一人
遅くなってしまって申し訳ありません。
色々なことがありましたが、なんとか投稿することができました。
ではごゆるりとご覧下さい。
――――――気がつくと、また知らない天井だった。
自分は布団で寝ている。
外からは夏を象徴する蝉の声が聞こえる。
夢だったのか?
昇は若干の期待をしたが、
「あら、起きたのね。人の目の前で意識を失わないでくれる?心臓に悪いわ。」
声が彼の頭上から話しかけてきた。
上体を起こし、声のした方向を確認にする。
「・・・やっぱり、夢じゃなかったのか。」
そこには紅白の巫女装束に包まれた少女――――――博麗霊夢が立っていた。
「なに?私が居たら、ダメだった?」
「そんなことはないですが、できれば夢であって欲しかったなあーっと。」
その言葉に霊夢さんの顔が曇る。
「・・・・それって、遠まわしに私のことが嫌いってこと?」
「ち、違います!霊夢さんのことは嫌いじゃないですよ!ただ、これが夢なら不安が消えるのになあ・・っと思っただけです。」
「不安・・・ね。それってそんなに心配なことなの?」
霊夢さんが昇の近くに座る。
「俺がこの世界、『幻想郷』に来ているってことはもしかしたら俺の友人が来ているかもしれないんです。そう考えると、不安で。」
昇も『幻想郷』の知識はある程度は知っている。
ここは人間と妖怪が共存している世界。
俺は博霊神社だからよかったけど、もし森の中とかだったら、今頃妖怪のご飯になっていたかもしれないと思うと冷や汗がでる。
もし、他の奴がこっちに来ているなら一刻も見つけ出したい。とにかく安否を確認したい。
そんな昇に霊夢さんが思い出したように話す。
「そういえば、早苗の奴が新しい家族ができたとか言ってたわね。」
その言葉に昇は一瞬考えを巡らせたが、すぐに考えを放棄した。
「・・・・恋人でも出来たんですか?」
「いや、私も詳しいことは聞いてないから分からないけど、気になるし、一度見に行こうと思ってるんだけど、あんたはどうする?」
昇は少し考え込んだが、
「んー。ここに居ても何も起こらないと思うし、それに霊夢さんについていかないとヤバい気がする・・。」
と言って立ち上がり、一緒に行こうとするが、そこで霊夢さんがある一言をいう。
「でも、飛べる?」
「は?」
反射的に言葉が出てしまった。
『飛べる?』なんて日常生活では普通は聞かれない。
少し唖然とした昇に霊夢さんが続ける。
「飛べなきゃ、ついて来れないわよ。ここからじゃ、早苗の所までは遠すぎるし。」
歩いて行ったこともないしね、と続けた。
もちろんただの人間である昇は飛べない訳で。
「ということは・・・・俺、留守番・・・ですか?」
「そうなるわね。飛べるなら別だけど。」
「・・・・・」
あまりの事実に声が出なかった。この神社には俺と霊夢さんしか居ない。そして霊夢さんが早苗って人の所に行ってしまう。ついていこうとしても昇は空を飛ぶことができない。
つまり、神社に残らなければならない。一人で。
「じゃ、早苗の所に行って来るから、留守番よろしくね。」
霊夢さんが障子を開け、飛んでいこうとする。
そんな霊夢さんの背中に昇は
「・・・・早く、帰ってきてくださいね。」
と一言かけた。
「境内から出なければ大丈夫だから安心しなさい。それじゃ行ってくるわね。」
霊夢さんが飛んでいった。
昇はそんな姿を見ていた。
飛ぶことが出来れば、霊夢さんについていくことができ、もしかしたら友人の一人ぐらい見つけられるかもしれなかった、後悔の気持ち。
己の力の無さを思い知らされた、悔しい気持ち。
そして、現在一人という状況からくる不安な気持ち。
そんな気持ちが昇の中で渦巻いていた。
そんな気持ちの中、昇は手を上げ、背中を伸ばし、一息着く。
「さて、霊夢さんが帰ってくるまで何をしようか。」
蝉の声がより一層、聞こえるような気がした。
――――――――――――続く。
第五話終了です。バリカタ愛好者です。
この度は投稿に時間がかかってしまったことを謝罪させていただきます。
申し訳ございませんでした。
私の方の予定が大変だったもので。
今は落ち着いているので、予定通りに投稿できそうです。
ではまた来週の木曜日に会いましょう。
バリカタ愛好者でした。