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6月21日号『白銅が輝いていた時代』

貴重な時間を割いてまで、


このような無駄文に目を通してくださいまして、本当にありがとうございます。



『カローラⅡに乗って 買い物に出かけたら


 財布ないのに気付いて そのままドライブー』


懐かしいコマーシャルと共に流れていた曲です。


ご存知で覚えていらっしゃる方は、


恐らく三十路の階段を登りきった方が多いでしょう。


普通ならあり得ない事だと思うのですが、それをやってしまったのです。



たまに、財布だけを持って近くのショッピングモールに行くのです。


暑気払いという意味もあるのですが、買い忘れたモノはないだろうかと確認し、


思い出したタイミングで切れかかっていたモノを補填するケースがあります。


一種の脳トレと言えば恰好は良いですが、


これが衝動買いにも繋がってしまうという、結構なリスクのある行動です。


そろそろ夜も暑くなってくる時節もあり、こういった行動が増える事でしょう。


そんな時に、うっかり財布を家に置き忘れたまま出掛けてしまったのです。


いつもの厚みを感じない事に気がついた時には、既に店頭。


一瞬「うわ、何処で落とした!」とパニックになったのですが、


デスクトップパソコンの上に置かれたままだった事に気付き、まずは安心します。


そして、「いやいや・・・お金ないよ」とポケットの中を確認すると、


運のいい事に、100円玉が1枚出てきました。


「ま・・・いっか・・・」と1つの目的だった補填をすっかり諦め、


並んでいた目的の『暑気払い』に重きを置いて店内へと赴きました。



店内をぐるっと回って、


「あ、胡麻ドレッシングって切れかかってたじゃないか!」とか、


「揚げたてのコロッケのいい香りが・・・」とか思っていても、


白銅硬貨1枚で何ができるという訳はありません。


何の気なしに買い物カゴに商品を入れていく方々を横目に


打ち(ひし)がれた気分になり、


回っているだけでちょっと惨めな気持ちが表れ始めます。


そんな時、陳列されたコーナーの一角が浮き上がって見えました。


若干重い足取りになりながら、そのコーナーに向かうと、


白銅が輝いていた時代へと気分がタイムスリップしていきました。


陳列されていた商品に付けられていた値札は「10円」「20円」「30円」


そこにあったのは『駄菓子』でした。


昔と変わらないラインナップが其処にありました。


幼少時代、一日のお小遣いだった100円玉を1枚握り締め、


近所のなだらかな下り坂を下り始めた途中に、一軒の駄菓子屋がありました。


(回顧していますが、その駄菓子屋さんは今も健在です)


そこに並んでいた大量の駄菓子から、


「100円でたくさん食べたい」為に何を選ぶかを延々と悩み続けました。


くじが付いて「あたり」なんて引いた時の嬉しさは、


言葉にできない嬉しさでした。


これが500円札へと進化したら、一気に偉くなった気分になり、


「これも、これも、あれも・・・」と心が一気に踊りました。


そんな時に限って、駄菓子屋の隣にあったアーケード筐体ゲーム機に注ぎ込んで、


結局、何も食べないで終わったという事もありました。


大人になって駄菓子に触れる機会は、めっきりなくなってしまいましたが、


その駄菓子たちは数十年の年月を越えても、


未だに子供たちの心を魅了し続けている事に、えもいわれぬ嬉しさを覚えました。


結局、「中年のオッサンが駄菓子を買うのって、そこそこ恥ずかしくないか?」


という冷めた目をした逸般人に諭され、


80数円のペットボトルコーヒーを1本買って、お店を後にしたのですが、


思わずノスタルジーに浸れた、とても良い時間を過ごした気分になりました。

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