あたまのなか29
あの時見た輝きに私の脳は焼かれた。
飛踊する雨の雫?
静寂する黄昏の灯篭?
明滅する鐘の嘶き?
ああ、思い出せないあの頃の感情が死火山のように無愛想に私を眺めている。
渇望。ずっと、あの輝きを追い求めていた。
そして、ついについに見つけたのだ。あの輝きを!
彼女の輝きを全身に浴び、私は新しい私になるのだ
伸ばした手は熱に爛れ届かず私は地面に突っ伏した。
膝をつき、彼女は私のほほを両手で包む。
温かく肌が焼けていくのを感じる
私は今どんな表情をしてるだろうか?
心は幸福に満たされているのに、苦悶に歪んでいるだろうか?
彼女はとても悲しそうに見える。
「大丈夫だよ、私は。あなたが好きだから」
私は伝えた。
彼女の瞳に映る私が。
無形事由を彼女はわかってくれるだろう