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14話 Homing:帰ります

「なんなの。あの子!!」


ソーニャは部屋に戻るなり足元のゴミを蹴りつけた。


ついでに心愛にプレゼントしようと思っていた紙袋も、

壁に思いきり投げつける。


話しかけたのに逃げられた。

連絡用アプリも完全無視されている。


人から避けられるなんて初めての経験だ。


「なんなのよっ。いったい!」


ソーニャが声をかけたら男だろうが女だろうが、

誰でもホイホイついてくるのに、心愛だけは違う。


「もうっ。もうっ」


ソーニャは怒りに任せて、ぼすぼすと枕を叩いた。


会った時から、心愛はおかしな子だった。

いつもソーニャが予想する動きを超えていくのだ。


心愛は自分に自信がないのか、ものすごく挙動不審な子だ。


それなのに、やたら自信のある台詞を口にすることもある。


『賞をとって世間に認められる気はありません。

ゴッホもそうでした』


あの言葉はソーニャの心臓を貫いた。

こんな子が実在するのかって思った。


初めて心愛が絵を描いているのを見た時もそうだ。

話しかけても気付かないほどの集中力。


描いている心愛を見ているだけで、

ソーニャは感動して涙が出そうだった。


そうして描き上げた彼女の絵は、

まるで生きているみたいなみずみずしさがあった。


たくさんの愛にあふれていた。


あの日の夜。


ソーニャは連絡用アプリを使って、

数多の知り合いたちに心愛のことを聞いた。


彼女は教室でも寮でも孤立していた。

部活ではいじめられているという噂もあった。


それなのに、心愛は愛をあきらめていない。

じゃないとあんな絵はゼッタイ描けない。


ソーニャはとっくに人というものをあきらめていた。


近付いてくる子はみんな、ソーニャの見た目にしか

興味がなかったからだ。


ソーニャはずっと、自分が価値があると思うものに出会えなかった。

出会うことができないのは、自分に価値がないからだと気付いていた。


前にかさねが言っていた。


『おまえみたいに、見た目しか取り柄のないやつに何がわかる』


本当にその通りだ。

ソーニャには見た目以外なにもないのだから。


だが、あの日ソーニャは心愛に出会った。


出会ったのだ。


ソーニャはやっと自分にも価値があるのではないかと思えた。


『わ、私は、ほ、放っておきたくない』


彼女は絵と人柄だけで、由美子とかさねのわだかまりを

いともたやすく取り去ってしまった。


自分はそれを近くで見ていた。

だから。


「何で私のことはほっとくのよ。心愛のバカっ」


だからソーニャは、心愛をあきらめない。

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