表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

第二話 異形としての世界。

 此処で言う牢獄とは、巨大化し、曲がりくねった異形と化した外の世界に耐えられず、半ば追われる様に逃げ込んだ者の、最後の避難所としての役目をも負っている。



 そう云った意味で、閉じ込められた、という表現はあながち間違っていない様に思う。



 そう言えば、自分の想像した牢獄の外では、外界の恐怖を殊更に強調する象徴として、固く鎖された鉄扉のすぐ外側で蠢く、看守と思しき存在が常に徘徊していた。



 野生動物かと見紛うばかりに筋肉の発達した身体。頭部に鉄の仮面を嵌め込まれ、手足には重しの付いた鎖。ジャラジャラとそれ等を引き摺りながら歩く姿は、傍目には此方の方がむしろ囚人に見える。



 更に、獄舎その物が一つの強大な世界と化していて、その中で様々な異形の者達が蠢いている。



 とは言うものの、結局の所それ等は決して現実の外界を越える事は無い。一人の人間の想像で作られた怪異など、現実の剥き出しの異形に比べれば、さながらお伽話の様に他愛ない物でしかないのだから。



 それに耐えられなかったからこそ、自分は自らをこの架空の牢獄へと追い遣ったのではなかったか。



 悍ましくも怖ろしい異形蠢く外界から逃れ、更に御丁寧にもその象徴の様な看守を据え置いて、恐怖に身を縮込ませながらも、或る意味で安全で平穏なこの牢屋の中で、半ば倒錯した愉悦に耽るのだ。外界から遮断されたこの小さな世界で、この自分だけはまともなのだと、そんな度し難くも悲痛な愉悦に。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ