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その花をよろしく

作者: お茶っぱ

特に理由はありませんが、なんだか書きたかったので書きました。

あまり誤字脱字もチェックしてませんので、読みづらいとおもいます。

描写も得意ではないので、分かりづらいと思います。

それでもよろしければ、読んでいってください。


何の花か知らないが、俺は年に一度咲くこの花をもう何年も育てている。

正確に言うと、アパートの庭の隅に自生しているので育てているというよりは

見守っているというほうが正しいか。

水はたまにやるだけで問題はなく、手間のかからない花だ。

朝、少し水をやったら、気が向いたときに雑草を抜くくらいでいい。

なんで俺がこの花を育てているのかって?

頼まれたからだ。

いや、俺が勝手に頼まれたと思っているからだ。

たいした話じゃないが、暇つぶしにでも聞いていくかい?



その日は、特に何があったわけじゃない。

いつもどおりに起きて、いつもどおりに家を出て、いつもどおり電車が遅延し、

いつもどおりに働いて、いつもどおりに帰路についた。

いつもと違ったのは、俺の自転車にアイツがふてぶてしく座っていたことだ。

黒い毛並みに足元と尻尾の先だけ白い。

わりと大きな体の野良ネコ。

アイツは俺が近づいても警戒したり、逃げようとせず。

俺のほうを見ると、「早く出せよ」というような感じで「ニャ」と小さく声を

出した。

元々、俺は野生の動物から見ても人畜無害に見えるようで、あまり警戒されな

い傾向にある。

液のロータリーにいる鳩なんか、見慣れたせいか腹が減っていると歩いてる俺

のあとを付いてきたりする。

一度も餌を上げたことなどないのに。。。

可能性として、菓子パンを食べながら歩いたときに食べかすが落ちたことを記憶

しているのかもしれない。

トリ頭というのは流石に失礼ということか。

おっと話がそれた、元に戻ろう。

そのときの俺は、タクシーにでも乗ってるつもりかコイツと考え、いくらなん

でも無警戒すぎだろうとショックを受けた。

結構乱暴にスタンドを戻し自転車を漕ぎ出したが、何の反応もなくアイツは荷台

に座ったままだった。

落っこちても知らねぇぞと思いながら家路を急ぎ、アパートの駐輪場に自転車

を止めた。

アイツはそのまま、何もいわずに地面に降りるとそのままこっちを見もしない

でトコトコと歩き出した。

まぁ、俺には関係ないと自分の部屋に戻り晩飯の支度をすることにした。

晩飯の支度といっても、昨日作った味噌汁と冷凍しておいた白米を温めるだけ。

実に手の込んだ晩飯だろう?

特に期待せず冷蔵庫を開けてみた。

独身男性特有のペットボトルしか入ってい冷蔵庫ではあるが、もしかしたら何か

入っているかもしれない。

入っていたらいいなぁ。。。現実は非常であった。

たくあんが残っているような気がしたが、気がしただけだった。

ともかく、晩飯の準備はできた。

ネットで馬鹿なニュースやブラックジョーク満載のサイトでも見ながら、食べるとしよう。

ああ、なんて健全で一般的で、味のしない幸せな一日だろうか。

ふと、アパートの庭先でなにか音がすることに気が付いた。

おそらくは野良猫だろう。

もう、野良犬なんてだいぶ見ていない。

放っておけばいずれどこかにいく。

そうおもって気にしないでいたが、どうも何かおかしい。

一向にいなくなる気配がないのだ。

何か穴を掘っているような音もする。

仕留めた獲物を隠すのだろうか?

はたして、ネコにそんな習性があるのか分からなかった俺は、興味本位でそっと

窓ガラスから音のする庭の一角に目をやった。

もう暗くなっていたため、よく見えなかったがやはり何かが動いてるのはわかった。

穴を掘っているわけではないようだった、何だ?

しかし、その何者かはこちらの視線に気が付いたのか、急にその場から逃げて

いってしまった。

すばやい身のこなしで、塀の上に登りそのまま遠ざかっていく。

うん、あの感じはネコだな。

わりと、大きいな。

それはさておき、一体何をやっていたのか気になった俺は、しまっておいた懐

中電灯を持ってきて、さっきのネコが何かをしていた場所を照らしてみた。

確かに何か掘り返したような形跡がある。

具体的には根っこから引っこ抜かれた雑草が散らかっていた。

しかし、どれも何かがあったにしては深さがない。

雑草を引っこ抜くなんて庭の手入れでもしに来たのか?

去年ここに引っ越してきたが、ここに何か植えてあるとは聞いていない。

俺が越してくるまでの数年間は空き部屋だったと聞いている。

まてよ、雑草にまぎれて何かあったような。。。

うん、思い出せない。

思い出せないものは仕方ない。

それはいいとして、せっかく出てきたんだ散らかってる雑草でもゴミ袋に詰め

ておこう。

このままにしておくのもなんだしなぁ。

庭掃除か、、、実家でお袋が腰を痛めたときに代わりにやった以来だ。

手伝ったってのにぶつくさ文句言われたなぁ。

根っこを残すなだのなんだのってうるさかったなぁ。

今は弟が手伝っているのだろうか。

おっと、また話が本筋から離れてしまった。

整理すると、庭の片隅でネコがなぜが草むしりをしていた。

ということだ。

意味が分からないことがわかったというところで、俺はめんどくさくなって寝

ることにした。

その日見た夢は、なんでかどうしてか、今日も覚えてる。

単純な夢だ。そして奇妙な夢だ。

俺は昨日の様に部屋の中から庭先を見ていた。

視線の先には小さな子供が小さなジョウロを抱えて、丁寧に水を撒いている。

そこにあったのは花だ、これまた小さな花が咲いていたんだ。

夢から覚めた俺は、夢で見たとおりに庭先を見てみた。

昨日、雑草が抜かれた周辺はよく見れば何かが植えてあったようにも見える。

多少眠たかったが、庭に出て確かめてみることにした。

雑草に隠れていたのだろう、雑草がどけられたそこには確かに花の芽が出ていた。

よく見るともうつぼみが出来ているみたいだ。

ということは、あのネコはこの花のために雑草を引っこ抜いていた?

一体何の為に? それは、花が咲くように、、、か。

じゃ、一体どうしてそんなことをしていたんだ?

気まぐれ? だとしてもつぼみがあったことは少なくとも知ってたって事だよな?

ま、なんだっていいか。

物事をじっくりと長いこと考えることに向いてない俺の頭ではきっと答えなんか

でない。

それに、こんなことは答えなんて出ないほうがいいや。

俺は、まだ残っている雑草をブチブチと引っこ抜いたあと、する必要があるの

か分からないがポンポンと土を少し固めた。

我が家にジョウロなどという上品なものはないので、コップに水を入れてその

水をかけてやった。

何年か住んでるが、ここに花が植えてあったなんて気づきもしなかった。

以前の住人が趣味か何かで植えたんだろうか。

いや、それもどうだっていい。

さて、大変残念だが、仕事に、仕事に行かねばならないんだ。


仕事の内容?

いや、それはやめておこう、この話とは何も関係がない。

まぁ、白状すれば愚痴しか出てこない。。。よくある話だろ、はは。。。

そうだなぁ、強いて関係がある部分を無理やり作るとすれば、、、、

あれだな、庭の様子が気になって普段のようにダラダラ仕事をせず、珍しく仕

事に精を出して定時に変えれるようにしたって事かな。

何はともあれ、早い時間に家に付いた俺はスーツから部屋着(ジャージ)に着

替えて庭に出た。

例の花はというと、昼と変わらずそこにあった。

ま、当たり前なんだけどな。

俺はスマホを取り出して花の写真を撮った。

別に、LINEなんかで友達に見せるのが目的じゃない。

ん、なんだ、その哀れむような目は?

いや、別に、友達がいないとかそういんじゃないぞ。

お、俺だって、たまには、こう、何か面白いものをみつけたら友達に見

せたりするくらいはする。

え、応答があるかどうか。。。だって。。。

は、ははは、ははは

まぁ、なんで、写真なんか撮ったかについてだが、家の近くに小さな花屋が

ある。

そう、この花の育て方を聞こうと思ったんだ。

それで、写真を見せたほうが口頭で説明するよりも早いし正確だと思ったとい

うわけだ。

しかし、花屋がそんなに遅くまで店を開けているはずがない。

柄にもなく仕事に精を出していたのは、花屋の開店時間に写真を撮った後でも

間に合うようにする為だ。

というわけで、俺は写真を撮り花屋へ向かった。

いつも8時くらいに帰ってくるのだが、シャッターは閉まっているのでもしか

したらもうしまってるかもしれない。

その場合は仕方ない、偉大なるインターネット上の先生にお伺いしてみよう。

かの先生は本当にすばらしい。

仕事中も良くお世話になっている。

かくして、店には着いた。

まだシャッターは閉まっていなかった。

この店に用事があるのは初めてだったので、中に入るのにかなり緊張したのを

覚えている。

え、だって、初めて行くお店って緊張しない?

あ、そう、しないの?

そのときの俺は意を決して、俺は店の中に入った。

おそらく、レジに店員がいるだろうと思って奥へ進んでみたところ、メガネを

かけた婆さんがいた。

こちらに気が付いた様子もなく微動だにしない。

こういう時、声をかけたくてもなんと言って声をかけていいか分からない俺は、

大変困ってしまい出直そうかなと、逃げ腰になっていた。

しかし、後ろから声をかけられ逃げることはかなわなかった。

「御用ですか?」

と声をかけてきたのは、後で知ったんだが微動だにしない婆さんの娘さんだった。

結婚して近くに住んでいるらしく、定期的に様子を見に来ているらしい。

俺は、庭の掃除をしていたら誰かが育てていたと思われる花が見つかったので

育て方を聞きたくて来たことを話した。

しかし、彼女自身は花のことには詳しくないとの事で、やはり婆さんに聞いて

みないと分からないとの事。

「母さん、この人が花の育て方聞きたいんだって。起きとる?」

と、さっきから微動だにしない婆さんに結構大きめの声で話しかける。

「寝とるねぇ。おきんさいな。おーい。」

すると、ようやく婆さんがこっちのほうを向いた。

「おお、加奈子か」

いかにも、おばあちゃんというような声色で婆さんがしゃべった。

生きてたようだ。なによりだ。

しかし、座ったまま微動だにしないで寝るとか、会社でもサボりに使えそうな

すばらしいスキルだ。

是非入門して会得したい。

いや、今回は婆さんに弟子入りするのが目的じゃない。

婆さんが起きてるうちに例の花のことを聞かなくては。

「すいません、この花なんですが、育て方分かりますでしょうか?」

俺は、スマホの写真を拡大して婆さんに見せた。

「どれどれ。。。」

婆さんはしげしげとスマホの写真を見る。

しばらくした後、「なんだろねぇ」と呟いた。

なんでも、似たような花は確かにあるが、どれもやや特徴が異なるらしい。

ただ、どれも、気温や湿度の管理をしなければならないようなデリケートな類

の花ではなく、定期的に水をやっていればいいらしい。

どうやら、雑草に埋もれながらも何とか生きてたのは、そういうところのおか

げなのかも知れないなと俺は思った。

婆さんは「わるいねぇ」と言っていたが、俺はあの花の正体が知りたかった訳

ではないので、教えてもらった内容で十分だ。

婆さんにお礼を言い、花が咲いたらまた写真を見せに来ると伝えると婆さんは

「それは、うれしいねぇ、たのしみだねぇ」と笑った。

俺は、ついでにジョウロを買って家に戻った。

帰り際、婆さんが花に支えになる柱を用意してあげるといいとアドバイスを貰

ったのでこれまた帰りにカップラーメンを買いに寄ったコンビニで割り箸をも

う一本貰って帰った。

家に着いた俺は、早速アドバイスに従い割り箸を支えにすべく庭に出た。

すると、花の近くには昨日のあのネコが座っていた。

どうしてわかったかって? あんな足先だけ真っ白なネコはそうそう居ないか

らな。

近づいたらどこかに行くだろうと思ったが、すぐ近くまで来ても動かないし

こちらを警戒する様子もない。

いきなり襲い掛かられても困るので、俺は刺激しないようにゆっくりと花の近

くに割り箸を差込み花が寄りかかれるように調整した。

その作業中ネコはすっと俺を見ていた。

少々気味は悪かったが、無事作業を終えて部屋に戻ることにした。

「花屋のばあちゃんが、咲くのを楽しみにしてるってさ」

最後にそう花に話しかけて部屋へ向かおうとすると、ネコがにゃぁと声を出し

た。

不思議なことにまるで"また明日な"と声をかけられたような感じがした。


翌日から、そのようにして、30も見えてきたさなか人生初の花の世話に挑戦し

だしたわけだ。

朝、花見に水をやり、夜帰ってきてはつぼみの状態を確認するってだけだけど

ね。

副産物として、決まった時間に起きるという規則正しい生活がスタートしたが、

当の本人はそのことに気が付いていなかった。

そのことに気が付いたのは、会社の同僚に「最近遅刻しなくなったな」と皮肉

めいた一言を頂いてからだったりする。

ん? まーた脱線しだしたと思ったかい。

実は脱線したわけじゃないんだ、この話、規則正しい生活のスタートには訳が

あってさ、そもそも朝起きるのがなかなかに難しい俺がちゃんと起きれるよう

になったカラクリってやつ。

それは、言ってしまうと、朝強制的に起こされるようになったから。。。

朝、庭のほうの窓からバンバンと音がするんだよ。

風が強いのかと思ったら、そうじゃなくて、何だと思って開けてみたらネコが

ねアイツが当然のようにそこに居るわけ。

真っ白な足先で窓を叩いていたようだ。

そして、お隣さんから「朝っぱらからうるせぇぞ」と壁ドンされるし、最悪だ

ったね。

壁ドンって実は最初、うるさく騒いでたらお隣さんからが抗議で壁をドンと叩

いてくることだったからね、イケメンに壁に追い詰められることじゃないから

ねあれ誤用だからね。

まぁ、そんなことどうでもいいか。

アイツは、俺が起きたことを確認すると庭のほうにトコトコ歩いていった。

花のとなりに鎮座すると、俺を呼ぶようににゃあと鳴いた

このまま二度寝するという選択肢もあるが、また騒がれると困るので眠い目を

こすりながら庭に出た。

花のそばに来て様子を見てみたが、まだ、つぼみのまま。

何だ? と思ってあいつのほうに恨めしい視線を送ると、あいつは「コイツだ

めだわぁ」と言うようにため息をついたように見えた。

そいて、またトコトコ歩くと、庭にある水道の蛇口のことろで止まりこっちを

振り向いた。

あ、水をやれってことか。

昨日買ったジョウロに水を入れて、水をやることにした。

たくさんやったほうが花も喜ぶだろうと思い、一気にジョウロを傾けようとした

が、アイツが「あほ」というようまた鳴いた。

どうやら、少しずつやれということのようだ。

仕方ないので、花の前に座り根っこのほうに近づけてゆっくりチョロチョロと

水をやっていると、そこまでだとアイツがジョウロを叩く。

なるほど、このくらいでいいのか。

作業を終えたところで、アイツはどこかへ行こうとしていた。

朝飯を探しに行くのだろうか。

と、朝はこんな感じ。

で、夜はというと、アイツは俺の帰りを待ち構えていることはなかった。

夜に行う作業はないということだろう。

つぼみは、なんとなくもうすぐ咲きそうな気がした。

しかし実際は、しばらくたってから咲いた。

それまでの間、朝、あいつの物音に起こされ(最終的には気配を感じて起きれ

るまでになった)、夜に状態を観察して寝るという生活が続いたわけだ。

その間、朝アイツと一緒に水遣りをしながら俺は仕事のことだったり、スーパ

ーで買ってた好きな惣菜がなくなった事とかいろいろ話した。

別に何かアイツが反応するわけでも無いけど、わりと悪くない時間だったよ。

そして、あの日が来た。

とうとう、花が咲いたんだ。

あいつが来たなと感じで、俺は目を覚まして庭に出た。

「よう、今日はどうだ?」

と、あいつに尋ねてみたら、あいつはいつものように花の隣ではなく、正面に

座っていた。

俺に気が付いたのかこっちをチラッと見た。

まだ視界がぼんやりしていたので、ゆっくり歩きながら花に近づいていった。

あいつの近くまで来て俺は花が咲いていることに気が付いた。

「そうか、咲いたんだな。」

俺がそう呟くとアイツは、いつもよりなんとなくうれしそうな声でにゃあと鳴

いた。

それから、花が枯れるまでの数日あいつはいつも庭先に居た。

そして、花が枯れるのを見届けてからアイツはどこかへ行ってしまった。

花が枯れた日、「枯れちまったな」と俺が声をかけると、あいつは「当たり前

だろ花なんだから」と答えた気がした。

それはそうだな、とおもった俺の心を察したのか、あいつは「でも、綺麗だっ

たろ」と俺に言って来た気がした。

俺は少し笑いながら、「そりゃ、俺とお前で育てたんだ、綺麗に咲いてくれな

きゃな、そうだろ?」と言ってやった。

あいつは最後に、枯れた花に頬を摺り寄せるとそのまま塀に上がってこっちを

見た。

それでそのまま、あの白い足を器用に使って隣の家の壁を登って行ってしまった。

それは、再会の約束なのか今生の別れなのかは知らないが、明日はもう俺を起

こしに来ないということなんだなと理解した。

だから俺は、「じゃあな」と去り行く背中に別れを告げた。


あいつは、おそらく、俺にあの花のことを教えるのが目的だったんだろう。

誰かにこの花の世話をして欲しかったんじゃないか。

そう思うと、もう、俺の前には現れないかもしれない。

けど、俺がここに住んでいる間くらいは、この花の世話をしていたいんだ。

俺の知らないところでホントは毎年、見に来てるのかもしれないしな。

と、まぁ、この話はこれでおしまいだ。

悪かったな、時間とらせちゃって。

なんでかな、この花を見てるあんたが、なんだかとても懐かしそうな顔を

していた気がしてさ。

そうだ、今日の水やりはまだしていないんだった。

なぁ、あんた、水をやってくれるか?



10年前、私はこの町を引っ越した。

理由はお父さんの仕事の都合。

よくある話でしょ?

今となっては、思い出や友達がいろんなところに散らばっていて、きっとそこ

が私の場所なんだって思える。

でも、当初はいやだったな。

だって、友達もいない、何も知らない場所に行くんだもん。

両親に行きたくないとは言わなかったけど、すごく不安で寂しかった。

だから、私は、住んでいたところの庭に本当はいけないんだけど、そのとき好

きだった花を植えて、一生懸命お世話をした。

私がそこに居たんだって、私が居なくなっても私の何かを残したくて。

慣れない手つきで庭弄りをしていると、黒い毛並みに足元だけ白い猫がよく様

子を見に来た。

そのころの私は、なんとなく花が好きなのかなって思ってたけど、今思うと縄

張りだったのかな〜

私は、よくその猫に話しかけた、本当は転向したくないこと、大好きな友達と

離れるのが嫌なこと、それと好きな男の子にあえなくなるのが嫌なこと。

ほかにも、お別れ会をしてもらえてすごくうれしかったこと。

友達とタイムカプセルを埋めて、20歳になったら開けようって約束したこと。

そして、いよいよ引っ越す最後に日に、あの花が咲くように見守ってて欲しい

とお願いをした。

いつか、きっと見に来るからって。

今考えるとまったくもって一方的で、ずうずうしいお願いだ。

それを守ったところで、あのネコには何も得られるものがないのに。

昔住んでいた家によって行こうと思ったのは、あの発言に対して責任を取らね

ばと思ったから。

何もない庭先を見て、あのときの私の不安や寂しさを一方的に押し付けてきた

事に感謝をするためだった。

まさか、私の代わりに世話をしている人が居るとは思わなかったなぁ。

うれしかったのと同時に、"私の場所"が"私の場所だったところ"に変わったと

感じた。

でも、あの人は最後に教えてくれた、そのネコが自分にとって大事な友人だと。

だから、私とあの人は共通の友人を持つことになる。

とってもフシギな関係だ。

さて、今日、この町を訪れた目的の場所に行こう。

早くしないと"あんたは相変わらず、時間通りに来ないね〜"と言われてしまう。

まぁ、その台詞が聞きたい気もちょっとはしたり。。。

早くタイムカプセルを開けて、あのときの自分に教えてあげたい。

楽しいことと、悲しいことと、嬉しいことと、辛いことがたくさんあって、

私は楽しい今日を過ごしているよって。










最後まで読んでいただきありがとうございました。


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