6月10日号 『個人的無用の長物』
貴重なお時間を割いてまで、
このような無駄文に目を通してくださいまして、本当にありがとうございます。
更新日とタイトルにズレが生じていますが、
これは「なろう」の仕様を確認するために書いた作品で、孤立されていたのです。
しかし、「ほんじつのむだぶん」に変わりはありませんので、
連載の方に編入させようと思い、転載させていただく事となりました。
中身は、6月10日号と同じで、編集や加筆は加えておりませんのでご了承ください。
『無用の長物』とは・・・
あっても役に立つどころか、かえって邪魔になるものを意味しています。
今回は全く気にも留められないまま月日が流れ、
気付いた時にはどうにもならなくなったというスチャラカ路線です。
冷蔵室の扉を開けて、放たれる冷気の心地好さを一瞬感じながらも、
夕餉の支度を始めなければいけない時間帯に差し掛かってきたという事もあり、
冷蔵庫との闘いのゴングを鳴らします。
納豆・ヨーグルト・冷やされた麦茶・パスタソース等が、
自分の出番はまだかと準備運動を始めました。
そんな中で逸般人の目を惹き付けたのが、先日購入しました『豚肉』。
3割引きと大きく書かれたラベルを貼り付けて、
「早ぅ起用してくれんと、あっちゅ~間に傷んでしまいまっせぇ・・・」と
黒い微笑みで誘惑をしてくるのです。
『黒い』と書いているからと言って、黒豚ではありません。
アメリカからいらっしゃった舶来物です。
梅雨時とはいえ、暦の上ではとうに夏。
逸般人は奈良出身ですので、昨今では軽く真夏日という日も増えてきました。
数カ月後の酷暑を想像して、気持ちが萎えてしまった事もあり、
サッパリ系で済ませてしまおうという方向で一致しました。
豚肉・・・夏・・・そしてサッパリ・・・導き出された結論は『冷しゃぶ』です。
千切りにしたキャベツを軽く塩茹でにして、食べやすくし、
その上に、あらかじめしゃぶしゃぶして冷やしておいた豚肉を乗せ、
上から大量のポン酢をかければ出来上がり。
そんな青写真を頭で描き、見事に青写真通りに実行に移したのです。
今の所、無用の長物は出てきてはいませんが、
その登場シーンは、お湯を作って豚肉をしゃぶしゃぶしようと取り出した瞬間でした。
ふと脇に目をやると、山葵や生姜おろしのチューブの奥に白い缶がありました。
横を向いていたので、正面で正対をしてみると、
そこには中国神話に現れる伝説上の霊獣のお姿が・・・
『キリンビール』の缶が残されていたのです。
麦酒が大好きな方からすれば、
「やった!こんな所に残ってたじゃん!」と目を輝かせて蓋を開け、
「ぷは~っ!」と威勢のいい声を上げることでしょう。
ですがこの逸般人、基本的にお酒がダメな性質です。
缶チューハイ一本(500ml)で酔っ払って、駅構内でぐったりしたという黒歴史の持ち主です。
ちなみに、父も好んで酒類を口にする事はありませんので、
見事な冷蔵庫の肥やしとなってしまうのです。
恐る恐る、何時頃から冷蔵庫にお入りになられたのかと缶の底を拝見しました。
『製造2009年06月 賞味期限2010年02月』と刻印されており、
丸7年間は冷やされっぱなしという数奇な運命を辿っているようです。
ワインは何年物と言われるように、熟成すればするほど、
その味と香りは深くなってくるとは良く耳にはしますが、
麦酒が相手となっては、ワインの法則が通用する筈はありません。
しかも缶の下部にはこんな恐ろしいキーワードもくっついてきました。
【生 非熱処理】
熱処理されていないという事は、当然腐っているという印象を抱くわけで、
流石に開ける勇気は湧いてきません。
恐らく、日の目を見ないまま冷蔵庫の肥やしになり続けるしかないでしょう。
嗚呼、呑んであげられれば良かったなぁ・・・