1月30日号 『僕はできません』
貴重なお時間を割いてまで、
このような無駄文に目を通してくださいまして、本当にありがとうございます。
『出る前に負けることを考えるバカいるかよ! 』
そう言って有名プロレスラーがアナウンサーを張り飛ばしたのは有名です。
そこにあったかもしれない台本の有無に関しては問う事はありませんが、
難題に当たってしまった時に、すぐに逃げ腰になってしまう逸般人にとっては、
とても耳の痛い言葉になっています。
中年のオッサンが「逃げ癖」。情けない話ですが、これからの半生を生き延びるためには
図太く食らいついている皆様の爪の垢を煎じて飲むなんて甘っちょろい。
脳内に格納されている扁桃核を発破するぐらいのダイナマイトが必要かもしれません。
少々きな臭い導入から入りましたが、ほんじつのむだぶんは、
仮に扁桃核が破損し、恐怖心を失った逸般人であったとしても、
「ごめん、やっぱ無理」と言ってしまうであろう話題です。
ここからはスチャラカ路線へと切り替わっていくので、肩の力をお抜きください。
どれだけ時代が進んでも、どれだけコンピュータ全盛の時代であっても、
変わる事がないであろう代表格が『アンチエイジング』でしょう。
代議士先生や会社の重役クラスのように、
そこにいるだけで重厚感が滲み出る「貫禄」を求めるような立場ならまだしも
やはり「年齢よりも若々しく見える」と言われて、気分を損ねる方は少ないでしょう。
特に女性は、『美魔女』コンテストが所々で開催されているように、
殊更『美』というモノに対しては、とても貪欲な姿勢を持ち続けているようです。
さて、唐突ですが『若々しさ』の象徴とは何でしょう?
色々と候補は挙げられますが、筆頭近くに出てくるのが『細さ』だと思います。
美顔エステと痩身エステは、
美容専門のクリニックの2枚看板として掲げられているのは自明の理です。
とはいえ、エスティシャンの方に任せっきりで何もしないままでは
落ちる代謝量以上にカロリーを摂取してしまい、結局は元の木阿弥。
個人個人でもダイエットに励まれる方がいらっしゃるから、
様々なダイエット本が話題となり、そしてひっそりとブームが去っていくのです。
現在、その話題の中にいるダイエットが、『炭水化物抜きダイエット』でしょう。
炭水化物を一切摂らずに、他の食べ物を摂る事で痩せる事ができる。
しかもカロリーを無視して痩せられるという
「それでも食べ過ぎたら太っちゃうんじゃないの?」と
思わず眉を細めてしまいたくなる魅力的な文言が並んでいますが、
セレブリティの方々の肉体美を羨んで真似をされている方もいるように思えます。
仮に逸般人が、この炭水化物抜きダイエットへ挑戦を表明したとしましょう。
今日の夕餉は秋刀魚の塩焼き・ワカメのお味噌汁・ネギの乗った冷奴と
和食のステレオタイプに該当するメニュー達が顔を揃えました。
ここから炭水化物を抜くのですから、打ち消されるは白米の姿。
ご飯を炊き直している段階でしたので、まずはそれのない食事が始まります。
秋刀魚を摘み、お味噌汁で暖を取り、冷奴の山葵に軽く悶絶したのですが、
食事のペースは上がらぬまま秒針だけが歩を進めます。
すぐに悟りました。
「ダメだ。やっぱり主役を外す事はできない身体になっている…」と、
炊飯器から炊き上がりを報告する電子音が鳴り響き、
いそいそと茶碗と杓文字を手に取って、熱々の銀シャリをよそい、
秋刀魚の前に置かれたの白銀のような輝きと一口入れた時の表現のし難い充足感。
それだけで如何に自分が炭水化物中毒者である以上、
炭水化物抜きダイエットは荷が重いノルマだと認識させられたのでした。