運命は決定されていたということ
運命は収束することが分かった。人類の技術発展は50世紀にもなるととどまることを知らず、ついには運命の計算を可能にした。まぁ、それがよかったこととは口が裂けても言えないが。
「なぁ。もし、未来がもう決まっていて、変えられないとしたらどうする?」
「なに?妄想の話?」
「いや、リアルな話さ。」
夜の二人きりの研究室で向き合う男女。
「俺の研究内容を知ってるだろ?」
「あぁ、運命論でしょ?もうやめときなさいよ。そんなの、21世紀には否定された研究よ?あなたも本当は優秀なんだから、そろそろね役に立つ研究しなさいよ。」
「いや、それがな?運命を導く理論ができたんだ。」
「あはっ、面白い冗談を言うのね。まぁ、もう夜だしね。そろそろ、帰りましょうか。」
女性は馬鹿にするように、あきれたように、思わずといったように笑い、帰る準備をしようと立ち上がった。
「そうじゃない。まじだ。」
「じゃあ、言ってみなさいよ。その理論とやらを。」
仕方ないなと座り直し、男性と向き合い直した。
「それがな?まず、――」
一時間くらい経っただろうか。男性の声が研究室に響き止んだのは。
「…。」
「なぁ、どう思った?」
「どうとも言えないっていうのが正直な感想ね。わからない。けど、ありえるかもしれない。」
満足そうに男性がうなずくと、
「じゃぁ、最後にこれを見てもらおう。」
女性のほうにパソコンを向けると、一匹の実験用マウスの写真とそれがたどるであろう運命についてのレポートが映った。実験体0077:ビタミンC欠乏症により4912年3月23日12時19分56秒に死亡。画面が移り変わり、実験体0078:子宮がんで4912年3月24日19時08分02秒に死亡。そして、その後十枚同じようなものが映った。
「なによこれ?」
「まず、俺はこの理論が正しいか実験しようと思った。そして、これらのデータは全て2月中に出した。」
「全てがその通りになったと?」
「いや、さっきも説明したが、ある程度は変えることができる。ビタミンだって子宮がんだって、他のものも対処できるものは事前に対処した。」
女性が目線で続きを促すと、
「結論から言えば、変えられた。死因だけだか。」
「つまり?」
「一匹残らず死んだという結果は変わらなかった。しかも、予想されていた時間ぴったりに。」
「それは…。」
二人は黙った。この理論はすごい。世界を大きく変えることができるだろう。しかし、決していいようにではないが。
「公表するの?」
「いや、しない。してはいけないと思う。」
「でしょうね。やめておいたほうがいいわ。」
「うん。」
「でも、どうして私に話したの?私がほかの人に話しちゃう可能性だってあるんじゃない?」
「ん?大丈夫だよ。」
少し赤くなる女性、改めて二人きりの研究室を意識しだしたのだろう。
「そ。じゃあ、一緒に帰りましょう。」
男性は、時計が4912年3月30日21時01分20秒を示していることを確認しながら、
「いや、最後にこの研究をかたずけなきゃだから。」
女性は残念そうな反応しながら、帰っていった。
実験体0089:交通事故により4912年3月30日21時18分02秒に死亡――。




