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13話 Surface only:表面だけ

三が日のあいだ、かさねの熱は下がらなかったので、

心愛たちはかさねの看病をしながら静かに過ごした。


4日以降から、ちらほら寮に人が帰ってくるようになる。


176センチが部屋に戻ってきたので、

ソーニャはすぐに部屋を出た。


「ねぇ。中井さん」


ソーニャが出ていくなり、

威圧感抜群の176センチが心愛に迫ってきた。


「は、はい」

「松原坂 ソフィアと部屋にいたの?」


「は、はい。そそ、そうです」

「え。すっご。よく一緒にいられたね」


「え・・・?」


「だって、めっちゃ美人だけど、すんごく高飛車だって噂だし。

友達が話しかけたらムシされたって」


「そ、そうなん・・・ですか」


心愛は否定しようとしたが、勇気がなくて言えなかった。


「てかさ、勝手に部屋入れないでよね。

なんか物が減ってないか確認しなきゃ」


「あ・・・はい。ごめんなさい」


「てか絵の具臭いんだけど。

ここで絵を描いてたの?」


「は、はい。ちょ、ちょっとだけ・・・。

ごめんなさい」


人が戻ってくるにつれて、

かさねや由美子ともすぐに疎遠になってしまった。


何だかすごく寂しくなる。


会えるかなと思って廊下を歩いていると、

かさねや由美子とすれ違うことがあった。


しかし、2人の周りにはいつも人がいて、

心愛が話しかけることはかなわなかった。


「・・・」


仕方なく部屋にいると、176センチに

年始の挨拶をする友人たちがあふれた。


心愛と違って、本当に友人が多いのだ。


心愛はいたたまれなくなって部屋から出た。


どこにいこう。ああ、そうだ。


みんなと買い物をしたあのスーパーに行こう。


無意識に吹き出そうとする涙を必死で抑えながら、

玄関で靴を履いた。


すると、目の前に真っ白な人が立っていた。

ばったりソーニャに出会ったのだ。


「あ・・・そ、そー」


声をかけようとしたとき、

彼女の両脇から女子たちがあらわれた。


「あははっでさー」

「ちょっと、おもしろすぎっ」


女子の明るい声が聞こえた途端、

ソーニャの存在がすーっと遠くなる。


「何この子? ソフィアちゃんの知り合い?」

「うん。そうだよ」


ソーニャを含めて、彼女たちの手には同じ店で買ったらしい、

おしゃれな紙袋が握られていた。


みんなでどこに行ったのだろう。

きっとスーパーよりも素敵な場所だ。


心愛は涙が決壊寸前だったので、すぐにソーニャとすれ違った。


「心愛っ」


熱いものを垂れ流しになった心愛には、

どうしても振り返ることができなかった。


声を置き去りにしてどんどん走っていると、

佐藤くんが心愛の名前を覚えていなかった日を思い出した。


「はぁ・・・はぁっ・・・」


たった数日のことだ。

きっとソーニャはすぐに忘れてしまう。


どくんどくんと心臓が高くなっていく。

高くなればいい。死ぬまで。


「はあーっ・・・はぁーっ・・・」


居残り組だから一緒にいられただけなのだ。


一瞬でも変われたと思った自分がバカだった。


生涯ずっと心愛は心愛でしかないのだ。


情けないことに、息が続かず立ち止まってしまう。


めちゃくちゃに走ったせいで眼帯が外れて地面に落ちた。


見上げた空は、やけに白くて広かった。


「はぁーーーーーはぁーーーーー」


そこで終わり。

短い夢だった。

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