緒に居させてやりたい。頼んだよ翔太君」
お父さんは、すごく行きたそうな顔をしながら、翔太たちを見送った。
「は一! 行って来ます」
翔太とあやめは、急いで電車に向った。しかし、電車の時間になっても、中々来る様子が無い。どうしだろうと、思いながら携帯を見てみると、インターネットニュースでこの駅の何駅か先で脱線事故があって、復旧に時間が掛かるとの内容だった。
「まじかよ! 今、夕方の五時だから早くしないと、間に合わない……」
翔太は、焦っていた。何か、手段は無いのかと。そこで、翔太はふと思い出した。あやめが、愛美の病院に荷物を持ってくる時に、荷物を触れていた。もしかしたらと、あやめに言った。
「あやめ、お前空飛べるよね。この前、病院で荷物持ってきたこと会ったでしょ! あの時みたいに、俺を掴んで病院に行けない? もしかしたらだけど、お前に良く殴られてるし、俺ならもてるんじゃない」
翔太は、あやめに必死に説明し頼んだ。
「確かに、でも結構距離あるし、体力の方は大丈夫だけど。翔太が、疲れると思うけど、それでもいいならいいけど……?」
さりげなく、翔太をおちょくるあやめ。
「大丈夫だよ! 早く、行こう」
「はいはい、じゃー行くよ! せーのっ」
あやめは、勢いをつけて空へと飛んでいった。空から見る地上の景色は、想像以上に絶景だった。まるで、世界が換わって見える。翔太も、景色を眺めながら焦る心少しずつ静まっていった。しばらくして、あやめの口から意外な言葉を発した。
「翔太………?」
「ん? 何、どうしたはの」
「今まで、ありがとね。私のわがまま言って………翔太---好きだーーー!」
あやめは、深く息を吸い込んで今までに無いような大きな声で翔太に、今の素直な気持ちを伝えた。少し、照れくさい気もしたが、もう消えると分かっているおかげか、すんなり言うことが出来た。しかし、残念なことに……、
「えっ、 最後のほう何て言った? ごめん、風が強くて聞き取れなかった」
「ううん、何でもないよ! そんな事より、もうすぐ着くよ病院」
聞こえなかったのは残念だったあやめ。しかし、心なしかすっきりとした気分だった。病院に、二人が着いたのは、夜の九時を過ぎていた。流石に、ずっとは飛び続けることが出来なかったあやめは、途中途中休憩を挟んでいたのだ。翔太とあやめは、急いで愛美のいる病棟に向った。翔太が受付に行くと、受付けにいた女看護師が翔太を見て、はっとした顔をした。
「ちょうど良かった。愛美さんの旦那さんですね。今電話しようとしていたところでした」
「愛美に何かあったんですか?」
看護士さんの意味深な言葉に、翔太は不安しかなかった。
「今は、落ち着きましたが、今夜が山場だと思いますので、奥様の近くにいてください」
「あ はい、分かりました」
少し、落ち着きを戻すと、翔太は愛美の病室に向った。翔太は、あやめを愛美と二人きりにさせ、自分は、病室の外のイスに座った。あやめは、恐る恐る愛美の傍に行き、軽く手を握る。
「お母さん……………」
「えっ」
愛美は、何かを感じ取ったのか、あやめが触れた瞬間に、お母さんと寝言で言った。
「ごめんね。生きて傍にいられなくて……でも、貴方の事は死んでからもずっと、思っていたから。愛してる気持ちは死んでも、同じだからね」
あやめは、涙を流しながら言った。嬉しいと悲しいの気持ちが交互する。それから、どれくらい時間がたったのか、あやめが病室から静かに翔太の元に行く。翔太も、それに気ずき顔をあやめに向けた。
「もういいの? あと、一時間ぐらいあるよ…」
「ううん、もういい。話す事は出来なかったけど、最後に愛美に会えた。それだけで十分だよ!それに、私が居るよりも、あんたが愛美の傍二いないと駄目でしょ」
翔太は、少し驚いた様子だったが、軽く笑みを浮かべた。
「そうだね…。あ、もう行くの?」
寂しそうな顔でアヤメを見る翔太。
「うん。早く行かないと、怨霊になっちゃいそうだから(笑)」
最後の最後まで、あやめはあやめだった.
「フフフ! それもそうだ」
翔太も、笑顔で返した。
「ばいばい…」
すると、あやめの体が仄かに光少しずつ、消え始めていた。お互いに不安だった。でも、最後くらいは、笑って送ってやりたい。その一身で、翔太は笑った。すると、あやめが翔太を呼び、自分の所まで引っ張った。そして、翔太の唇にキスした。
「え………?」
驚いた表情の翔太。あやめは、最後に翔太に思いを言った。
「ありがとう! 私、翔太のこと好でした………」
そう言って、あやめは天へと消えて行った。
「たく、お義母さんに言われても、嬉しくないよ………」
そう言いながら、翔太は笑って、満足げで言った。そして、あやめに言われた通りに愛美の元に行こうとする。病室のドアを開けて、入ろうとした時………。
「あやめ? あやめ、目さめたのか!」
驚きを隠せなかった。先ほどまで、生きるか死ぬかの人間が、目を覚ましたのだから。翔太は、嬉しさのあまり飛びつく勢いで、愛美の傍に行った。すると、なぜか涙を流している。
「大丈夫? 今、看護師さん呼ぶから」
翔太が、看護士を呼ぼうとすると、愛美が翔太の腕を握って言った。
「翔太………私、夢の中でお母さんにあったの」
「えっ」
「顔はよく覚えてなかったけど…見て直ぐにお母さんってわかったの。私、事故の後ずっと暗闇の中をさ迷ってたんだ。もう駄目だと思ったときに、急に明るくなってね、お母さんが出てきたの」
愛美は、嬉しそうに語り始めた。翔太も、言い返す間も無いくらいに。涙は、嬉し泣きだったようで、話し出すと涙は止まった。
「それでね、それでね! いろいろ教えてもらったの。私が生まれる前の話とか、この一週間の翔太との話とか。お母さんもね、すごく楽しそうに話してたんだよ。あの馬鹿と仲良くしなさいって
言ってたよ」
「あやめの奴、言いたい放題だな」
「それと、最後に。あなたは、まだ死んじゃ駄目。これからも、あのバ…翔太と生きていかないといけないんだから、しっかりしなよ愛美! お母さんは、先にっていうか、まぁ先に行って、空から見守っとくから、じゃーね………って、言ってた」
「あれ、さり気なくバカって言いそうじゃなかった?」
確実に言おうとしていたあやめだった。
「ねぇー翔太? お母さんが言ってた、古い旅館言ってみた。玄さんって人にもあってみたいし」
「いいけど、もう少し体を休めてからね」
「それもそうだね」
小さいながら、愛美の病室で笑い声で一杯になった。それから、数日が経って愛美は退院をすることになった。
「退院おめでとうございます! まさに、人体の神秘ですよ。無事に体調も良くなって……」
医者も、あの夜から急に元気になった愛美に驚いている。
「こちらこそ、お世話になりました」
そう言って、愛美と翔太は病院を出た。
「ねぇー翔太、早くお母さんが言ってた旅館行こう?」
「だーめ! せめて、明日にしな。それに、会社の事もあるんだから」
「はーい」
帰りながら、一瞬翔太はあやめと歩いているような気がした。