こんなはずじゃあ
うちにはいつも、食べきれないくらいリンゴがある。
誰がそんなに買ってくるのか知らないけれど、やっぱり、食べきれなくて残ってる。
腐らせて捨ててしまうくらいなら、鳥にでも喰わせてしまえ。
そう思って見ていたら、本当に鳥にあげてる奴がいる。
庭の木の枝に、リンゴ半分突き刺して。
そしたら来る来る、名前は知らんが大きい鳥が食べに来る。
もともと体が大きいせいか、驚くくらいたくさん食べる。
いい喰いっぷりにニヤニヤしながら見ていると、一日が巡る度、予想通りに太ってく。
そうしてその日、そろそろいいかと庭に出て、ひっそり隠れて鳥を見る。
こいつ鳥かと思うくらい。
まるまると太っちゃって。
もう……。
もう! 我慢している時じゃない!
びゃっと飛び出てくわっと噛み付き、暴れる鳥を押さえ込む。
こいつはきっとこう思う。
こんなはずじゃあ。
ニヤニヤせずにはいられない。
おや? あれはなんの声だろう。これはなんの影だろう。
うっ、と思った瞬間に、首根っこを掴まれて、誰かに体を持ち上げられる。
そのまま空へ浮き上がる。
鳥は口から逃れて飛んでった。
こんなはずじゃあ、なかったのに。