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惑星の歴史を閉じる。

 私はこれでよかったのか。心のどこかでアハカとともにゆきたい、生きたいと願ってはいなかったか。しかし、この薄汚れた暗殺者の心がまだ生きたいなどと、図々しいにもほどがありはしないか。

 核戦争と小惑星の衝突のなか、運よく生き残ってしまった私は、私が全人生をかけて積み上げてきた業をここで清算できるか?

 私が今、こうして立っている灰の大地が、私の身体を通り抜けていく灰の風が、私を覆う灰の雲が、もはやすべてが灰塵と化すとき、人間の歴史とともにその業が清算されるか?

 それは、おそらくないだろう。私たちの歴史はアハカたちに託された。

 だが、新しい命によって新しい地がふたたびけがされることもまたないだろう。私たち人間は、その激動の歴史と積み上げてきた業をすべて彼らに教えたからだ。そして、私たち人間が誕生してから今まで生きてきてようやく気づいた、無限と有限へのかぎりないはかなさといとおしさも。

 もうすぐで私と、その歴史と、この地球が亡びるときだ。

 私は空を見上げた。

 灰の空を見て想う。

 核戦争も小惑星の衝突も、ほんの些細なことだった。もちろん生物にとってその破壊は本来である生を脅かすには充分なものだ。しかし、もしこの世が本当に無常であるならば、なにごとにもいつか終わるときが来る。私たちはその終わりを精一杯引き延ばした。精一杯、生物としての生にしがみついた。そしてきたるときが来た。

 本当に、ただそれだけのことだった。

 あと数分もしたら私の身体と心は跡形もなく消えてしまうだろう。

 だが、この世が本当に無常であるならば、私のことがアハカの記憶から消えてしまわないことを、それだけを願う。


 さあ、人類の歴史よ。生命の地球よ。

 そして、私の愛したアハカ。


 また会うそのときまで──




 終

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